旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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元号が変わる

2019-03-20 00:10:00 | ノンジャンル
 「昭和に生まれ、平成に生きて、今度は・・・・。どんな世替わりの時代を過ごすのだろうか?」
 「何がどう変わるということもなかろうが、妙な感覚を覚えるね。元号とはなんだろうね。ちょいと、辞典を引いてみよう」。

 元号=年につける呼び名。昔の中国に始まった。中国、漢の皇帝「武帝・ぶてい」の時、紀元前140年からの時代を「建元・けんげん」としたのが最初で、漢字を使った。ベトナムや朝鮮半島などにも伝わったが、中国も含めて廃止されている。
 日本は645年から採用している。以来、1300年以上、元号を使っている(世界)でもただひとつの国。今度決まる元号は248番目。
 天皇が替わると元号も改められる。改めることによって、時代が変わったことを世の中に知らせる。天皇が替わる時だけでなく、国に天災地変が多発した時にも元号を改元することもあった。
 元号を選定する折りの(決り)がある。
 ①国民の理想として、最もふさわしいよい意味を持つこと。
 ②漢字2文字。
 ③誰もが書き易い。
 ④誰もが読み易い。
 ⑤これまでに元号になっていないこと。
 ⑥地名や団体名、企業名などになっていないこと。
 などを重視する。
 しかし、長い歴史の中、奈良時代には、4文字の例外もあったようだ。
 イ=天平感宝(てんぴょうかんぽう)
 ロ=天平勝宝(てんぴょうしょうほう)
 ハ=天平宝字(てんぴょうほうじ)
 ニ=天平神護(てんぴょうじんご)
 ホ=神護景雲(じんごけいうん)
 馴れのせいか年号は、2文字がいい。4文字はまどろっこしくていけない。

 「誰が決めるのだろう?」
 「それはそれなりの有識者が集まって吟味するのだろうよ」
 「今日の時点で、もう、新年号は決まっているだろうな。4月1日まで極秘にしているのだろう。決まったものを隠されると、ほじくってでも知りたいなぁ~」
 「口の堅い人しか選考委員には指名されないよ」
 「琉歌にもある。‟聞かさんぱーすしや ゆくん聞ちぶさぬ 見しらんぱーすしや 開ち見ぶさ”(自分は知っていて、こちとらには聞かせたがらないモノは余計、聞きたいっ。見せたがらないモノは、無理しても開いて見たいっ!)
 これが大衆心理というもの。暴露記事を売りにしている週刊誌は、何をしているんだっ!」
 「明治という年号は、いくつかの候補年号の中から、明治天皇自らが、くじ引きで決めたという話もある。新年号・・・・誰よりも早く知りたいなぁ」
 「1989年に決まった『平成』。どこにもない漢字2文字と思っていたら、岐阜県の小さな集落に、平成と書いて(へなり)と読む所があって、話題になったよね」。

 改元後、運転免許証などの表記はどうなるのだろう? 新聞はこう伝えている。
 『5月1日の新天皇即位に伴う改元を前に、平成と記載された運転免許証がそのまま使えるかどうか問い合わせが県警に寄せられている。県警は「年号が変わっても引き続き使える」とし、ホームページなどで周知を図る方針。新元号表記などに向け、システムプログラムの改修も進める。
 平成31年までだが、免許証には「平成36年」などと記載されていることから「改元でも免許証を作り替えないといけないのか」といった問い合わせもあるという。
 外国人ドライバーの増加などから、昨年12月に道交法施行規制が改正・施行され、免許証に元号と西暦が併記されることになった。ただ、県内では5月以降に発行の免許証に適用されるため、4月までに新規や更新で発行される免許証には有効期限が「平成34年~36年」と記載される。
 昨年12月末時点での県内の免許保持者は94万4701人。県警は4月30日までにシステム改修を完了させ、併記の免許証発行は県警運転免許センターで5月5日から、安全運転学校各分校で同7日から予定している。

 「どんな年号になるか?楽しみだね」
 「国民、納得の新年号であってほしい」。
 人、寄り合えば改元、新年号の議論をかわす。
 ‟世替わりや世替わりや ああ 世替わりや世替わりや‟”


