平成15年(2003)8月10日。沖縄初の都市モノレール・通称(ゆいレール)が開通。那覇空港から古都首里の東、汀良町(てら ちょう)在・首里駅まで15駅を走っている。
営業距離12.9km。片道27分。2両編成・165人乗り。座席1両65席。商業地、在宅地を観ながら走行。儀保駅(ぎぼ)~首里駅では那覇市が一望できる上に、クジラ海峡と通称される慶良間諸島が目の前に広がる。四季を問わず、慶良間のその向こうに夕陽は、波が錦を織らせているかのようだ。
各駅到着前には、それを知らせる木琴の演奏で10秒、沖縄メロディーが車内に流れる。駅順を追って沖縄メロディーを聴こう。
⑴=那覇空港駅。
♪谷茶前節(たんちゃめー)。
*恩納村谷茶集落を舞台に、漁村の人々の日常から生まれた歌。沖縄人でこの節を知らない人はいまい。振付された踊りも有名。
⑵=赤嶺駅。
♪花の風車(はなぬ カジマヤー)。
*わらべ唄。生まれ年を祝う生年祝儀(トゥシビーすーじ)の中でも97歳のそれを「かじまやー祝」と言い、「その齢になると人間、一切の悪欲、邪念を超越して、童心に還るとされる長寿祝いの歌。
⑶=小禄駅(おろく)。
♪三村節(みむら ぶし)。
*近隣に豊見城、垣花の集落があるため、小禄・豊見城・垣花を合わせ読みして「三村節」とした。他に潮平(すんじゃ)、兼城(かなぐしく)、糸満(いちまん)三村。首里の赤田(あかた)、鳥堀(とぅんじゅむい)、崎山(さちやま)三村の歌詞もある。
⑷=奥武山公園駅(おおのやま)。
♪じんじん。
*わらべ唄。「じんじん」は、蛍を指す幼児語。一般的には「ジーナー」。
⑸=壷川駅。
♪唐船どーゐ(とうしん)。
*唐船は王府時代、中国交易に就いた官船。「どおゐッ!」は「××だぞうっ」という「呼ばわり語」。
⑹=旭橋駅。
♪海のチンボーラー。
*遊び唄の代表格。駅近くには現在、バスターミナルがある。この地はかつて「仲島遊郭」だった。「チンボーラー」は、浅瀬に生息する小巻貝類。
⑺=県庁前駅。
♪てぃんさぐぬ花。
*和名=鳳仙花。わらべ唄。教訓歌が多い。かつてはその葉や花弁をつぶし、赤い液で指のツメを染めて、女の子たちは「おしゃれ」をした。
⑻=美栄橋駅(みえばし)。
♪ちんぬくじゅうしい。
*ちんぬくは里芋。じゅーしーは雑炊。したがって「里芋入りの雑炊」ということになる。曲は琉球放送ラジオの番組「ホームソング」として放送。作詞あさ ひろし。作曲三田信一。昭和43年(1968)発表。
⑼=牧志駅(まきし)。
♪いちゅび小節(いちゅびぐぁ)。
*「いちゅび」は、野苺の意。エイサー唄にも組み入れらている。
⑽=安里駅(あさと)。
♪安里屋ゆんた。八重山の流行り唄。
⑾=おもろまち駅。
♪だんじゅかりゆし。
*船送り唄。だんじゅは「誠・本当に・げにこそ・道理で」の意。
かりゆしは(嘉例吉。吉事。めでたい)を意味する古語。
⑿=古島駅。
♪月ぬかいしゃ。
*八重山の歌。「かいしゃ」は、清らか。美しい。転じて、愛しい。愛しい人をも指す。
⒀=私立病院前駅。
♪くいちゃ。
*宮古島の集団歌舞。くい(声)、ちゃー(合わせる。混ぜる)の意。したがって「声合わせ歌」。
⒁=儀保駅(ぎぼ)。
♪芭蕉布。琉球放送ラジオの「ホームソング」の内。昭和40年(1965)発表。作詞吉川安一。作曲普久原恒男。
⒂=首里駅。
♪赤田首里殿内(あかた すん どぅんち)。
*王府時代、首里には祭事を司る首里、儀保、真壁の三祝女館があった。首里殿内は地内の赤田にあったため、首里の上に(赤田)を被せた。わらべ唄。五穀豊穣、平和招致祈願の歌。
さてさて。
すっかり庶民の足になった「ゆいレール」は、さらに隣市の浦添まで延びて、令和元年10月1日、総延長は約17kmを運行している。新駅名と到着告知メロディーを紹介しよう。首里駅を出たモノレールは、やがて石嶺駅に着く。
⒃=石嶺駅。
♪ちょんちょんキジムナー。
*キジムナーは昔ばなしに語られる老木に棲む妖精。ちょんちょんは(来たぞっ、来たぞっ!キジムナーが来たぞっ)の意。戦前、女学校生が唄った歌を照屋林助、川上進行が採譜、作詞して世に出た。
⒄=経塚駅(きょうづか)。
♪はべら節。
*はべらは「蝶」の総称。ハーベールー。ハビル。ハベルとも言う。
⒅=浦添前田駅。
♪めでたい節。
*一般的祝儀歌。
⒆=でだこ浦西駅。
♪ヒヤミカチ節。
*「ヒヤっ」は、行動を起こす折りに発する気合い語。「ミカチ」は「××をする」さま。終戦まもなく、古典歌謡研究家の山内盛彬が作詞作曲した。いわば沖縄応援歌。
