靴は畢竟、立位姿勢を見せるためではなく、歩くためにある。
となると、究極の靴は屋外での歩行機能で選ぶべき。
実は、私にとって一番履き心地のいい靴は、ビルケンシュトックの靴で、長年この靴ばかりを履いていた(今でも6足持っている)。
だがそのため、幅広靴信仰が強まり、実際には開張足が促進された気がする。
また、履いているだけならいいが、底(アウトソール)が平らで薄く、ヒール部分がないため、長距離歩行には向かず、もちろん全天候型でないので、これ一足あれば足りるという意味での”究極の靴”にはなれない(だから6足も必要)。
では、その意味での究極の靴にはどの機能が必要か。
まずは材質。
幸い、スーツが前提されない仕事なので、革靴を前提としなくてよい。
となると底(ソール)は革ではなく、歩行に向いたゴムで、もちろん悪路でも安心・雪道でも滑らない「ビブラムソール」。
一方、アッパーは、防水性が第一で、しかも通気性も確保したい。
となるとここでも革ではなく(革は好きなのだが機能重視でいくと)「ゴアテックス」。
次は形態。
理想の靴は足をしっかり包み込み、足の動きにシンクロするべき。
余計な隙間ができると靴の動きと足の動きがずれるため、歩行動作がおかしくなり足の構造に悪影響をおよぼし、爪や皮膚を傷つける。
私自身、”余裕のある靴”信仰から脱するのに時間を要したが、
今では足のサイズ通りの靴にし、日本人向けという”幅広”を無視する。
動きのシンクロを実現するには紐付きがいいのだが、日本では着脱頻度が高いので、ここは日常用として着脱の容易さを優先する。
つまり「紐なし」。
以上の3点(ビブラム、ゴアテックス、紐なし)を充たしているのが、メレルの「ウォーキングシューズ カメレオン5ストームモックゴアテックス」。
その名が示す通り、 機能追究のウォーキングシューズである。
歩く目的ではこれが究極の靴(ただし靴が足に順応するまで数ヶ月かかる)。
同じメレルの人気商品「ジャングルモック」は、履きやすく歩きやすいが、底がビブラムでないので滑りやすく、アッパーがゴアッテクスでないので防水性が劣り、夏は蒸れて履けない。
究極の靴が「カメレオン」である限り、私には2万円以上する靴は無縁となる(山靴は除く)。
ただしこの靴、選択肢としては一択だが、100点満点とはいかない。
ゴアテックスといっても底は厚いゴムなので、足底(足裏)の通気性が無い。
この点は放熱できる革底に負けるが、防水性・すべりにくさ・歩きやすさを優先すれば致し方ない。
なのでインソールを通気性の良いものに替えている(さすがに盛夏はこの靴よりサンダルが快適)。
またアッパーが通気性のある布なので冬の防寒性も劣るが、東京や名古屋の冬なら屋外でも足が冷えることはない。
むしろ突然の降雪でも濡れないし滑らない強みが発揮された。
あとアッパーが布なので耐久性はどうしても革に劣る。
しかもオールシーズン・全天候対応なので、年中毎日履けてしまうため、それだけ消耗が烈しくなる(布靴は革靴のようなメインテナンスがしにくい)。
それを避けるには色違いを複数そろえればいいのだが、デザインがいまいち垢抜けてない(ウォーキングシューズなので致し方ない)ので、買い足したいという気持ち(所有する喜び)には達しないのが残念。
デザインが洗練されたバリエーションが出るのを期待したい。
ただし、近所の小用につっかけるのなら、ビルケンのサンダルでいい。
追記:上のカメレオンの靴は、生産停止となり、店頭から姿を消した。
一番履く頻度が高かったので消耗も早く、2022年の段階でアッパーの一部が破れ、底もすり減り、防水も効かなくなった。
2022年の段階で紐なし・ゴアテックスのアッパー・ビブラム底の3条件が揃っているのは、ノースフェースのエクストラフォームという靴(19000円)のみ。
私はノースフェースはロゴがデカすぎ、しかも遭遇率が高いので極力避けていたが、こればかりは仕方ない。
幸い、ロゴも靴の中敷にあるので(ノースフェースにしては控え目な措置)、宣伝しなくて済む。