ウェルカムんチュになろう

2019-03-10 00:10:00 | ノンジャンル
 「ウェルカム」は、言うに及ばず「歓迎」。「チュ」は「人」を指す沖縄口。したがって「ウェルカムんチュ」は「歓迎人」ということになる。
 「2020年に開催される東京オリンピックの際は、沖縄にも多くの諸外国人が来訪するであろう。快適な沖縄旅行を楽しんでもらうために、県民一人ひとりが、真心をもって歓迎人になろう」と、昨年半ばごろから県が打ち出したキャンペーンである。
 旅行は行き先の人々と接触が楽しみのひとつだ。観光スポットや道順を教えたり、往き交わす観光客に対して『ウェルカム』の言葉ひとつ掛け合うだけで旅行先の印象が異なるし、個人々々の旅行成果が決まってくるであろう。そこで、沖縄県民一人ひとりが片言でもよし、誠意をもって諸外国人に歓迎の意を表そうというわけだ。

 東京オリンピックを待たず、今年のゴールデンウィークは「ウェルカムんチュ」になれるかどうかの絶好のチャンスとなろう。なにしろ、まれにめぐってきた10連休。沖縄タイムス2月21日付・一面トップにそれが掲載され、{10連休 沖縄旅行人気。予約倍増 ホテルほぼ満室 3~4泊の商品好調}の見出しが躍っている。いわく。

 10連休となる今年のゴールデンウィークは、沖縄旅行の売れ行きが好調だ。県内外の旅行社によると、2月19日までの予約状況が例年の2倍となっており、すでにホテルの予約は満室に近い状況という。天皇陛下の代替わりに伴う、まれにみる超大型連休で、国内客が海外旅行に流れるのではないかと懸念されたものの、10連休を取得できる企業が限られていることから、国内で3~4泊できる沖縄への旅行需要が高まっている。
 背景には、昨年10月に10連休が決まって以降、消費者が旅行を早い段階から検討していたことや、旅行社による早期プロモーションが功を奏したことなどが挙げられる。また、「10日間も仕事を休めない」といった声もあり前半・中盤・後半と休日取得が分散したことも影響したとみられる。
 沖縄ツーリスト(OTS)によると、沖縄向けゴールデンウィーク商品の予約状況は昨年同時期に比べ約2倍の売れ行きとなっている。昨年10月に販売を始めた、先行予約の旅行商品の売り上げが好調だという。
 特に4月30日~5月2日は例年平日に当たり、価格もゴールデンウィーク前半・後半と比べ低く設定されていたことから、昨年末ごろから大型連休を見据え、予約者が増加した。
 大手のJTBは昨年末からリピーターを中心にダイレクトメールを送るなど、大型連休に向けた早期プロモーションを展開、現時点で「昨年を大きく上回る予約状況」になっている。
 ただ、旅行需要は沖縄だけではなく海外旅行も好調。OTSの担当者は「海外リゾート地への旅行需要も伸びており、現時点で沖縄旅行を『仮押さえ』している旅行者もいると話す。その上で「海外旅行の動向に左右される可能性があるため、3月以降の販売展開も考える必要がある」と注視している。
 一方、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)によると、ゴールデンウィークに予約が集中する反面、2、3月の春休みシーズンは、旅行を控える傾向にあり、両月の予約が鈍くなっているという。

 10連休の内訳を見てみよう。
 *4/27(土)
 *4/28(日)
 *4/29(月)昭和の日
 *4/30(火)天皇陛下退位
 *5/1 (水)皇太子。天皇即位。改元。
 *5/2 (木)祝日に挟まれ休日
 *5/3 (金)憲法記念日
 *5/4 (土)みどりの日
 *5/5 (日)こどもの日
 *5/6 (月)振替休日

 「ウェルカムんチュになろう!」。
 大いに賛同して、いまから心掛けをしているが、自慢するほど横文字に弱いボクは覚悟を決めている。(イングリッシュのイの字の心得はない)が、沖縄には『見いよう口よう』『手よう足よう』という慣用句がある。言葉がでなかったら、目にモノを言わせよう。手振り足振りで対応しよう。お国は異なっても同じ人間。1分ですむ話も10分~20分掛けたらコミュニケーションはとれるだろう。「ドンマイ!ドンマイ!」である。
 島うたの「ひやみかち節」に 
 ♪辺戸とぅ喜屋武岬 ヒヤッとぅ持ちゃぎやい 我したくぬ沖縄 世界に知らさ~
 《フィドゥとぅ チャンみさち ヒヤッとぅ むちゃぎやゐ わした くぬウチナー しけにしらさ
 東京オリンピックよ来たれ!ゴールデンウィークよ来たれ!