かくて結いレールは沖縄中の歌を唄いながら、今日もいい顔で走っている。
営業距離12.9km。片道27分。2両編成・165人乗り。座席1両65席。商業地、在宅地を観ながら走行。儀保駅(ぎぼ)~首里駅では那覇市が一望できる上に、クジラ海峡と通称される慶良間諸島が目の前に広がる。四季を問わず、慶良間のその向こうに夕陽は、波が錦を織らせているかのようだ。
各駅到着前には、それを知らせる木琴の演奏で10秒、沖縄メロディーが車内に流れる。駅順を追って沖縄メロディーを聴こう。
⑴=那覇空港駅。
♪谷茶前節(たんちゃめー)。
*恩納村谷茶集落を舞台に、漁村の人々の日常から生まれた歌。沖縄人でこの節を知らない人はいまい。振付された踊りも有名。
⑵=赤嶺駅。
♪花の風車(はなぬ カジマヤー)。
*わらべ唄。生まれ年を祝う生年祝儀(トゥシビーすーじ)の中でも97歳のそれを「かじまやー祝」と言い、「その齢になると人間、一切の悪欲、邪念を超越して、童心に還るとされる長寿祝いの歌。
⑶=小禄駅(おろく)。
♪三村節(みむら ぶし)。
*近隣に豊見城、垣花の集落があるため、小禄・豊見城・垣花を合わせ読みして「三村節」とした。他に潮平(すんじゃ)、兼城(かなぐしく)、糸満(いちまん)三村。首里の赤田(あかた)、鳥堀(とぅんじゅむい)、崎山(さちやま)三村の歌詞もある。
⑷=奥武山公園駅(おおのやま)。
♪じんじん。
*わらべ唄。「じんじん」は、蛍を指す幼児語。一般的には「ジーナー」。
⑸=壷川駅。
♪唐船どーゐ(とうしん)。
*唐船は王府時代、中国交易に就いた官船。「どおゐッ!」は「××だぞうっ」という「呼ばわり語」。
⑹=旭橋駅。
♪海のチンボーラー。
*遊び唄の代表格。駅近くには現在、バスターミナルがある。この地はかつて「仲島遊郭」だった。「チンボーラー」は、浅瀬に生息する小巻貝類。
⑺=県庁前駅。
♪てぃんさぐぬ花。
*和名=鳳仙花。わらべ唄。教訓歌が多い。かつてはその葉や花弁をつぶし、赤い液で指のツメを染めて、女の子たちは「おしゃれ」をした。
⑻=美栄橋駅(みえばし)。
♪ちんぬくじゅうしい。
*ちんぬくは里芋。じゅーしーは雑炊。したがって「里芋入りの雑炊」ということになる。曲は琉球放送ラジオの番組「ホームソング」として放送。作詞あさ ひろし。作曲三田信一。昭和43年(1968)発表。
⑼=牧志駅(まきし)。
♪いちゅび小節(いちゅびぐぁ)。
*「いちゅび」は、野苺の意。エイサー唄にも組み入れらている。
⑽=安里駅(あさと)。
♪安里屋ゆんた。八重山の流行り唄。
⑾=おもろまち駅。
♪だんじゅかりゆし。
*船送り唄。だんじゅは「誠・本当に・げにこそ・道理で」の意。
かりゆしは(嘉例吉。吉事。めでたい)を意味する古語。
⑿=古島駅。
♪月ぬかいしゃ。
*八重山の歌。「かいしゃ」は、清らか。美しい。転じて、愛しい。愛しい人をも指す。
⒀=私立病院前駅。
♪くいちゃ。
*宮古島の集団歌舞。くい(声)、ちゃー(合わせる。混ぜる)の意。したがって「声合わせ歌」。
⒁=儀保駅(ぎぼ)。
♪芭蕉布。琉球放送ラジオの「ホームソング」の内。昭和40年(1965)発表。作詞吉川安一。作曲普久原恒男。
⒂=首里駅。
♪赤田首里殿内(あかた すん どぅんち)。
*王府時代、首里には祭事を司る首里、儀保、真壁の三祝女館があった。首里殿内は地内の赤田にあったため、首里の上に(赤田)を被せた。わらべ唄。五穀豊穣、平和招致祈願の歌。
さてさて。
すっかり庶民の足になった「ゆいレール」は、さらに隣市の浦添まで延びて、令和元年10月1日、総延長は約17kmを運行している。新駅名と到着告知メロディーを紹介しよう。首里駅を出たモノレールは、やがて石嶺駅に着く。
⒃=石嶺駅。
♪ちょんちょんキジムナー。
*キジムナーは昔ばなしに語られる老木に棲む妖精。ちょんちょんは(来たぞっ、来たぞっ!キジムナーが来たぞっ)の意。戦前、女学校生が唄った歌を照屋林助、川上進行が採譜、作詞して世に出た。
⒄=経塚駅(きょうづか)。
♪はべら節。
*はべらは「蝶」の総称。ハーベールー。ハビル。ハベルとも言う。
⒅=浦添前田駅。
♪めでたい節。
*一般的祝儀歌。
⒆=でだこ浦西駅。
♪ヒヤミカチ節。
*「ヒヤっ」は、行動を起こす折りに発する気合い語。「ミカチ」は「××をする」さま。終戦まもなく、古典歌謡研究家の山内盛彬が作詞作曲した。いわば沖縄応援歌。
かくて結いレールは沖縄中の歌を唄いながら、今日もいい顔で走っている。