旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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つれづれ・いろは歌留多その2

2013-06-20 11:02:00 | ノンジャンル
(い)は、いろは歌の順の1番目にあることから「いの一番」という慣用語を生み、物事の最初、冒頭、第1番目を意味するようになった。転じて「初歩的」を指すこともあり、一般的に使われている。
 物ごとを優先して成すことも「イの一番に手をつける」と言い、「それは物ごとのイロハだよ」と(初歩)を示唆することもある。「英会話のイロハ」と題する小冊子を見たことがある。英会話ならば「英会話のABC」ではないか!と思わず苦笑した。まあ、イロハもABCも慣用語の意味するところは同じだから、それでいいのだが・・・・。
 さて。今回は、イロハの「ほ」から、歌留多風に言葉を連ねてみよう。

 ※「ほ」
 読み手=ほうち掻ち〈かち〉
 取り手=家の内外〈うちそと〉掃き清め。
 *座敷や庭などを菷(ほうき)でもって掃き清めることを「はち ちゆみ」とも言うが、一般的には「菷掻ち」と使っている。
 菷には大別にして2種ある。内菷〈うちぼうち〉と庭菷〈にわぼうち〉。内菷は座敷用で尾花(ススキの穂及び茎)で作ったもの。別名バランボウチが主流で、黒ツグの繊維や棕櫚(クバ)の葉を利用しても作られた。庭菷は、主にヤンバルダキ(琉球竹)やグサンダキ(布袋竹)の枝を束ねて作った。かつての家屋の土間や台所では、ソテツの葉を数枚重ねて作ったスーティーチャーボウチ(ソテツの菷)を多用していた。

 ※「へ」。
 読み手=平安座(へんざ)辺野古(ふぃぬく)辺戸岬(ふぃどぅみさち)!
 取り手=沖縄読みの地名だよ
 沖縄語では「へ」が「ふぃ」に変化する発音が多い。自分の住んでいる市町村の地名を方言読みしてみるのも、面白かろう。

 ※「と」。
 詠み手=唐船(とうしん)どーいっ
 取り手=中国(唐)通いの大型船
 王府時代、中国との交易に使用された官船。他にも薩摩通いの公用船「楷船=キーシン」、薩摩への緊急特別船「飛船=ビシン」、東南アジアや中国への貿易船「馬艦=マアラン」がある。馬艦の小型は、離島や殊に北部との物資流通に活躍。通称ヤンバルブニ、ヤンバラーと言う。内海用はサバニ、シンニが主。
 「と」は、助詞になると「とぅ」になる場合が多々。

 ※「ち」。
 読み手=チンナンモーモー まあかいが?
 取り手=かたつむり!かたつむり!どこ行くの?
 チンナン(かたつむり・蝸牛)。モーモーは、幼児語で尾語。
 蝸牛は種類が多く、日本だけでも約700種。世界には2万種以上が確認されているそうな。エスカルゴやマイマイもその仲間。デンデンムシの愛称は、誰でも幼少のころから親しんできたことだろう。

 チンナンは、梅雨時に多く這い出てくる。
 小学校のころ。梅雨時は外にも出られず、庭に這い出たチンナンを5,6匹捕えてきて、縁側の床に這わせ、走り?競争をさせてチンナンオリンピックを楽しんでいた。はじめは面白いが、何レースかしているうちに、競争にしてはあまりにも足?が鈍く、飽きてしまう。それでも、他にやることもなく、アクビを声援にして延々、縁側にいた。しかし、レースのあとの床板には、チンナンの体液がヌルヌルと残った。おふくろに叱られたには言うまでもない。

 ※6月下旬の催事。
 *祈りの摩文仁、平和の灯火と平和の光の柱(糸満市)
  開催日:6月22日(土)
  場 所:平和祈念公園、平和の礎

 *第9回沖縄学徒隊慰霊ピースラン2013(那覇市)
  開催日:6月23日(日)
  場 所:奥武山公園大鳥居前スタート

 *2013はごろもカップ港ふれあいフェスティバル(宜野湾市)
  開催日:6月30日(日) 
  場 所:宜野湾港マリーナ


ハブにはハブの都合あり!

