今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

なぜ人は川で沈むのか

2021年04月11日 | 防災・安全

東京、荒川の支流の新河岸川で、7日に小学生が溺死し、さらに助けようと川に入った成人男性のうち一人が溺れて行方不明となり、11日に3km下流で水死体となって発見された。

水の事故は、海やプールでも発生するが、海よりも身近で危険なのは川だ。

私は川歩きが好きなので、よくかわるが、子ども、とりわけ小学校の男子は川遊びが大好き。
なのでまずは彼らの中から犠牲者が出やすい。
そして近くにいた大人がそれを助けようとして、次の犠牲者になる。

川は、超絶的に広大な海と違って、人間の生活圏に入りこめる大きさなので、その危険性が過小評価されるきらいがある。
川に入ろうとするなら、川固有の危険性をきちんと認識してほしい。
ただその危険性が目に見えないからやっかいだ(海のような見ただけで圧倒されるパワーを感じない)。

当然ながら、川は水流が強い。
下流方向への力が常に作用している(これは目に見える)。
1立方メートルの水(1000ℓ)は1000kg=1tの重さがあるから、幅と深さが1m以上ある川は、1t以上の重い力が絶え間なくかかっている(新河岸川は水深2m)。
まずはこの力で人は川に引き込まれる。

その方向が水平方向だけなら、下流に流されるだけだが、現実はそうではない。
川は深さがあり、その深みにも人は引き込まれる。
それは重力(自重)だけによるのではない。
川の水には鉛直循環があり、下降流による沈む力が作用する。
なぜなら、川底の方が流速が遅い(凹凸があり、低温で重い)から。
川は自らの力で人を呑み込むのだ。

人は水中では、身体を水平にして重力に抗する下から上に向う力(浮力)を多く受けて浮くことができる。
だが、服を着て水分が増えて重くなると、浮力は、沈む力(重力+下降流)に抗えなくなる。
すなわち水平姿勢になること自体が難しくなり、さらに垂直になってしまうと、受ける浮力が最小になり、下降流の流れにハマってしまう。
人が岸から川に入る場合、最初は垂直姿勢が多いので、そのまま下に引っ張られて沈んでしまう。
今回、助けに入った男性も、目撃者によると、立ったまま沈んでいったという。

その男性は浮いた遺体で発見されたが、浮いてこれずに川底で発見される場合も多い※。
※淀んでいる所は流速の鉛直差もなくなるので、遺体も水平に伸びて浮力を得やすい。

川は、流れのないプールや濃い塩分によって浮力が効く海とは異なる、
人を呑み込もうと、いつも口を開け続けている、蟻地獄のような恐ろしい水環境である。
ちなみに、太平洋横断に向う辛坊治郎氏によれば、海でもヨットから落水すれば命はないという。
 大量の水環境の恐ろしさは、津波や洪水被害者たちも身にしみている。

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