Willow's Island

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日本のインテリジェンス機関 「対外情報庁」構想

2017年06月26日 05時55分12秒 | 

 2005年9月に発行された大森義夫氏(元・内閣情報調査室長)の「日本のインテリジェンス機関」を読んだ。この中で著者は、日本独自の情報機関「対外情報庁」の設立を求めている。以下が、その部分の引用(まとめ)である。

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①「対外情報庁」を設立して、そのトップを日本の国家情報機関の総元締めとする。

②情報庁トップはカスタマー(政権中枢)サイドに立って国家戦略・戦術に沿ったオーダーを情報機関に出す。逆にカスタマーに対しては得られた情報に基づいて戦略・戦術を報告する。

③情報庁トップは総理大臣の承認を得て各機関に情報収集や提供を命ずる権限を持つ(いわゆる情報アクセス権による情報集約)。

④対外交渉時の防諜について柔軟に経済官庁を支援する。

⑤「対外情報活動関係法」を制定して日本人を対象とした「盗聴」は基本的に行わないという人権保護の原則を定める。

⑥実効的な活動を阻害しない範囲で国会(非公開の特別委員会など)に報告する仕組みを作る。

⑦カスタマー及び情報機関の仕事ぶりについて勧告権限を持つ専門委員会を設置する。

⑧情報庁トップは政治家(大臣)ではないプロフェッショナルをあて、国会の同意を得て総理大臣が任命する。

⑨国家安全保障会議(NSC)を設け統幕議長と情報庁トップを加える。

⑩国家機密情報の漏洩に対しては国会議員を含めて厳罰の対象とする。

上記への著者コメント要旨
★当面「対外情報庁」のみ設置し、「国内情報庁」は設けない。複雑な議論を招くだけだし、国内情報を適切に扱える人材がいない。
★対外情報庁は100人くらいの少人数でスタートする。30年後に5000人規模を目指すことにして、身の丈相応で営業を開始しよう。
★スタッフ全員を1年契約として能力のある者だけを契約延長する。公務員法の例外になっても能力主義を貫く。組織は少数にすれば精強になる。
★100人の配分は30人をオペレーションに、20人を分析に、10人を資料・記録に、20人をエレクトロニクスを中心とした技術に、10人を管理部門に、そして10人を心理学専門家によるオペレーション指導にあてる。
★情報を扱っている現行の諸組織は廃止。全員を解雇して適任者だけを新組織で採用する。
★対外情報庁をスタンドアローン型にしておいては裾野が拡がらず戦力アップが望めない。周辺装置として実戦的な研究機関をとりあえず三つ配置する。それぞれ米国政治、華人、コリアンを研究対象とする。

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 実に具体的な構想であり、まさに実現すべきと思う。この本が発行されてから12年が経っており、必要性は当時以上に増している環境であるが、提言の中で実現できたのは⑨の日本版NSC設立と⑩の特定秘密保護法だけだ。
 日本は攻撃用の軍隊を持たないと決めた国なので、軍事力が非常に中途半端である。だからこそ、「ウサギの耳」とも言われる情報機関が非常に重要となるのではないか。今に至るまで設立されていないは本当に謎なのだが、たとえ今からでも、設立に向けて急ぐべきだと思う。
 思えば、近年の日本版NSCの設立、特定秘密保護法の制定、共謀罪の法制化などは、すべて日本版情報機関を設立するための布石なのではないか、と感じる。実は安倍首相はそれに向け、必死に努力している最中、ということなのかもしれない。

共謀罪が成立 何か問題でも?

