先日は本屋で、加藤嘉一氏の「われ日本海の橋とならん」という本を少し立ち読みしてみた。その中で、「日本はネットの力が弱い」という記述があり、それが印象に残った。
確かに、中国に比べればネットの影響力は弱いだろう。中国では、選挙がない代わりに、ネット世論が政治に強い影響力を持っている。もちろん中国政府当局は必死にネット上の意見を規制しようとしているが、5億人いると言われる中国のネットユーザーすべてを管理することなどできない。結局は政府も、ネット世論に気を使わざるをえない状態となっている。政治家がネット世論などまったく気にする必要がない日本とは、えらい違いだ。
考えてみれば中国だけでなく、韓国やアメリカでも、ネットは現実の政治を動かすほど強い力を持っている。ネットで形成された巨大なコミュニティが、韓国ではノ・ムヒョンを、アメリカではオバマを大統領として当選させた、という事実がある。アメリカはどうか知らないが、少なくとも韓国では一般の新聞でもネット世論の動向を気にして報道している。
翻って、日本はどうか。日本で最大の影響力を持つネット掲示板は2ちゃんねると思われるが、その2ちゃんねるでも、現実の政治や社会のあり方に影響を及ぼした、という話は聞かない。むしろ、何の影響力もないどころか、現実はネット世論とは全く別の動きをしている、といえる。2ちゃんねるを始めとするネット世論は、民主党が与党となるはるか前から民主党を嫌悪していたにもかかわらず、実際の衆院選においては民主党が大勝してしまった、という事実が代表的な例だ。ネット上では韓国へのバッシングが相当に強いが、その一方で現実の世論は、韓国に好意的な見方が支配的と見られる。
なぜこのように、日本ではネットの力が弱いのだろうか? 私が思うに、
日本では既存のメディア(テレビ、新聞、雑誌など)があまりにも強すぎて、日本人の生活に完全に染み込んでおり、ネットが入る隙間が無いからではないか。日本は相対的にネットにのめり込む人たちが少ないために、政治的なコミュニティをネット上で形成する動きが弱いのではないだろうか。
それから、
社会にあまり関心のない層が、日本はすごく多いような気がする。私の偏見かもしれないが、若い人や女性などは政治や社会への関心があまりにも薄れているのではないか、と思える。そうであれば、ネットの意見が強いとか弱いとかいう以前の問題だ。