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今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

正月読書録2:関東戦国編

2009年01月04日 | 作品・作家評

西多摩の秋川高校時代に地歴部員だった私は、学園祭の発表のため、近くの滝山城と八王子城の歴史について調べようと、まずは『東京都の歴史』(山川出版)の中世後期の部分を読んだ。
そうしたら、足利氏の鎌倉府と古河公方、その家臣である山内・扇谷の両上杉氏、その両家の家宰長尾氏に太田道灌らの争い、そして後北条氏の関東進出に、上杉謙信の越山、武田信玄の来寇という次から次への複雑で激しい展開に魅了された。

特に、戦国前期(関東の戦国時代の開始を1438年の永享の乱とする。1510年の北条早雲の進出は既存の動乱に乗じたにすぎない)の両上杉氏と太田道灌あたりは、自分にはほとんど未知だったので、その複雑さが面白かっただけでなく、練馬区石神井の三宝寺池がその頃の史跡であることを知って、武蔵野の風情が大好きだった自分には、ますます楽しくなった。

その後は河越の夜戦から始まる『関八州古戦録』(メインは氏康・謙信・信玄の関東三国志)がバイブルとなり、何度も読み返し、戦国の関東に思いを馳せた。

江戸の街の生みの親・太田道灌については、小説だけでも数編あるくらいだが、道潅に滅ぼされた豊島氏については、道潅以上に地元東京の家柄であるだけに興味がもたれる。
最近ようやく研究成果がまとまってきた段階で、それらを見逃さないことにしている。

1.『決戦~豊島一族と太田道灌の戦い』葛城明彦 風早書林 2008年新刊書
そして今年出た『決戦』は、豊島氏側に立ちながら、豊島氏・道潅双方のかかわりの歴史をその都内の史跡を紹介する形になっている。
つまり豊島氏・道潅の歴史を偲んで都内(都内に限られる)を散歩するにはもってこいの本。
三宝寺池の照姫伝説の解釈などが真新しかった。
また練馬区にも「道灌山」があるのを知った。

2.『太田道真と道潅』小泉功 幹書房
この書は、道潅の築城550周年記念として2007年出版された。
道潅の足跡を中心に、太田氏の本拠川越城と道潅が新たに造った江戸城近辺の史跡を紹介している。
道潅は、当時の武将の中では一段レベルが抜きんでた天才肌で、戦えば必ず勝ち(豊島氏など一蹴)、築城は後世の模範となり、治世において江戸を都市化し、和歌の才にすぐれていた。
その才が目立ちすぎたため、主君から暗殺された。
道潅は戦国の風雲児・北条早雲と同い年で、早雲以上に関東に覇を唱える力をもち、絶好の位置にいたのだが。

以上の2冊は、ともに概説的で読みやすい。どちらかというと、史跡散策のための書。
その意味では、地元民向け。
より専門的には、学者らのシンポジウム記録である『豊島氏とその時代』新人物往来社、黒田基樹『扇谷上杉氏と太田道灌』岩田書院などがおすすめ。