トシの読書日記

読書備忘録

めくるめく映像の世界

2016-08-09 15:59:19 | か行の作家



金井美恵子「砂の粒/孤独な場所で」読了



本書は平成26年に講談社文芸文庫より発刊されたものです。金井美恵子自選短編集ということで、全部で16の短編が収録されています。


この作品群は金井美恵子のどの時期に書かれたものなのか、巻末の年譜を見ても、ネットで調べてもよくわかりませんでした。


まぁそんなことはいいんですが、今まで読んできた、金井美恵子の理詰めで人を追い込んでいくような小説とはまた違う、なんというか、別の世界を見せてくれました。


作品のテイストは全体に似ています。物語性はあまりありません。まるで映像を見ているような細かい情景描写、登場人物の心理描写が延々と続いていて、それが読む者の心臓をわしづかみにしています。


巻末の磯崎憲一朗氏の解説を読むと、この人は映像というより絵を見ているようだと言っています。以下、引用します。

<(前略)小説を読んだのではなくむしろ自分は絵を見たのではないか?もっと正確にいえば絵が描かれる過程の、色彩の選択、輪郭線の取り方、一筆一筆の運動を見たのではないか?じっさいそう表現するのこそが相応しい読書があるのだということを、私は思い知らされた。>


これですね。自分が漠然と考えていたことをこの磯崎さんは正確に言い当ててくれました。とにかく、読む者は金井美恵子の絵筆の運びに酔うほかはないわけです。


堪能しました。



ネットで以下の本を購入

吉田知子「無明長夜」新潮社


また、姉から以下の本を借りる

フリオ・コルサタル著 木村榮一訳「遊戯の終わり」岩波文庫

7月のまとめ

2016-08-09 15:18:48 | Weblog



先週やるはずだったまとめを、また忘れておりました。
7月に読んだ本は以下の通り


多和田葉子「海に落とした名前」
川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」
獅子文六「七時間半」
ジョルジュ・バタイユ著 生田耕作訳「眼球譚」
谷崎潤一郎「陰翳礼賛」
中村文則「王国」
NHKアナウンス室編「『サバを読む』の『サバ』の正体」
野呂邦暢「草のつるぎ/一滴の夏」


以上の8冊でした。


7月もいい本がたくさんありました。多和田葉子、バタイユ、谷崎潤一郎、どれもよかったです。が、なんといっても野呂邦暢でしたね。詩情あふれる作家です。姉に貸したままになっていると思い込んでいた、野呂邦暢の単行本、もう一回書棚を捜してみたら、なんと目の前にありました。年は取りたくないもんです。

豊田健次編「白桃―野呂邦暢短編選」です。またじっくり再読したいです。

ここのところ、ずっと目についた面白そうな本を買っては読むということをしてるんですが、再読の大切さを再確認するため、もう一度本棚を見て、名著を再読してみるということをやってみようと思います。


7月 買った本7冊
   借りた本0冊