2013-06-10 01:37:00 | ノンジャンル
「ハブは攻撃的な性格は持ち合わせているが、それは生きるための本能。積極的に人間に仇はなさない。人間が彼らのテリトリーを侵害する場合のみ、毒牙をむく。それを人間は、ハブを悪者にすることによって正当化しているにすぎない」。
 農業ひと筋に生きてきて、ハブとも親しく付き合ってきた御仁の言葉。かなり説得力がある。自然との共存を強調しているように思える。長モノが好きなわけではないが・・・。

 ※ハブ注意報発令。
 県は5月1日。県民や観光客に対し「ハブ咬症注意報」を発令した。発令期間は6月30日まで。気温が上がるこの時期は、ハブの活動が活発化する。田畑や山野、草地などへの出入りや夜間の歩行の際の注意を呼びかけている。
 県によるとハブ咬症被害は毎年100件ほど起きている。2012年のデータを見ると被害件数92件。種別ではハブ46件、サキシマハブ33件、ヒメハブ12件、タイワンハブ1件。市町村別で最も多かったのは八重山石垣市22件、同竹富町10件、糸満市と国頭村が各9件。県薬務疾病対策課は万一、ハブに咬まれた場合の処置として、*激しく動かず、身近の人に助けを求める。*応急処置として傷口から吸引器や口などで繰り返し毒を吸い出す。*早急に医療機関で治療を受ける。と呼びかけている。

 ※異例!宮古島でハブ発見。
 5月19日。ハブは生息しないとされる宮古島の平良港近くの公園でサキシマハブを市民が発見捕獲した。宮古島でハブを発見したのは初めてのこと。このハブは雄で体長44センチ、体重16グラム、生後半年~1年半の幼齢とみられる。
 県衛生環境研究所の研究員は「鑑定依頼は過去にも何度もあったが、今回はひと目でハブと分かって驚いた。外部から持ち込まれたとしか考えられない」とコメントしている。サキシマハブは与那国島や波照間島等を除く八重山諸島と、沖縄本島に生息しているものだ。

 ※ハブ!マングースを丸呑み!
 5月22日。宜野湾市志真志のTさん(73歳)が自宅敷地内にハブが侵入し、鳥かごに仮保護していたマングースを丸呑みしようとしているのを発見。Tさんに見つかってマングースを吐き出し、逃走しようとしているのを捕獲された。隣村の中城村の畑にマングースが出没して鶏の卵に被害が出ていると聞いたTさんが仕掛けを使って捕獲。このマングースに興味を示した孫のために鳥かごに入れてあったそうな。Tさんのハブとの付き合いは長く、10数年前には、自身もハブに後頭部を打たれたという。Tさんは「冬眠から覚めたハブの行動は、これから活発化する。素人は、不用意にハブのいそうな草地や山地に入らないこと。咬まれるのは、人間がハブを追い込んでいるからだ。ハブも生きるのに必死だからね」と、注意を喚起している。

 ※ハブ・昔ばなし。
 この世のすべての生きものが親しく睦み合っていたころ、蛇の仲間のハブは、人間を咬む癖があり、そのことを神様に咎められると「人間の方が先にワタシの尾を刃物で切ったので、仕方なく応戦して咬んだのです」と主張していた。しかし、そのことが再三にわたるに至って神様は、彼の胴体を3等分にし、琉球、大和、唐(中国)に放った。琉球は頭部、大和は胴部、唐は尾を得た。そのため琉球のそれはハブとなり毒牙で攻撃し、大和のヘビは胴体で巻き付け、唐の蛇は尾で刺すようになったという。

 ヘビ、蛇は(神の使者)として崇められ、縁起物とされるが、かわいそうなのはハブ。好んで人間に歯向かうわけでもないのに忌み嫌われる。人間に生き物に対する共存と愛情があるならば、ハブが生きて行けるテリトリーを侵害しないようにすべきではなかろうか。ハブ保存会の会長を務めているわけではないが・・・・。

 ※6月中旬の催事。

 ◇糸満ハーレー行事 (糸満市)
  開催日:6月12日(水)
  場 所:糸満漁港中地区

 ◇第3回 沖縄美らSUNビーチ オープンウォータースイムレース(豊見城市)
  開催日:6月15日(土)~16日(日)
  場 所:豊崎海浜公園美らSUNビーチ

 ◇各地域でハーリー競争が開催される。




雨ぬ節・琉歌・俗語

2013-06-01 00:10:00 | ノンジャンル
沖縄の空気は雨の匂い。
 5月14日。今年の梅雨が降り、向こう45日ほどは雨の匂いにつつまれる。「鬱陶しくやりきれない」。そんな声も聞くが〈雨の節=アミぬシチ。雨のシーズン・時期〉と割り切り、季節感を楽しむ気があれば、それほどイヤな顔を長引かせることもあるまい。

