旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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臣下・シンカ・仲間・グループ・同士

2017-04-10 00:10:00 | ノンジャンル
 ♪ばんばんばんばん ばんシンカ 我達や いぇーじゅう バンシンカ(繰り返し)
  島ぬ宝や島言葉 ファーフジ譲り受き取やい 縦横自由に 語やびら
  <島の宝は島言葉 祖父母譲りを習い取って 縦に横に自由に使いこなそう>

 ♪芝居言葉ん習れとぅやい 貴人百姓ないくどてぃ 沖縄国中 飛んみぐら
  <芝居の脚本も参考にして学習し、時に身分ある者、時に百姓に成り切って、沖縄中を飛びまわろう>

 ♪生まり育ちや 異なてぃん かなさる我が島 誇やびら 兄弟心ぬ 頼まさや
  <塾生の生まれ育ち、年齢・経歴は異なっても、我が沖縄を誇る心は皆、ひとつ。この兄弟姉妹のような結びつきの頼もしいことよ>

 ♪黄金言葉ん 意味ふとぅち 語いる中 物知ゆさ 揃るい揃るたや くぬシンカ
  <古諺・俗語もよく解釈、理解し、使いこなせば賢くなる。揃い揃った、この「ばん」シンカ

 ことばの勉強会・北村三郎芝居塾「ばん」を開塾した折り「どうせのことなら」と上原直彦作詞、前川守賢作曲で作ったのが、この塾歌「ばんシンカの歌」である。蛇足ながら付記すれば、
「ばん」とは、芝居の開幕、閉幕を告げる、いわば拍子木のこと。正式には「析」。役者北村三郎を塾長としたところから、その名をつけた。毎週木曜日夕刻、沖縄市立芸能館を教室にして、開塾17年目を数える。一応、態をなそうと年功序列を重んじ、塾長北村三郎、専任講師上原直彦、理事長備瀬善勝を置いたことだが、北村、備瀬に(長)の肩書が付いているのに対し、上原には(長)がない。
 「それでは公平を欠く。50年来の仲!友情にもひびが入りかねない!」
 上原からクレームがついて、専任講師から「学長」に昇格している。嘲笑、失笑のいたりだが、それほどラフで(遊びごころ)優先の塾なのである。したがって、塾生の年齢も80歳代から20歳代。それに塾友合わせて20名ばかり。入塾退塾自由。元公務員、元学校教師、会社員、主婦、現役教師、美術館学芸員、歌者の卵等々、塾生もさまざま。年配者の存在は、個々の経験が学習の要になっているし、出身地が異なるのも、それぞれの持ち合わせている地方語、風俗、習慣など、比較対象する学習に厚みを持たせている。生れ育ちは異なっても、それぞれの郷土愛は変わらない~とは、このことである。

 さて。
 「シンカについて」。
 語源は武家社会の主従、臣下・家来からの転語とされる。身分制度が廃止されても言葉だけは活用され仲間、集団、グループ等の意味合いになって現在でも普通に使われている。その例をいくつか上げてみよう。

 ◇同ぬ会社シンカゐぬクヮイサ)。同じ会社の同僚。企業別に分けてもいい。役所(やくすシンカ)。銀行シンカ。商ねーシンカあちねー)。海業(うみワジャシンカ。ボクは放送局シンカに組み入れられる。
 ◇地域別。
 *なーふぁシンカ=那覇の連中。
 *くぢゃーシンカ=コザの連中。
 *やんばるシンカ=北部の人たちなど。さらに細分化して集落名を被せてもよい。東京シンカ。それも新宿、渋谷など、本拠地としている所名にも(シンカ)を付けると、より鮮明で親しみがもてる。
 ◇芸能界。
 *三線シンカ=歌三線をよくする連中。
 *踊ゐシンカ=舞踊家連。
 *芝居シンカ=役者連。
 流派名を被せて××シンカという呼び方もする。
 ただ「シンカ」とは言っても、何もできないでは(シンカ)にはなれない。その仲間、グループに相応しい才能を持ち合わせなければならない。そこでよく言ったり聴いたりする(シンカ)が「いらびシンカ」だ。
 その世界、仲間に適合した「選ばれし者」「スカウトされし者」「エリート集団」をも指して「いらびシンカ」とはよく称したものだ。逆に不良シンカあしばーシンカ(遊び人)などがあることも付け加えておかなければならない。

 再びさて。
 我らが「ばんシンカ」。この月末の4月29日(土)午後7時開演。沖縄市民小劇場あしびなーで「若夏・花舞台」と称する公演を打つ。なにしろ「ことばの勉強会」のこと。プロ並みにはいかないだろう。そこは稽古量で補い舞踊、島うた、小歌劇、二胡演奏などを披露する。それだけでは入場料をいただくわけにはいかない。特別塾生女優吉田妙子のひとり語り「日々好日」はじめ歌者前川守賢、役者高宮城実人、舞踊家座喜味米子らを迎えての舞台構成になっている。公演のチラシを見ると「話芸・珍芸・おはこ芸!またもやらかす、ばんシンカ」とある。
 昨今の世情はキナ臭かったり、眉をしかめることが多い。本格的の暑くなる前に、肩がまったく凝らない「ばんシンカ」の舞台につき合ってくれますまいか。入場料は決して安くはない2000円。あなたの来場だけがたのみなのである。

 北村三郎・芝居塾「ばん」公演
 日時:2017年4月29日(土)昭和の日 午後7時開演
 入場料:2000円
 場所:沖縄市民小劇場あしびなー
 チケット購入先:(有)キャンパス098-932-3801 沖縄市民小劇場あしびなー098‐934‐8487

   

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