「いろは食堂」「いろは湯」「いろは書店」「いろは通り」「いろは会」・・・。
昭和時代は、そこいらの街中をあるくと「いろは××」の看板や文字を見掛けたものだ。いまでも地方へ行けば、ときたま目に止まりはするものの、都市地区では滅多に見られなくなり、ほとんどが横文字の看板が街を彩っている。
沖縄市が「コザ」を名乗っているころ、米兵しか入れないAサインバーには「BAR IROHA」があった。夜はもちろん、昼間からベトナム戦帰りの米兵が出入りし、ジュークボックスをガンガン鳴らして、大騒ぎをしていた。パティー・ペイジーの「テネシーワルツ」は、その「BAR IROHA」のジュークボックスから漏れ聞こえる歌声で覚えた。
さて、「いろは歌留多」も今回は「よ」から。
※「よ」
*読み札=夜、昼、夕暮れ、また明日。
*取り札=ゆる、ひる、ゆさんでぃ、またアチャやー。
夜明け==ゆあき。朝=ふぃてぃみてぃ。昼=ひる。夕暮れ=ゆさんでぃ。夜=ゆうる。夕暮れは「ゆさんでぃ」のほかに「あこうくろう」とも言い「明るくも暗くもない時間帯で『明暗』の漢字を当てたりする。あこうくろうには、魔物が徘徊するそうで、日本の古語でも「逢魔ガ時」と言う。魔物は真夜中〈まゆなか〉より、アコークローの方が、勢いがあるらしい。
※「た」
*読み札=田ぁまぶい!田畑ぬ番人。〈たぁまぶい たはたぬばんにん〉。
*取り札=田んぼの案山子 田畑の守り。
「まぶい」は魂の意。人形(ひとがた)の案山子にも、魂を入れた所に妙味がある。竹や棒を十字に固定し、ぼろ着物を着せ、菅笠を被せ、顔は「へのへのもへ」が定番だった。農業が近代化するにつれ、案山子(田まぶい)もお役御免になっているが、本土の地方農家では「案山子まつり」が催されていると聞く。しかし、子どもたちが作る案山子の顔形は「へのへのもへ」ではなく、仮面ライダー、ウルトラマンであり、キティーちゃん、リボン騎士などアニメや漫画のヒーロー、ヒロインになっているそうな。
※「れ」
*読み札=レーファー リージ 夕飯〈ゆうばん〉。
*取り札=すり鉢 すりこ木 夕飯支度。
「れ」は、「り」に変化する語が多い。例はリィー。連理はリンリ。幽霊もユリー。「れ」から始まる言葉を集めて沖縄語から発音してみると面白い。
昔は1日2食が普通。朝食を「フィティムン」。昼食は3時ごろ軽く摂り「ヒルマムン・マドゥヌムン」と言い、夕飯までの間食程度であった。俗に「アサバン」と言うのは、ひと汗流して後に食するモノであるところからの語とされる。一説には「汗飯=アサバン」の転語とされる。台所を上座に対する下座「シム」と言う。したがって、台所用具は「シムドーグ・下道具。食器なども含めて、これらを沖縄読みしてみるのも楽しい。もちろん、地方によって呼称が異なるものもあることを知っておかなければならない。
※「そ」
*読み札=ソーミナー クラー チンチナー。
*取り札=めじろ すずめ ひばりだよ。
どこでも見かける小鳥。めじろの語源は「目白・目が白い」ところからの呼称。ソーミナーは「寄り目気味」のさまによると言われる。クラーは、穀物蔵の近くに集まるところから「蔵の番」をするもの。また、チンチナーは、その鳴き声に由来すると言われる。
*からす=がらし。がらさー。*鳩=ほうとぅ。*鶯=うぐゐし。その幼鳥(藪鶯)をチョッチョイ。*つばめ=マッテーラー。マッタラー。
※「つ」
*読み札=月夜の遊び 影踏みしましょう。
*取り札=チチぬアシビ カーガー取えー。
沖縄語では「つ」は「ち」になる。もちろん、例外があることを承知しておかなければならない。月=ちち。土=ちち。もっとも土の場合、ンーチャが普通。地名の津堅はチキン。津嘉山はチカジャン。
