3月中旬、宮古島ではイワサキクサゼミが産声をあげ、下旬には県下デイゴの開花があり、辺りも清く明るくなって、沖縄は夏突入の時候。その精気を取り込んで芝居公演に向けて稽古に熱を入れている集団がある。
ことばの勉強会・北村三郎芝居塾「ばん」がそれだ。
芝居塾とは言っても、役者養成をしているのではなく、沖縄語が詰め込まれた芝居を通して、消滅が懸念される方言を1語でも2語でも使い合おうという同志が集まっている。週1回、気軽に寄り合い古諺、琉歌、モノの名称、地名等々。時には芸能公演、各地の伝統芸能のDVD記録を鑑賞。10月に入ったころから、年明けの定期公演に向けた稽古を開始している。
12回目を数える今回の公演は、4月28日午後6時30分開演。沖縄市民小劇場「あしびなー」で幕を開ける。演目=琉球舞踊二題。落語。そして、上原直彦作、北村三郎演出「敗戦模様・九年母の木の下で」と、2時間半の舞台。
「九年母の木の下で」は終戦直後、作者が捕虜収容地で体験、見聞した日々をベースにした作品。国敗れ世に言う〔アメリカ世〕になって、人びとは悲喜劇を演じていた。主な登場人物を拾ってみよう。
※班長=終戦まで学校の用務員をしていた。好人物で多少、読み書きができることから、班長に推された。(芝居の狂言回し)。
※元校長=皇民化教育を推進し、多くの若者を戦場に送り出した教育者。ほとんどの教え子が南方や沖縄戦で戦死。その責任を感じてか精神を病み終日“勝ってくるぞと勇ましく誓って国を出たからは~天皇陛下バンザイ~”と軍歌「露営の歌」を歌いながら収容地中を行進している。
※ギターを弾く男=戦中は郷土防衛隊員。生存はしたものの酒浸り。米軍が持ち込んだ野戦用固形メチルアルコールを溶かして飲むようになり、遂には失明。失意をギターで紛らわしている。古賀政男メロディーが得意。“まぼろしの影を慕いて雨の日に・・・”と歌う。見えない目でどんな(まぼろし)を見ているのか。
※マリーと呼ばれる女=過去は一切分からない。米兵相手のパンパン(身を売る女)。マリーは言う。「男はいいね。戦場に行ってお国のために戦い、戦死すればいい。女はどう?生きていくためには・・・・このザマさっ。戦争は生きるも地獄!死ぬのも地獄なのよっ」。それでも明るい笑顔を絶やさない。
※避難中の老婆=実家には各地からの避難民が住み、一家は山奥のガマ(洞窟)に隠れ暮らしている。米軍には直接「見つかってはいない」というのがガマ暮らしの理由。病身のため、徴兵検査を免れた息子がいるが、他の息子たちは戦死。老婆は言う「戦争とは理屈が合わない。元気な若者は甲種合格で戦場に送り戦死させて、病身の者は残して生かしている。天皇陛下は何を考えていたのか」。
※芝居の幹部=失意の人びとを慰問しようと劇団結成をした。しかし、役者が足りない。そこで、捕虜収容地に隠れ住む生き残りの役者を探し求めて各地を巡っている。(実際に昭和20年、敗戦の年の12月25日に収容地のひとつ石川市〈現・うるま市〉の城前小学校校庭でプロによる芸能公演がなされている)。
その他、失われた住居を復元して(ひと儲け)を企み、基地から大工道具を窃盗。MP(ミリタリーポリス)に逮捕され、銃殺されそうになった男たち。死んでも米軍がくれる食料を拒否する一家。無邪気に遊び回る子ども
たち・・・。失意、希望。悲喜こもごもの綾なす舞台。
素人集団の芝居に、活躍中の舞踊家座喜味米子、小嶺和佳子。劇団「石なぐ」の當銘由亮、高宮城実人、知名剛史が客演。さらにベテラン仲嶺眞永、吉田妙子が特別出演。終戦直後の沖縄を省みて、今日の沖縄を考えてみませんか。来場希望。
※お知らせ ばん塾12期公演
日時:2013年4月28日(日)午後6時30分開演
場所:沖縄市民小劇場 あしびなー
