今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

気まずい思い

2009年01月25日 | 東京周辺
長い工事期間を経てリニューアルした都立中央図書館に久々に足を運んだ。

内装がウッディになり、パソコン席が増えた感じ。
席を確保して、まずは最上階の食堂へ。
メニューは以前と変らず、久々に固焼きソバを食べる(具の量と水分が少なめだったのが残念)。
席に戻って、3時間ほど作業に集中し、頭が疲れたので、食堂にコーヒーブレイクに行こうと席を立った。

すると、私の隣の机にいた男性も席を立ったので、思わず目をやった。
彼も隣で立ち上がって近づいてきた私に目を向ける。
つまり、一瞬、目と目とが合っただけだが、彼が着ているセーターにも目がいかざるをえなかった。

その時、彼は、グレーのイギリス軍セーターを着ていた。
そのリブ編みのセーターは肘と肩に布が張ってあり、その布で肩章がついている。
肩章はパイロットシャツやアーミージャケットで見かけるもので、セーターについているのはこのイギリス軍セーター(そのセーターの写真←クリック)だけ。
珍しい形のセーターなので、読者の皆さんも街中ではほとんど目にしないだろう。

なんで私が詳しく知っているのかというと、
その時私が着ていたのが、グリーンのイギリス軍セーターだったから。
このセーターは生地も厚く、脇や腕の締まりもよく動きやすいので、この季節は、コートの下に着ることが多い(ただコートを脱がないのが前提。今回はたまたま)。

人が集まる図書館では、パソコンが自分と同じMacBookを使っている人はいないことはない。
そういう人を見かけると、親近感すらわく。

でも、服、しかも黒無地のタートルセーターのような超定番ならいざしらず、ふつう街で見かけないやたら個性的な形の服を自分が着ていた時ほど、同じ服の人とすれちがうと気まずくなる。

そして今は、すれ違うどころが、何時間も隣の机に並んでいたのだ。
しかも立ち上がって向かい合っている。

私と彼の中間の位置の向い側の席に、私と同じパソコンを使う女性が座っているのだが(それには気づいていた)、その彼女からすると、二人の男が、視野の両側に同じへんなセーターを着て座っていて、同時に立ち上がって、視野の中央で顔を見合わせている。

色違いだが同じ形のセーターを着た二人の男は、一瞬の気まずい対面を終えて、一人はフロアを足早に出て行った。

グリーンのイギリス軍セーターを着た私は食堂に行って、自販機のコーヒーを食堂の椅子に座って飲んでいた。
確かにへんなセーターだが、室内に一人なら容認できる。

だが、グレーのイギリス軍セーターを着た彼も食堂にやってきた。
食堂の空気は一変する。
私とちがって食事をするようで、食券を買っている。
彼はまだ私に気づいていない。
空席を探す彼は、私の席を視界に入れた。
ここで再び目を合わせるわけにはいかないので、私は悠然とコーヒーを飲むフリをする。
私の卓にも空席はあるが、当然、彼は私から離れた席に座った。
1つの空間に同じイギリス軍セーターを着た人間が二人いるのは、とっても居心地が悪い。
飲んでいたコーヒーの味もわからなくなるほどだ。
私は急いでコーヒーを飲み干して、パソコンのある閲覧席に戻った。

その後も集中して作業し、気がついたら1時間ちかく経過していた。
隣の机に目をやると、彼の椅子は空いたまま。
彼もまた、1つの空間に同じイギリス軍セーターを着た人間が二人いるのは、とっても居心地が悪いと感じているのだろうか。
彼のいた机は、本が開かれたままで、まだ作業は終わっていない様子。
でも休日なので、閉館時間が迫っている。
ふと私は、この場にいない彼から、無言のメッセージを受けた気がした。

私は手際よく卓上に拡げたパソコンや資料をしまい、誰の目にも退館することが分かるように、荷物をかかえて席を立った。
フロアの出口に向うと、そこには、書架で本を読んでいる彼がいた。
まるで、席に戻れない理由があって、仕方なしに時間をつぶしていたかのように。

そして、書架から出てきたグレーのイギリス軍セーターを着た彼は、荷物をかかえて帰るグリーンのイギリス軍セーターを着た私とすれ違い、互いに行く先を確認するかのように一瞥しあって、しばらく主の来なかった自席に戻っていった。
もうすぐ閉館時間。
もっと、早く気づいてあげるべきだった。

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