旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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沖縄語・練習帳

2016-10-10 00:10:00 | ノンジャンル
 昔々。首里金城村に仲村渠という親雲上の位にある方がいました。
 ある夏の夜。勤めを終えた仲村渠親雲上が馬に乗って下城していると、その馬の尻尾にキジムナーがぶら下がりました。驚いた馬はヒヒーンと鳴いて一目散に駆け出しました。キジムナーは、悪戯のつもりだったのですが、馬の暴走が急だったため、手綱を手にからめていた仲村渠は、馬の立て髪にすがり、大事にはいたりませんでした。そこは武士仲村渠。すぐにキジムナーを捕らえて荒縄で縛って家に引き連れ、庭のガジマル木の根元に繋ぎ置きました。が、朝になってみると、キジムナーがいません。
 「どうしたことか?」
 家人に訊いてみると仲村渠の母親は答えました。
 「夜中にキジムナーが鳴くので、可愛そうになって、解き放してやった」
 さて、次の夜から仲村渠が厠(かわや)へ行くたびに、下から手が伸びてきて、仲村渠の尻をなでるものがいる。
 「さては悪戯者のキジムナー奴!助けてやったのに、まだ懲りないのかッ」と、次の夜、仲村渠は厠へ行きキジムナーが現れるのを待ち構え、例によって伸びてきたキジムナーの片手を刀でバッサリ斬り落としました。
 「ギャーッ!」悲鳴一声!キジムナーは逃げましたが、以来、キジムナーは夜になると仲村渠家の庭にやってきては、懇願します。
 「私が悪うございました。切り落とされた腕を返して下さい」
 「返してやってもいいが、1度切り落とされた腕は、もとには戻るまい」
 するとキジムナーは言いました。
 「キジムナーの世界には、腕でも足でも、直ぐに元通りにする膏薬があります。どうぞ、私の腕を・・・・」
 「ならば」と、心やさしい仲村渠は、切り落とした腕を返してやりました。
 「ありがとうございます。お礼にいいことを教えましょう」
 どんな切り傷でも、たちまちにして治す膏薬のつくり方を修得仲村渠家では早速、万能膏薬を世に出して、多くの怪我人を救い、感謝されて、ますます仲村渠家は栄えたということです。

 〔意訳〕
 んかしんかし。スヰ・カナグシクむらなかい、ナカンダカリ(仲村渠)するペーチン(官位)ぬ
 めんしぇーいびたん。
 あるナチぬユル。チトゥミしまちゃる仲村渠親雲上。ンマぬてぃ、シルウチからムドゥヰるミチナカ(道中)、ンマぬジュー(尾)なかい、キジムナー大樹に棲む妖精)ぬ しがとー!んち、まちゅしとーニーブク(同時)、イッサンばーえーすん。キジムナーのー、ガンマリぬちムイどぅやたしが、ンマぬ、あったにアバリバイそーしが、ナカンダカリぇ ンマぬカンジかちむてぃ、ウーグトゥ(おおごと)ねぇーならん。んまーなぁ ナカンダカリんブシ。しぐにキジムナー、からみとぅてぃ、アラナーし、たばてぃくんち、ヤシチぬナー(庭)ぬ、ガジマルギーぬ、ニムトゥんかい、ちなじさびたん。やしが、なーちゃぬフィティミティ、うきてぃ みーどぅんしぇー、キジムナーぬシガタぬみーらん。
 「ちゃーしたくとぅが?」
 ヤーニンジュんかい、チチみーどぅんしぇー、ヰナグぬウヤぬイイブン。
 「ユナガートゥ、キジムナーぬなちゲーゲーすくとぅ、チヌドゥク(気の毒)にうむてぃ、とぅちなはち、やらちゃん」。
 さてぃ。うぬナーチャぬユルから、ムユーシすんでぃ フール(便所)んかい いちゅるたびぐとぅに、シチャからティーぬばち ナカンダカリぬチビ さーいしぬうん。
 「さてぃむ、ガンマラーキジムナー。たしきてぃやらちゃしん わからん、なま、うみしらんばすいッ」んち、ナーチャぬユル、ナカンダカリぇー、フールんかいんじ、キジムナーぬ あらわりーし、まちうきてぃ、りーぬゆってぃ ねーてぃちゃる、キジムナーぬカタティー、カタナし、ちりうとぅさびたん。
 「ギャーッ!」キジムナーや、フィンギてぃ いちゃびたん。やしが、キジムナーや、ユルないでぅんしぇー、ナカンダカリぬナーんかい あらわりてぃ、ニゲーぐとぅさびーん。
 「ワーがわっさいびーたん。ちりうとぅさったるウディ けーち くぃみそぉーり」。
 「けーちやらちん しむしが、イチドゥ ちりうとぅさったるウデー ムトゥねぇー むどぅらんどぉや」
 さくとぅ、キジムナーや、いやびたん。
 「キジムナーぬユーなかいや、ウディやてぃんフィサやてぃん、しぐにムトゥーいんかいする、コーヤクぬあいびーん。どーでぃん わーウディ・・・・」。
 「やるむんどぅんやれー けーすん」ち、ちりうとぅちゃるウディ けーさびたん。
 「にふぇーでーびる。うぬウンゲーシ(恩返し)に、コーヤクぬチュクイかた あかさびら」。
 んち、ちゃぬようなキジやてぃん、たちどぅくるに、のーするコーヤクぬチュクイかた うきとぅたる、ナカンダカリぬチネーんじぇー、さっすく、コーヤクちゅくてぃ、ユぬなかんかい いぢゃち、シキンウマンチュすくてぃ アガミ(崇め)らってぃ、ナカンダカリぬチネーや、いゆいゆ さかてぃんじゃんでぃぬくとぅ。

 いやいや、話しことばを文字にするのは難しい。一般的ウチナーグチで書いてみた。1人で読むのではなく、2,3人で幾度も、声にして読み合っていただきたい。意、自ら通ず。



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