★連載NO.294
(この一編は、6月23日。沖縄全戦没者慰霊の日に、RBCiラジオで放送した台
本である)
SE=<蝉の声>
爺=今年もジージャーが鳴き始めたね。
梅雨がすっきり上ったら、もう、朝早くからうるさくて朝寝も出来なくなる。
ん?それで?・・・・。そうか。学校の宿題なのか。うん・・・・うん。お父さ
んが・・・・戦争のことなら、お爺ちゃんに聞いておいでって言ったのか。学校の 先生も明日香のお父さんもお母さんも、戦後もいいとこの生まれだからぇ・・・。 戦争ばなしは、このお爺ちゃんの役目と言うわけか・・・・ハハハハ。我んにん兵 隊かい行じゃるむのぉあらん。うりどぅくるか、年端んいかん童どぅやてぇーくと う、何のための戦争だったのか・・・・誰がはじめたのか・・・・。しかっとぉ、 今ちきてぃ分らのぉあしが、子どもには子どもが体験した「戦争」があるからね。
明日香の宿題に応えられるかどうか、分らのぉあしが、聞いてみるかい。
= 間 =
爺=昭和19年。そう、63年前。お爺ちゃんは、国民学校6年生だった。ん?明日香 と同じ年なのかハハハハ。
M=<静かな音楽>・・・・・・・BG
AN=作・上原直彦。演出・森根尚美。効果及び選曲・除 弘美。出演・北村三郎。
M=・・・・・・・・・・・・FO
SE=<蝉の声>
爺=昭和19年の9月ごろからは、学校へ行っても授業はほとんどなくてね。大人や中 学生の男性は、日本軍の命令で防空壕堀りをしていた。えっ?防空壕は、まんいち アメリカ軍が爆撃してきたときに避難する「壕」さぁ・・・・。いやいや、お爺ち ゃんたちが避難するためのものではない。日本の兵隊さんが「隠れるための防空 壕」さぁ。「お国のために戦っている兵隊さんの命」が、先ず第一。
国民学校6年生のお爺ちゃんたちは、大人が掘り起こした土や小石をカマジーに入 れて運ぶのが役目。「戦争」というのが何なのかも分らなかったから、結構楽しく 土運びをしていたよ。皆で歌をうたいながらね。えっ?どんな歌かって?ハハハ ハ。久しぶりに歌ってみるか。(間)
♪ボクは軍人大好きだ いまに大きくなったなら 勲章つけて剣さげて
お馬に乗って ハイ ドードー
ハハハハ。ほんとうだね、変な歌だね。でもよ、あのころは、大きくなったなら男 は陸軍大将が海軍大将。女は従軍看護婦になれ!と教育されていたんだ。
= 間 =
爺=<フィルター=ひとり言> あん言ちん、今ぬ童ん達ぁ、若者のぉ理解できないだ ろうなぁ・・・・・。教育んでぃ言しぇー大事なむん。国ぬ有り様にゆってぇ、ち ゃぬような方向にん、向かぁさりーどぅすぐとぅ・・・・恐ろしい・・・・。
= 間 =
爺=ん?「それから」って? あ、ごめんごめん。お爺ちゃん、アッタに黙ってしまっ たかハハハハ。それからね<間>
大人たちは、何故か暗い顔になるし、あまり話もしなくなってくるし「何か大変な ことが、身近に起きているなッ」とは、感じていたのだが・・・・・。その不安が 不安ではすまされなくなってきた。昭和19年10月10日。突然!
SE=<空襲警報のサイレン>
爺=空襲警報が鳴った。アメリカ軍の空襲が始まった。何が何だか分らなかった。ただ ただ、オトーやオカーの言うままに、ネーネー共々、家ぬクシーに掘ってあった我 が家用の防空壕に飛び込んだ。
= 間 =
爺=戦争というものはね明日香。陸や海から攻めてくるなら、逆の方向の遠い所に逃げ たらいいが、空からの爆弾は「いつ、どこから爆弾が落ちるか」分らないから、た だジッとしているより外はない。ネーネーが作ってくれた防空頭巾を被ってね。日 ごろ、学校の先生が教えてくれた「歌」の通りにね。えっ?お爺ちゃんは「戦争と いうのによく、歌ばかりうたっていたんだね」だって?ハハハハ。ほんとうだね。 「どんな歌なの?」ハハハハ、また歌うの・・・・。もう、忘れかけている が・・・・。
♪<歌う> 空襲警報聞こえてきたら ボクたち今は小さいから
大人の言うことよく聞いて 慌てないで騒がないで落ちついて入ってい きましょう 防空壕
M=<不安な音楽>・・・・・・・・BG
爺=それから、年が明けて昭和20年。どうすることも出来ない中、お爺ちゃんたち は、空襲の合間をぬって今度は、芋掘り作業だ。防空壕を掘ったり、芋を掘ったり 忙しかった。でも、掘った芋はお爺ちゃんたちが食べるんじゃないよ。みんな兵隊 さんたちのモノ。お爺ちゃんたちは、掘りおこした畑に残った芋のチビーをあさっ て、食べていたんだ。
= 間 =
爺=そうこうしているうちに、4月1日。アメリカ軍は沖縄に上陸。陸上戦になった。
SE=<激しい戦闘音>・・・・・・・・・・BG
=7月5日号につづく=
次号は2007年7月5日発刊です!