カーガーは影。カジとも言う「月影=チチカジ」。
夏の夜。近所の子どもたちが村の広場や道に出て、影踏みをして遊んだ。4,5人が揃うと、ジャンケンをして鬼を決める。「ひんぎれー=逃げろっ」の声とともに四方に散る。鬼はそれを追い、月の光でできた相手の影を踏むという単純な遊び、鬼に踏まれないためにはどうするか。その場に座り込むと影は映らないから踏まれることはない。また、大木の下や人家の軒下に駆け込み、影を消す手もあった。踏まれた者は、即座に鬼の役に回るが、踏まれまいと悲鳴や嬌声を上げながら、そこら中を走り回る。時には「かしまさぬっ。ふぇーくヤーんじニンだにっ=うるさいっ。早く家で寝ろっ」と、広場近くのグァンクータンメー=頑固爺さん=によく怒鳴られた。
最近は、どこへ行っても街灯や自動車のヘッドライトが月の光を薄くしてしまい「影踏み」も出来なくなった。
カーガー取えー(とぅえー)。影を踏むのではなく、影を取るとしたところが面白い。
夏休み。
青少年不良化防止月間とやらで、子ども達は夜遊びを禁じられている。世の中がこうも物騒がしになっては、それも仕方ない。しかし、夜間外出禁止、あるいは自粛を講じなくてもよい世間でなくてはならないと思うのは、懐古趣味に過ぎるのか。カーガー取えーは、なんとも楽しいものだが、いやはやこれも闇に葬られ「影踏み」は、言葉通り影も形もなくなった。
※8月下旬の催事。
*アンガマ(石垣島)
開催日:8月19日(月)~21日(水)
場所:石垣市
*嘉手納町エイサー(嘉手納町)
開催日:8月22日(水)予定
場所:嘉手納町新町通り
*第58回 沖縄全島エイサーまつり(沖縄市)
開催日:8月30日(金)~9月1日(日)
場所:コザ運動公園陸上競技場
昭和時代は、そこいらの街中をあるくと「いろは××」の看板や文字を見掛けたものだ。いまでも地方へ行けば、ときたま目に止まりはするものの、都市地区では滅多に見られなくなり、ほとんどが横文字の看板が街を彩っている。
沖縄市が「コザ」を名乗っているころ、米兵しか入れないAサインバーには「BAR IROHA」があった。夜はもちろん、昼間からベトナム戦帰りの米兵が出入りし、ジュークボックスをガンガン鳴らして、大騒ぎをしていた。パティー・ペイジーの「テネシーワルツ」は、その「BAR IROHA」のジュークボックスから漏れ聞こえる歌声で覚えた。
さて、「いろは歌留多」も今回は「よ」から。
※「よ」
*読み札=夜、昼、夕暮れ、また明日。
*取り札=ゆる、ひる、ゆさんでぃ、またアチャやー。
夜明け==ゆあき。朝=ふぃてぃみてぃ。昼=ひる。夕暮れ=ゆさんでぃ。夜=ゆうる。夕暮れは「ゆさんでぃ」のほかに「あこうくろう」とも言い「明るくも暗くもない時間帯で『明暗』の漢字を当てたりする。あこうくろうには、魔物が徘徊するそうで、日本の古語でも「逢魔ガ時」と言う。魔物は真夜中〈まゆなか〉より、アコークローの方が、勢いがあるらしい。
※「た」
*読み札=田ぁまぶい!田畑ぬ番人。〈たぁまぶい たはたぬばんにん〉。
*取り札=田んぼの案山子 田畑の守り。
「まぶい」は魂の意。人形(ひとがた)の案山子にも、魂を入れた所に妙味がある。竹や棒を十字に固定し、ぼろ着物を着せ、菅笠を被せ、顔は「へのへのもへ」が定番だった。農業が近代化するにつれ、案山子(田まぶい)もお役御免になっているが、本土の地方農家では「案山子まつり」が催されていると聞く。しかし、子どもたちが作る案山子の顔形は「へのへのもへ」ではなく、仮面ライダー、ウルトラマンであり、キティーちゃん、リボン騎士などアニメや漫画のヒーロー、ヒロインになっているそうな。
