「ほう。蛍が飛んだか!」
夕食後、アイスクリームをなめながら、今朝は出勤準備のあわただしさの中、見出しだけを拾い読みした新聞をあらためて聞き見る。
(夜空に飛ぶホタルショー・末吉公園で観察会・親子連れ楽しむ)の記事が写真入りで目にとまった。
末吉公園は那覇市首里北側、儀保から大名(おおな)にかけての丘にある。組踊「執心鐘入=一名中城若松」ゆかりの地であり、作者玉城朝薫(たまぐすく ちょうくん=1684~1734)の生誕地の碑がある。着けている甚兵衛の袖をちょっとまくって記事を2度読みする。
自然環境の大切さを考えてほしいと、那覇市環境保全課は5月14日、末吉公園でホタルの観察会を開いた。親子連れなど38人が参加。発光して舞う成虫や、地面で光る幼虫を見ながらホタルの生態を学んだ。
末吉公園では7種類のホタルが確認されているが、夜に飛び、発行するのはクロイワボタルとオキナワスジボタルの2種類。クロイワボタルが点滅しながら飛ぶのに対し、オキナワスジボタルは持続した光を保ちながら飛ぶ。4月中旬から12月ごろまで観察できる。
日本には、45種ほどの蛍がいて、そのうち15種ほどが光を放つそうな。沖縄では13種が確認されていて10種が光を放つが、中には卵や幼虫のうちは光をもっていても成虫になると、光をあえて消してしまう種類もいるという。それなりの都合で生きているのだろう。
主な種類はマドボタル、クシヒゲボタル、スジボタル、ミナミボタル、オバボタルなど。普通に見られるのは末吉公園の例のようにオキナワスジボタル、クロイワボタルなどだが、所によってはヤエヤマヒメボタル、オオシママドボタル、サキシママドボタルなどがいるそうな。
英語では蛍をファイヤーフライというらしい。火の蠅?燃えて飛ぶ虫?(何とも味気ないなぁ)。日本語では別名ホタロ、ナツムシ、クサムシなどがあり、季節を運んでくれるというのに・・・・。
沖縄語はどうか。
蛍の直訳で(フタル)だが、古語ではジーナー。幼児語ではジンジンという。
蛍狩りを歌った童唄♪ホーホー ホタル来い あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ ホーホー ホタル来い♪と、内容を同じくする歌が沖縄にもある。
♪ジンジン ジンジン 酒屋の(さかや)ぬ水飲でぃ 落てぃりよー ジンジン 下がりよー ジンジン♪
これである。「水飲でぃ」を「水喰てぃ」とも歌う。また「酒屋」を「壷屋=ちぶや」に置き換えることもある。酒造りも焼き物も水質がよく、水量豊富な地でしか生産できない。きれいな水を好むホタルが酒屋、壷屋のある湧水を命の場にしたことは理にかなっている。
一時期。蛍の光がそうそう見られなくなったことがある。生活用水、農薬、開発などで生息地を汚染された結果である。しかし、ここ20年30年ほど間から、各地で清流を蘇生させる努力がなされ、久米島はじめ八重山、宮古、島尻、中頭、国頭の川辺に(蛍の群舞)を見ることができる。失った自然は努力すれば取り戻せるのだ。
ちなみに蛍の宮古語はピカヤー。八重山語=ジンジンハレー。パーヤー。各地に呼び名があるようだ。
蛍は、神秘的でありながら、そのか細い光のせいで「はかない」「せつない」ことに例えられる。
*蛍の恋=成就しそうもない恋。
*蛍の火=わずかばかり残った火。
*蛍の命=余命いくばくもないさま。
いかにも日本的で美しい表現を成している。
琉歌の中の恋歌にも数多く登場している蛍。
◇当てぃん無んむんぬ 飛び回る蛍 露の草陰に宿る苦りしゃ
〈あてぃんねん むんぬ とぅびまわる ふたる ちゆぬ くさかじに やどぅる くりしゃ〉
歌意=(思う人に)逢えるあてもないのに(夜通し)飛び回っている蛍よ。今夜はひとり、露草の陰で夜を明かすのだろう。苦しかろう。せつなかろう・・・・。
◇寝屋に入る蛍 恋惑いしちゃみ 蚊帳に入り蛍 共に居らな
〈にやにいり ふたる くいまどぅい しちゃみ かちゃにいり ふたる とぅむに WUらな〉
歌意=我が寝所に入ってきた蛍よ。思う人に逢えず心惑いをしているのか。せつなかろう。私自身も同じだ。さあ、蚊帳の中にお入り。共に居て慰め合おう。
「そうか。蛍が飛んだか」。
いま1度つぶやき、新聞を閉じ、すっかり暗くなった庭に下りて、煙草に火を点ける。吸っては吐くたびに煙草の先が淡く点滅する。ホタル族と呼ばれて久しい・・・・。