2017年06月20日 06時11分24秒 | 時事

 先週、共謀罪等を新設する改正組織犯罪処罰法が国会で成立した。
 しかしまた例によって、訳の分からん連中がこの件で騒ぎ続けている。平成(もうすぐ終わるのにな)の治安維持法だとか、定義があいまいなので誰でも恣意的に逮捕できるようになるだとか、国家による監視社会が生まれるだとか、昔から飽きもせず常に叫ばれ続けている類の主張だ。
 こういうのを見聞きするたびアホか、という思いしか出てこない。
 件の「共謀罪」が記載されている法律の条文(全文)が、以下のURLにある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H4D_U7A610C1M11000/
 これを読むかぎり、「そりゃそうだろう」としか思えない。これを読んで怯えるような人物こそが、まさにテロリスト予備軍ということか。
 そもそも、法律の拡大解釈や恣意的な解釈で人を捕まえられるというなら、昔からある既存の法律だって同じことだろう。もし政権側が本気で気に入らない人物を捕まえようとするのであれば、わざわざこんな七面倒な法案を作成しない。本当の独裁国家であれば、やろうと思えばやり方はいくらだってある。
 特定秘密保護法の時も全く同じだったが、新しい法律ができるたびに騒ぐことを商売とする連中がいかに多いか、ということを毎回実感する。

細野不二彦 電波の城

2017年06月10日 07時05分01秒 | 

 ブログを休止していた頃なので少し前の話になるが、細野不二彦作「電波の城」という漫画にかなりハマってしまった。元々はホリエモンがこの本で強く薦めていたので、ブックオフで少しずつ買いながら読んでいたのだが、これは堀江が言っていたとおり細野不二彦の代表作といえるだろう。漫画として非常に面白いだけでなく、マスメディアに関心のある者にとって読んで損はない作品となっている。
 最初はブックオフで1冊100円で売っていたものを買っていたのだが、どうしても続きが読みたくなってネットで注文したり、古本で出ていない場合は新刊を買ったりしてまで、全23巻を読みきった。雨宮詩織というクセの強すぎる強烈なヒロインが、心に残って仕方がない。
 細野不二彦といえば、私が子どもの頃にアニメで見た「Gu Gu ガンモ」や「さすがの猿飛」のような少年漫画のイメージが強かったのだが、近年はこうした成人用のストーリー漫画を手がけており、一流の手腕がある。世間ではあまり大きな評価がされていないと感じるが、もっと評価されるべき作家であると思う。
 細野作品をもっと読みたくなった私は、「商人道」「ヤミの乱破」なども読んでみた。いずれも、すごく面白いのでお薦めである。ただ、急に打ち切りが決まったせいなのか知らないが、両作品とも終わり方が中途半端だったのがやや残念だ。

美女と野獣

2017年06月04日 17時10分20秒 | 映画

 最近、2つの実写版「美女と野獣」を見た。エマ・ワトソンが主演して現在ヒットしているディズニー版と、2014年に公開されたフランス・ドイツの合作版だ。ディズニー版は映画館で、ヨーロッパ版はテレビで見た。
 2つは完全に別の作品であり、それぞれに良さがあったが、私(と妻)はヨーロッパ版の方が良いと感じた。
 まず意外だったのは、ヨーロッパ版は、有名なディズニーアニメ「美女と野獣」とは全く違う話となっていることだ。多少違和感は感じたが、もともとこれはフランスの話なので、アメリカのアニメと違うからといっておかしい、ということはないのだろう。
 それよりも、普段外国映画といえばアメリカ映画ばかり見ているせいか、ヨーロッパ映画独特のセンス、テイストを強く感じて新鮮であった。30年以上前に見たドイツ映画「ネバー・エンディング・ストーリー」を何となく思い出させる。ファンタジー作品として、「美女と野獣」の世界観にすんなりと入り込むことができた。やはりヨーロッパの話は、ヨーロッパ人が作った方がリアリティがある、ということなのかもしれない。ヒロインはエマ・ワトソンほど美人ではないが、私が人に薦めるならヨーロッパ版の方だ。
 その一方で違和感といえば、ディズニー版の方が違和感がひどかった。中世フランスが舞台の話であるはずなのに、普通に黒人がフランス人役として登場していたのである。いくらなんでもそれはないだろう、と思う。「我々は黒人差別をしていませんよ~」と言いたかったのかもしれないが、差別をしない、というのはそういうことじゃないだろう。アメリカのリベラルも行き着く所まで行ってしまった感がある。裏にあるアメリカの政治事情ばかりが気になって、私は最後まで世界に入り込めなかった。