上原直彦さん宛てのメールはこちら⇒ltd@campus-r.com
(この一編は、6月23日。沖縄全戦没者慰霊の日に、RBCiラジオで放送した台
本である)
SE=<蝉の声>
爺=今年もジージャーが鳴き始めたね。
梅雨がすっきり上ったら、もう、朝早くからうるさくて朝寝も出来なくなる。
ん?それで?・・・・。そうか。学校の宿題なのか。うん・・・・うん。お父さ
んが・・・・戦争のことなら、お爺ちゃんに聞いておいでって言ったのか。学校の 先生も明日香のお父さんもお母さんも、戦後もいいとこの生まれだからぇ・・・。 戦争ばなしは、このお爺ちゃんの役目と言うわけか・・・・ハハハハ。我んにん兵 隊かい行じゃるむのぉあらん。うりどぅくるか、年端んいかん童どぅやてぇーくと う、何のための戦争だったのか・・・・誰がはじめたのか・・・・。しかっとぉ、 今ちきてぃ分らのぉあしが、子どもには子どもが体験した「戦争」があるからね。
明日香の宿題に応えられるかどうか、分らのぉあしが、聞いてみるかい。
= 間 =
爺=昭和19年。そう、63年前。お爺ちゃんは、国民学校6年生だった。ん?明日香 と同じ年なのかハハハハ。
M=<静かな音楽>・・・・・・・BG
AN=作・上原直彦。演出・森根尚美。効果及び選曲・除 弘美。出演・北村三郎。
M=・・・・・・・・・・・・FO
SE=<蝉の声>
爺=昭和19年の9月ごろからは、学校へ行っても授業はほとんどなくてね。大人や中 学生の男性は、日本軍の命令で防空壕堀りをしていた。えっ?防空壕は、まんいち アメリカ軍が爆撃してきたときに避難する「壕」さぁ・・・・。いやいや、お爺ち ゃんたちが避難するためのものではない。日本の兵隊さんが「隠れるための防空 壕」さぁ。「お国のために戦っている兵隊さんの命」が、先ず第一。
国民学校6年生のお爺ちゃんたちは、大人が掘り起こした土や小石をカマジーに入 れて運ぶのが役目。「戦争」というのが何なのかも分らなかったから、結構楽しく 土運びをしていたよ。皆で歌をうたいながらね。えっ?どんな歌かって?ハハハ ハ。久しぶりに歌ってみるか。(間)
♪ボクは軍人大好きだ いまに大きくなったなら 勲章つけて剣さげて
お馬に乗って ハイ ドードー
ハハハハ。ほんとうだね、変な歌だね。でもよ、あのころは、大きくなったなら男 は陸軍大将が海軍大将。女は従軍看護婦になれ!と教育されていたんだ。
= 間 =
爺=<フィルター=ひとり言> あん言ちん、今ぬ童ん達ぁ、若者のぉ理解できないだ ろうなぁ・・・・・。教育んでぃ言しぇー大事なむん。国ぬ有り様にゆってぇ、ち ゃぬような方向にん、向かぁさりーどぅすぐとぅ・・・・恐ろしい・・・・。
= 間 =
爺=ん?「それから」って? あ、ごめんごめん。お爺ちゃん、アッタに黙ってしまっ たかハハハハ。それからね<間>
大人たちは、何故か暗い顔になるし、あまり話もしなくなってくるし「何か大変な ことが、身近に起きているなッ」とは、感じていたのだが・・・・・。その不安が 不安ではすまされなくなってきた。昭和19年10月10日。突然!
SE=<空襲警報のサイレン>
爺=空襲警報が鳴った。アメリカ軍の空襲が始まった。何が何だか分らなかった。ただ ただ、オトーやオカーの言うままに、ネーネー共々、家ぬクシーに掘ってあった我 が家用の防空壕に飛び込んだ。
= 間 =
爺=戦争というものはね明日香。陸や海から攻めてくるなら、逆の方向の遠い所に逃げ たらいいが、空からの爆弾は「いつ、どこから爆弾が落ちるか」分らないから、た だジッとしているより外はない。ネーネーが作ってくれた防空頭巾を被ってね。日 ごろ、学校の先生が教えてくれた「歌」の通りにね。えっ?お爺ちゃんは「戦争と いうのによく、歌ばかりうたっていたんだね」だって?ハハハハ。ほんとうだね。 「どんな歌なの?」ハハハハ、また歌うの・・・・。もう、忘れかけている が・・・・。
♪<歌う> 空襲警報聞こえてきたら ボクたち今は小さいから
大人の言うことよく聞いて 慌てないで騒がないで落ちついて入ってい きましょう 防空壕
M=<不安な音楽>・・・・・・・・BG
爺=それから、年が明けて昭和20年。どうすることも出来ない中、お爺ちゃんたち は、空襲の合間をぬって今度は、芋掘り作業だ。防空壕を掘ったり、芋を掘ったり 忙しかった。でも、掘った芋はお爺ちゃんたちが食べるんじゃないよ。みんな兵隊 さんたちのモノ。お爺ちゃんたちは、掘りおこした畑に残った芋のチビーをあさっ て、食べていたんだ。
= 間 =
爺=そうこうしているうちに、4月1日。アメリカ軍は沖縄に上陸。陸上戦になった。
SE=<激しい戦闘音>・・・・・・・・・・BG
=7月5日号につづく=
次号は2007年7月5日発刊です!
上原直彦さん宛てのメールはこちら⇒ltd@campus-r.com