2005年9月に発行された大森義夫氏(元・内閣情報調査室長)の「日本のインテリジェンス機関」を読んだ。この中で著者は、日本独自の情報機関「対外情報庁」の設立を求めている。以下が、その部分の引用(まとめ)である。
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①「対外情報庁」を設立して、そのトップを日本の国家情報機関の総元締めとする。
②情報庁トップはカスタマー(政権中枢)サイドに立って国家戦略・戦術に沿ったオーダーを情報機関に出す。逆にカスタマーに対しては得られた情報に基づいて戦略・戦術を報告する。
③情報庁トップは総理大臣の承認を得て各機関に情報収集や提供を命ずる権限を持つ(いわゆる情報アクセス権による情報集約)。
④対外交渉時の防諜について柔軟に経済官庁を支援する。
⑤「対外情報活動関係法」を制定して日本人を対象とした「盗聴」は基本的に行わないという人権保護の原則を定める。
⑥実効的な活動を阻害しない範囲で国会(非公開の特別委員会など)に報告する仕組みを作る。
⑦カスタマー及び情報機関の仕事ぶりについて勧告権限を持つ専門委員会を設置する。
⑧情報庁トップは政治家(大臣)ではないプロフェッショナルをあて、国会の同意を得て総理大臣が任命する。
⑨国家安全保障会議(NSC)を設け統幕議長と情報庁トップを加える。
⑩国家機密情報の漏洩に対しては国会議員を含めて厳罰の対象とする。
上記への著者コメント要旨
★当面「対外情報庁」のみ設置し、「国内情報庁」は設けない。複雑な議論を招くだけだし、国内情報を適切に扱える人材がいない。
★対外情報庁は100人くらいの少人数でスタートする。30年後に5000人規模を目指すことにして、身の丈相応で営業を開始しよう。
★スタッフ全員を1年契約として能力のある者だけを契約延長する。公務員法の例外になっても能力主義を貫く。組織は少数にすれば精強になる。
★100人の配分は30人をオペレーションに、20人を分析に、10人を資料・記録に、20人をエレクトロニクスを中心とした技術に、10人を管理部門に、そして10人を心理学専門家によるオペレーション指導にあてる。
★情報を扱っている現行の諸組織は廃止。全員を解雇して適任者だけを新組織で採用する。
★対外情報庁をスタンドアローン型にしておいては裾野が拡がらず戦力アップが望めない。周辺装置として実戦的な研究機関をとりあえず三つ配置する。それぞれ米国政治、華人、コリアンを研究対象とする。
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実に具体的な構想であり、まさに実現すべきと思う。この本が発行されてから12年が経っており、必要性は当時以上に増している環境であるが、提言の中で実現できたのは⑨の日本版NSC設立と⑩の特定秘密保護法だけだ。
日本は攻撃用の軍隊を持たないと決めた国なので、軍事力が非常に中途半端である。だからこそ、「ウサギの耳」とも言われる情報機関が非常に重要となるのではないか。今に至るまで設立されていないは本当に謎なのだが、たとえ今からでも、設立に向けて急ぐべきだと思う。
思えば、近年の日本版NSCの設立、特定秘密保護法の制定、共謀罪の法制化などは、すべて日本版情報機関を設立するための布石なのではないか、と感じる。実は安倍首相はそれに向け、必死に努力している最中、ということなのかもしれない。
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