 江戸の風俗語に「雪の日(夜)の女郎屋」というのがあるそうな。
 雪の日は、いかな好き者でも(出かけはすまい)と考えるのが常識。しかし、雪の日、雨の日だからこそ客は少なく、出かければお茶を挽いている女郎衆に(モテる!)ことを意味しているらしい。遊蕩児には季節も天候も関係ないのだろう。雪が降らない沖縄に「雨ぬ節ぬ肴屋(さかなやー・飲み屋・遊里)なる俗語があるかというと、それはない。
 しかし、かつての花街チージのジュリ(遊女・芸妓)が、長雨を恨んで詠んだ琉歌はある。

 ♪雨ぬ降りてぃ晴りてぃ 通いたる里や 刀自惚りがしちゃら 当てぃん無らん
 〈あみぬふてぃ はりてぃ かゆいたるさとぅや トゥジぶりがしちゃら あてぃんねらん〉

 語意=*里〔若い男性の意〕。*女性は無蔵〈ンゾ〉。*。当てぃ〔沙汰〕。「当てぃなし」の場合は、沙汰無しの意になる。
 歌意=雨が降る日、晴れの日。お天気とは関係なく毎夜、遊びに来てくれたアノ人。この長雨で在宅が多くなり、その間に刀自(妻女)に惚れ直してアタシを忘れたのか、まったくの沙汰無しだワ。
 雨空を恨めし顔で仰いでいるジュリの客待ち顔が見えるような1首である。江戸の遊蕩児のように(雨、雪。これ幸い)と出かけないのが沖縄の(男)である。
 昨今、長雨や台風時に満員御礼を決めるのは、パチンコ屋と貸しDVD屋、カラオケハウスだそうな。毎夜顔を出すスナックなどは遠慮して、刀自を含む家族で長雨の日々を過ごす。沖縄男性の(まともさ)をみることができる。

 雨と言えば「上らん雨んちぇー無ぇん=あがらん アミんちぇーねーん」という俗語がある。直訳すれば「上がらない雨はない。いつかは上がり、晴れる」となる。しかし、意味するところは他にある。長雨を困難に譬えている。つまり、いま先の見通しもつかない困難に直面していても、時が経てば(きっといいこと)がある。その日を信じて、いまを耐えようと激励している。
 「内憂外患。これから日本はどうなるだろう」
 と、嘆く人あらば、
 「上らん雨んちぇー無ぇん。踏ん張っていれば晴れの日が来るサ」
 そうした使い方をしてみたい俗語。そう思いながら雨空を眺めている筆者。やはり、極楽とんぼなのかも知れない。

 ついでに俗語をいまひとつ。
 「刀自ぇ雨降いぬ傘=トゥジぇ あみふいぬカサ
 女房なるものは、雨の日にさす傘のようなもので、晴れた日には用はないというのだが、どんなものだろうか。「女房なんて空気みたいなののサ。あって当たり前。ないと、ちょいこまるがね」とのたまう御仁がいた。分かるような気もするが・・・・。
 雨音を聞き、雨の匂いを肺に送り込みながら、家でこの原稿を書いているが、我が家の傘・空気が姿が見えない。筆者は番犬になっている。犬がいること(これ幸い)と、どこへとも告げず、車のエンジン音を出かけの合図にして、いずこかへ消えた。傘には傘の(雨の日)の過ごし方があるようだ。
 さて、傘の御帰還まで、犬はどう過ごそうか。

 “あめあめふれふれ母さんが 蛇の目でお迎えうれしいな ピチピチジャブジャブ ランランラン”
 「世の中の傘になれ」と言っていたおふくろを偲びながら、堕眠と付き合っていよう。

 ※6月中旬の催事。

 *糸満ハーレー (糸満市)
 開催日:6月12日(水)
 場 所:糸満漁港中地区

 *第3回 沖縄美らSUNビーチ オープンウォータースイムレース(豊見城市)
 開催日:6月15日(土)~16日(日)
 場 所:豊崎海浜公園美らSUNビーチ