年度末最後の温泉旅として、東京の実家から、気楽に行ける本格温泉を探した。
3月に入ってから、埼玉に2回続けて宿をとったが、”温泉”宿としては満足いくものではなかった。
今までは早春の伊豆に赴いたのだが、今年は雪景色を味わいたい気分。
連泊するなら遠方でもいいが、一泊なので関東に限定。
どうせなら今度こそ”温泉らしい温泉”がいい。
心に浮かぶのは、硫黄の香り漂う白濁した源泉かけ流し。
それなら、全国的に有名なのは秋田の乳頭温泉(鶴の湯)だが、関東なら日光湯元温泉だ。
そこは日光の奥の戦場ケ原のどん詰まり、北関東以北最高峰・日光白根山(2578m)の麓の源泉だ
(光徳や中禅寺の”温泉”も湯元から引いている)。
ここならもちろん雪もある。
そしてなにより、ここに宿をとると、日光から湯元までの東武バスのフリーパスが3000円のところ半額の1500円ですむというのが、ケチくさい私の心を一層くすぐる。
というわけで、東武鉄道の特急スぺーシアを使って日光に向う(あれ、ケチくさいはずでは…)。
座席は足下から頭までゆったりしていて、JRのグリーン車より上質。
私は快適性にはお金を出すのだ。
ただ日光までは直行しないので、下今市で降りて、ローカルな普通電車に乗り換える。
東武日光駅のツーリストセンターで泊まる宿と氏名を言って3000円分のフリーパスを1500円で買い、湯元ではなく手前の中禅寺湖行きのバスに乗る。
なぜかというと、寄り道するから。
明智平に。
中禅寺湖から先の奥日光には、幾度も訪れて、たいていの名所には足を運んだが、「明智平」は素通りしていた。
奥日光を目ざす者には、中禅寺湖の手前で寄り道する気になれない。
特に明智平は、往きのいろは坂でしか立ち寄れない(帰りは別道)ので、湯元を目ざすバスに乗ればどうしても素通りしてしまう。
フリーパスでしかもチェックアウトに時間がある今回こそ立ち寄らなければ、
今後も立ち寄らないだろうと思い、空模様と相談してあえて立ち寄ることにしたのだ。
明智平の唯一の売りは展望にあるから、霧の中では無意味なのだ。
第二いろは坂の連続カーブを終え、やや平坦な道になると、山上の平坦地・明智平に達する。
ただし、ここにはレストハウスがあるだけ。眺めもたいしたことない。
ロープウエイで展望台に行かなければ無意味。
ただしそのロープウエイはたった3分の乗車で往復710円もする。
しかもそれ以外にルート(歩道)がない(片道利用は、さらに奥へのハイキング用途だけ)。
ケチくさい私からすれば、どう考えても割高の料金設定で、客の足下を見ているとしか思えない。
つまり、客としては710円払ってでも、行きたいのだ。
せめてものサービスに、ロープウエイは乗客がいれば時刻表とは関係なく動かしてくれる。
たった3分間の乗車ゆえ、たいして離れていない展望台駅に着く。
駅舎の屋上が展望台になっており、そこに上がると、
絶景に息を飲む。
頭上の男体山から直線状に降りる裾野の奥に中禅寺湖が真正面に広がり、
その中禅寺湖からあの華厳の滝が上から下まで、中禅寺湖よりもさらに正面手前で落ちている(今にも瀑音が聞こえそう)。
それぞれ一流の山・湖・滝の揃ったこの絶景が見れるのは、日光でもこの場所しかない。
日光随一の展望スポットであることは認める。
絶景も眼福ゆえ、710円を惜しげもなく投じることにしたわけだ。
せっかくなので、すぐに帰らず、湯元行きのバスを1本遅らせてまで、写真を撮りまくり、展望を堪能した(元を取るつもり)。
再びバスに乗り、中禅寺湖畔を抜け、戦場ヶ原の雪原を縦断し、湯ノ湖を半周して最奥の湯元温泉に着く。
前回2月に着た時より積雪が多い。
今年の2月の積雪が残っているという。
湯元温泉には宿がいくつもあるが、私が泊まるのは「休暇村日光湯元」。
ここの洋室が気に入っている。
湯元はロケーション的にも宿的にも、そして温泉的にも1泊ではもったいなく、
連泊するに値する所なのだが、
ついつい雪に埋もれたフリーパス半額期間(12-3月)を選んでしまうので、
連泊すると2日目が暇で何もすることがない(スノーシューをやれば散歩代わりにはなる)。
夕食はすき焼きがついた和食で、天ぷらと飯などはバイキング形式。
地元日光の純米酒「清開」の一合瓶を開ける。
宿の和食をつまみに飮む冷酒って、なんでこんなに美味しいんだろう。
寝る前のノートパソコンでのビデオ鑑賞は、埼玉に続いての栃木の旅なので「サイタマのラッパー3」(舞台が栃木)。
さて肝心の湯に着いては、次の記事で。