※「れ」
*読み札=レーファー リージ 夕飯〈ゆうばん〉。
*取り札=すり鉢 すりこ木 夕飯支度。
「れ」は、「り」に変化する語が多い。例はリィー。連理はリンリ。幽霊もユリー。「れ」から始まる言葉を集めて沖縄語から発音してみると面白い。
昔は1日2食が普通。朝食を「フィティムン」。昼食は3時ごろ軽く摂り「ヒルマムン・マドゥヌムン」と言い、夕飯までの間食程度であった。俗に「アサバン」と言うのは、ひと汗流して後に食するモノであるところからの語とされる。一説には「汗飯=アサバン」の転語とされる。台所を上座に対する下座「シム」と言う。したがって、台所用具は「シムドーグ・下道具。食器なども含めて、これらを沖縄読みしてみるのも楽しい。もちろん、地方によって呼称が異なるものもあることを知っておかなければならない。
※「そ」
*読み札=ソーミナー クラー チンチナー。
*取り札=めじろ すずめ ひばりだよ。
どこでも見かける小鳥。めじろの語源は「目白・目が白い」ところからの呼称。ソーミナーは「寄り目気味」のさまによると言われる。クラーは、穀物蔵の近くに集まるところから「蔵の番」をするもの。また、チンチナーは、その鳴き声に由来すると言われる。
*からす=がらし。がらさー。*鳩=ほうとぅ。*鶯=うぐゐし。その幼鳥(藪鶯)をチョッチョイ。*つばめ=マッテーラー。マッタラー。
※「つ」
*読み札=月夜の遊び 影踏みしましょう。
*取り札=チチぬアシビ カーガー取えー。
沖縄語では「つ」は「ち」になる。もちろん、例外があることを承知しておかなければならない。月=ちち。土=ちち。もっとも土の場合、ンーチャが普通。地名の津堅はチキン。津嘉山はチカジャン。
カーガーは影。カジとも言う「月影=チチカジ」。
夏の夜。近所の子どもたちが村の広場や道に出て、影踏みをして遊んだ。4,5人が揃うと、ジャンケンをして鬼を決める。「ひんぎれー=逃げろっ」の声とともに四方に散る。鬼はそれを追い、月の光でできた相手の影を踏むという単純な遊び、鬼に踏まれないためにはどうするか。その場に座り込むと影は映らないから踏まれることはない。また、大木の下や人家の軒下に駆け込み、影を消す手もあった。踏まれた者は、即座に鬼の役に回るが、踏まれまいと悲鳴や嬌声を上げながら、そこら中を走り回る。時には「かしまさぬっ。ふぇーくヤーんじニンだにっ=うるさいっ。早く家で寝ろっ」と、広場近くのグァンクータンメー=頑固爺さん=によく怒鳴られた。
最近は、どこへ行っても街灯や自動車のヘッドライトが月の光を薄くしてしまい「影踏み」も出来なくなった。
カーガー取えー(とぅえー)。影を踏むのではなく、影を取るとしたところが面白い。
夏休み。
青少年不良化防止月間とやらで、子ども達は夜遊びを禁じられている。世の中がこうも物騒がしになっては、それも仕方ない。しかし、夜間外出禁止、あるいは自粛を講じなくてもよい世間でなくてはならないと思うのは、懐古趣味に過ぎるのか。カーガー取えーは、なんとも楽しいものだが、いやはやこれも闇に葬られ「影踏み」は、言葉通り影も形もなくなった。
※8月下旬の催事。
*アンガマ(石垣島)
開催日:8月19日(月)~21日(水)
場所:石垣市
*嘉手納町エイサー(嘉手納町)
開催日:8月22日(水)予定
場所:嘉手納町新町通り
*第58回 沖縄全島エイサーまつり(沖縄市)
開催日:8月30日(金)~9月1日(日)
場所:コザ運動公園陸上競技場