旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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首里城・炎上

2019-11-10 00:10:00 | ノンジャンル
 枕元の携帯が震えて、メール着信を知らせる。
 時計を見ると午前5時47分。熟睡中のことだ。不機嫌を囲いつつ、携帯を取る。発信人は職場の同僚。(夢を破りやがってっ)。そう思いつつ開く。
 「首里城が燃えている」。
 「ばかなっ。燃えているとは大げさなっ。火が出たとしてもボヤ程度だろう」。
 安易に考えて、また寝を決め込もうとしたが、1度覚醒した眼は睡眠につながらない。ボヤにせよ場所が首里御城(すい うぐしく)では、気になって眠れない。大きく背伸びしてから、のろのろとテレビを点ける。
 画面いっぱいに紅蓮の炎! 確かに見慣れた首里城正殿の大屋根が燃えている。一瞬、息を呑む。いましも大屋根が崩れ落ちる・・・・。(う~ん)と、唸ったまでは覚えがある。あとは茫然自失。頭は思考力を停止させていた。
 10月31日のことである。
 「まさかっ!」
 その(まさかっ)は現実だった。首里城近隣に住居する複数の友人に電話をする。一応に声を震わせ(恐怖)を口にする。中には呼び出し音はするが声が返ってこない友人もいた。そうなると余計に気になる。
 「無事なのだろうか?」
 しばらくして、携帯が震える。通話できなかった友人からである。その声も震えていて、首里城が炎上しているのを目前にしながらの実況報告。それは完全に恐怖の泣き声で、何を言っているのか内容不明に近かった。内容不明でも(本人無事)だけは確認できて一応、ホッとした。

 11月2日付。沖縄タイムス1面。コラム「大弦小弦」にはこう書いている。
 『秋晴れの空に映えているはずの白と朱色の屋根は黒く焦げ、そこには正殿の姿はない。当たり前だった日常の風景が一変した。首里城の大火災から丸一日たったが、いまだに悪夢であってほしいとの思いが去来する。
 明けて11月1日も朝から多くの市民が現場近くを訪れ、変わり果てた姿を遠巻きに「ずっと傍らにあったに・・・・」「寂しすぎる」と、落胆の表情をみせた。
 モノレール首里駅からの観光客の流れはいつも通りに見えたが、団体ツアーでは、ルートを変更する動きもある。沖縄観光や首里城周辺地域への影響は計り知れない。
 急遽上京した玉城デニー知事は。国に早期再建への支援を要請。面談した菅義偉官房長官は「政府として財政措置も含めてやれることは全てやる」と明言した、安倍晋三首相も再建に取り組ことを約束したという。シンボルの再建に向けた動きは日増しに広がっている。
 県や市町村でも募金箱の設置やふるさと納税を活用した支援の検討も始まり、企業からも協力の声があがっている。沖縄タイムス社など県内メディア8社・局も共同で県民募金を始めることを決めた。玉城知事は、本土復帰50周年となる2022年までに再建計画を策定する考えをしめした。ウチナーンチュが一丸となって機運を高めたい(石川亮太)。

 県内8社・局とは。
 沖縄タイムス社(社長武富和彦)。沖縄テレビ放送(社長久保田憲二)、エフエム沖縄(社長長濱弘真)。NHK沖縄放送局(局長傍田賢治)。ラジオ沖縄(社長森田明)。琉球朝日放送(社長上原直樹)。琉球新報社(社長玻名城泰山)。琉球放送(社長中村一彦)。
 この8社・局も首里城再建を支援するための県民募金を協同で始めることで合意した。地元メディア8社・局が協力して募金活動をするのは初めて。

 ところで。
 いささか個人的になり(恐縮)・・・・。
 先の首里城復元の際、大屋根に乗せる「赤瓦」が、1枚1万円で売り出された。その赤瓦の裏には購入者の名前を刻むという。早速、小生も1枚買った。どこの部分に乗せられたかは不明だが、小生自身は「正殿の真正面」に使用されていると、勝手に思って誇らしく仰ぎ見ていた。テレビ中継でいままさに正殿が崩壊する瞬間には「オレの首里城が焼け落ちるっ」と、目頭が熱くなり、やがて大粒の涙にかわった。
 「首里城は何時でもそこにあり、何時でも行ける」。
 そう思ってこれまで4度、5度しか行っていない。こういうことになると思えば、足しげく参観するのだったと、無念でならない。
 でも、西原町に住居していた折り、会社への往復は(龍潭)の前を通り、首里城を1日に1回は眺望していたことが、いまとなっては何よりの慰め・・・・。
 国、県は勿論、多くの人たちの義援で「復元・再建」に向けて始動しているのは力強く誇らしい・・・・が、再び元姿を拝するのは20年先か、30年先か。その日が待ち遠しいが、それまで小生は永らえておれるかどうか。おそらく無理だろう。天命に従うしか術はない。それだけに「復元活動」は、先にも増して気張らなければなるまい。


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