料金:2,000円
チケットのお問い合わせ先:(有)キャンパスレコード 098-932-3801
ことばの勉強会・北村三郎芝居塾「ばん」がそれだ。
芝居塾とは言っても、役者養成をしているのではなく、沖縄語が詰め込まれた芝居を通して、消滅が懸念される方言を1語でも2語でも使い合おうという同志が集まっている。週1回、気軽に寄り合い古諺、琉歌、モノの名称、地名等々。時には芸能公演、各地の伝統芸能のDVD記録を鑑賞。10月に入ったころから、年明けの定期公演に向けた稽古を開始している。
12回目を数える今回の公演は、4月28日午後6時30分開演。沖縄市民小劇場「あしびなー」で幕を開ける。演目=琉球舞踊二題。落語。そして、上原直彦作、北村三郎演出「敗戦模様・九年母の木の下で」と、2時間半の舞台。
「九年母の木の下で」は終戦直後、作者が捕虜収容地で体験、見聞した日々をベースにした作品。国敗れ世に言う〔アメリカ世〕になって、人びとは悲喜劇を演じていた。主な登場人物を拾ってみよう。
※班長=終戦まで学校の用務員をしていた。好人物で多少、読み書きができることから、班長に推された。(芝居の狂言回し)。
※元校長=皇民化教育を推進し、多くの若者を戦場に送り出した教育者。ほとんどの教え子が南方や沖縄戦で戦死。その責任を感じてか精神を病み終日“勝ってくるぞと勇ましく誓って国を出たからは~天皇陛下バンザイ~”と軍歌「露営の歌」を歌いながら収容地中を行進している。
※ギターを弾く男=戦中は郷土防衛隊員。生存はしたものの酒浸り。米軍が持ち込んだ野戦用固形メチルアルコールを溶かして飲むようになり、遂には失明。失意をギターで紛らわしている。古賀政男メロディーが得意。“まぼろしの影を慕いて雨の日に・・・”と歌う。見えない目でどんな(まぼろし)を見ているのか。
※マリーと呼ばれる女=過去は一切分からない。米兵相手のパンパン(身を売る女)。マリーは言う。「男はいいね。戦場に行ってお国のために戦い、戦死すればいい。女はどう?生きていくためには・・・・このザマさっ。戦争は生きるも地獄!死ぬのも地獄なのよっ」。それでも明るい笑顔を絶やさない。
※避難中の老婆=実家には各地からの避難民が住み、一家は山奥のガマ(洞窟)に隠れ暮らしている。米軍には直接「見つかってはいない」というのがガマ暮らしの理由。病身のため、徴兵検査を免れた息子がいるが、他の息子たちは戦死。老婆は言う「戦争とは理屈が合わない。元気な若者は甲種合格で戦場に送り戦死させて、病身の者は残して生かしている。天皇陛下は何を考えていたのか」。
※芝居の幹部=失意の人びとを慰問しようと劇団結成をした。しかし、役者が足りない。そこで、捕虜収容地に隠れ住む生き残りの役者を探し求めて各地を巡っている。(実際に昭和20年、敗戦の年の12月25日に収容地のひとつ石川市〈現・うるま市〉の城前小学校校庭でプロによる芸能公演がなされている)。
その他、失われた住居を復元して(ひと儲け)を企み、基地から大工道具を窃盗。MP(ミリタリーポリス)に逮捕され、銃殺されそうになった男たち。死んでも米軍がくれる食料を拒否する一家。無邪気に遊び回る子ども
たち・・・。失意、希望。悲喜こもごもの綾なす舞台。
素人集団の芝居に、活躍中の舞踊家座喜味米子、小嶺和佳子。劇団「石なぐ」の當銘由亮、高宮城実人、知名剛史が客演。さらにベテラン仲嶺眞永、吉田妙子が特別出演。終戦直後の沖縄を省みて、今日の沖縄を考えてみませんか。来場希望。
※お知らせ ばん塾12期公演
日時:2013年4月28日(日)午後6時30分開演
場所:沖縄市民小劇場 あしびなー
料金:2,000円
チケットのお問い合わせ先:(有)キャンパスレコード 098-932-3801