夕食後、アイスクリームをなめながら、今朝は出勤準備のあわただしさの中、見出しだけを拾い読みした新聞をあらためて聞き見る。
(夜空に飛ぶホタルショー・末吉公園で観察会・親子連れ楽しむ)の記事が写真入りで目にとまった。
末吉公園は那覇市首里北側、儀保から大名(おおな)にかけての丘にある。組踊「執心鐘入=一名中城若松」ゆかりの地であり、作者玉城朝薫(たまぐすく ちょうくん=1684~1734)の生誕地の碑がある。着けている甚兵衛の袖をちょっとまくって記事を2度読みする。
自然環境の大切さを考えてほしいと、那覇市環境保全課は5月14日、末吉公園でホタルの観察会を開いた。親子連れなど38人が参加。発光して舞う成虫や、地面で光る幼虫を見ながらホタルの生態を学んだ。
末吉公園では7種類のホタルが確認されているが、夜に飛び、発行するのはクロイワボタルとオキナワスジボタルの2種類。クロイワボタルが点滅しながら飛ぶのに対し、オキナワスジボタルは持続した光を保ちながら飛ぶ。4月中旬から12月ごろまで観察できる。
日本には、45種ほどの蛍がいて、そのうち15種ほどが光を放つそうな。沖縄では13種が確認されていて10種が光を放つが、中には卵や幼虫のうちは光をもっていても成虫になると、光をあえて消してしまう種類もいるという。それなりの都合で生きているのだろう。
主な種類はマドボタル、クシヒゲボタル、スジボタル、ミナミボタル、オバボタルなど。普通に見られるのは末吉公園の例のようにオキナワスジボタル、クロイワボタルなどだが、所によってはヤエヤマヒメボタル、オオシママドボタル、サキシママドボタルなどがいるそうな。
英語では蛍をファイヤーフライというらしい。火の蠅?燃えて飛ぶ虫?(何とも味気ないなぁ)。日本語では別名ホタロ、ナツムシ、クサムシなどがあり、季節を運んでくれるというのに・・・・。
沖縄語はどうか。
蛍の直訳で(フタル)だが、古語ではジーナー。幼児語ではジンジンという。
蛍狩りを歌った童唄♪ホーホー ホタル来い あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ ホーホー ホタル来い♪と、内容を同じくする歌が沖縄にもある。
♪ジンジン ジンジン 酒屋の(さかや)ぬ水飲でぃ 落てぃりよー ジンジン 下がりよー ジンジン♪
これである。「水飲でぃ」を「水喰てぃ」とも歌う。また「酒屋」を「壷屋=ちぶや」に置き換えることもある。酒造りも焼き物も水質がよく、水量豊富な地でしか生産できない。きれいな水を好むホタルが酒屋、壷屋のある湧水を命の場にしたことは理にかなっている。
一時期。蛍の光がそうそう見られなくなったことがある。生活用水、農薬、開発などで生息地を汚染された結果である。しかし、ここ20年30年ほど間から、各地で清流を蘇生させる努力がなされ、久米島はじめ八重山、宮古、島尻、中頭、国頭の川辺に(蛍の群舞)を見ることができる。失った自然は努力すれば取り戻せるのだ。
ちなみに蛍の宮古語はピカヤー。八重山語=ジンジンハレー。パーヤー。各地に呼び名があるようだ。
蛍は、神秘的でありながら、そのか細い光のせいで「はかない」「せつない」ことに例えられる。
*蛍の恋=成就しそうもない恋。
*蛍の火=わずかばかり残った火。
*蛍の命=余命いくばくもないさま。
いかにも日本的で美しい表現を成している。
琉歌の中の恋歌にも数多く登場している蛍。
◇当てぃん無んむんぬ 飛び回る蛍 露の草陰に宿る苦りしゃ
〈あてぃんねん むんぬ とぅびまわる ふたる ちゆぬ くさかじに やどぅる くりしゃ〉
歌意=(思う人に)逢えるあてもないのに(夜通し)飛び回っている蛍よ。今夜はひとり、露草の陰で夜を明かすのだろう。苦しかろう。せつなかろう・・・・。
◇寝屋に入る蛍 恋惑いしちゃみ 蚊帳に入り蛍 共に居らな
〈にやにいり ふたる くいまどぅい しちゃみ かちゃにいり ふたる とぅむに WUらな〉
歌意=我が寝所に入ってきた蛍よ。思う人に逢えず心惑いをしているのか。せつなかろう。私自身も同じだ。さあ、蚊帳の中にお入り。共に居て慰め合おう。
「そうか。蛍が飛んだか」。
いま1度つぶやき、新聞を閉じ、すっかり暗くなった庭に下りて、煙草に火を点ける。吸っては吐くたびに煙草の先が淡く点滅する。ホタル族と呼ばれて久しい・・・・。