春が来た~桜・梅。そして鶯

2019-03-01 00:10:00 | ノンジャンル
 3月1日とは言っても旧暦はまだ、1月の25日。急寒暖計の数字は17、8度のあたりを往ったり来たり。2月はじめに25度の夏日を指したこともあった。けれども沖縄の北風は別れを惜しむかのように急に冷え込む。これを『別り寒さ=わかりビーサ』と称する。そのあとに吹く風は『残ゐビーサ』と言い、この冬の寒さの名残としている。これがまた結構寒い。北風が最後の力を吐きしぼって吹き、北へ帰るからだろう。

 1月後半に日本一早い桜まつりが本島北部で催され、中部の北中城村にヒマワリ、宮古島にテッポウユリが咲き、やがて東村からはつつじの開花が告げられる。

 沖縄の桜。
 日本にはサクラ属が約200種あるそうな。
 一般にサクラといえば本土でよく見かけるソメイヨシノを指す。本種は温帯性のため、沖縄のように暖かい地方では激暑に耐えられず、また生育したとしても本土のように美しく咲かせることができないという。
 沖縄の桜は(カンヒザクラ=寒緋桜)を指す場合が多い。一名(野生桜)とも言われ台湾・中国などに自生。本土では関東地方、四国、九州(鹿児島)、沖縄に多く植栽されている。好酸性のため一般に沖縄本島本部地域に植栽されており、ことに本部町、名護市の(さくらまつり)は日本でも最も早く、桜前線はここからスタートする。ほかに久米島には本土産のチハラザクラが導入されて、よく生育、開花している。

 ◇桜に関する古歌。

 ♪白瀬走川に流りゆる桜 掬くてぃ思里に貫ちゃゐはきら
しらし はいかわに ながりゆる さくら すくてぃ うみさとぅに  ぬちゃい はきら

 *白瀬走川=久米島町具志川を流れる川。*思里=心に思う人・彼氏。反対に彼女は思無蔵(うみ んぞ)。*はきら=(この場合、首に掛ける・飾るの意)。

 歌意=白瀬走川の岸辺に咲き、春風に散り、川面に浮かび流れる桜の花弁を掬い集めよう。そしてひとひらひとひらを赤い糸に貫いて首飾りをこしらえて彼氏の首に掛けてあげよう。

 娘たちには(恋の季節)
 しかし「桜」を主題にした古歌は以外と少ない。桜は野生のもので観賞用としてはまだ活用されていなかったのだろう。その点「梅の花」は、古歌の中に数多く馥郁たる香りを放って咲いている。

 ◇「梅」
 バラ科の観賞用の落葉高木。沖縄の梅は中国から移入されたもので、かつては首里王族・士族の屋敷に好んで植栽された。高貴の植物として、身分すら象徴した。奥ゆかしさ・芳しい・優雅・後期などの代名詞として「梅」に関する言葉や詠歌が多いのは言うを待たない。俳句にも、
 “梅一輪一輪程の暖かさ”とあって、梅の花が一輪づつ咲くにつれて、わずかながらも暖かくなっていくさまを詠んでいる。また「梅と鶯」と言い、取り合わせのよいことの例えにしている。

 ◇「鶯」
 全国に生育し、7亜種に分類される。琉球列島では屋久島・奄美・西表に生息するリュウキュウウグイス、南大東島のみに繁殖するダイトウウグイス、小笠原諸島のオガサワラウグイスが分布する。リュウキュウウグイスは全体的にカラフトウグイスに類似しているそうな。
 低地から山地にかけて、ススキの草むらや藪の中に生息。秋冬は平地で多くみられる。早春から初夏にかけて、よく囀󠄀りが聞こえるが、それ以外の季節は“チョッチョッ”と地鳴きをする。ときどき“ホーホケキョ!”と力強く鳴くが、これは活動が活発になった、つまり(谷渡り)のときの鳴き声だそうな。
 鶯は捕獲してはいけない。保護鳥である。

 ◇梅と鶯に関する古歌。
 *梅は「んみ」、鶯は「うぐゐし」と発音する。

 “深山鶯ぬ節ぬ知らにどぅん 梅ぬ匂いしちどぅ 春や知ゆる
 《みやま うぐゐしぬ しちや しらにどぅん ンミぬ にうぃ しちどぅ はるやしゆる

 歌意=深い山奥の鶯はまだ春の訪れを知らないけれど、人里に梅の花がほころんだことを知って目覚めたようだ。春はもうそこに来ている。鶯も人間も季節を共有する時だ。

 ラジオからキャンディーズの歌が聴こえる。
 ♪もうすぐ 春ですねぇ~