昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「レロレロ姫の警告」改定版(4)変身(4)

2018-01-07 04:08:55 | 小説「レロレロ姫の警告」改定版
「愛!」
「愛がいない。愛はどこ?」
 二人は立ち上がり、竹藪の中で必死に叫んでいる。

「パパ、ママ!」
 わたしは竹藪の外へ出て二人に声をかけ、彼らがあたふたと竹藪の中から出て来るのを見ていた。
「愛、愛!」
 パパが出て来るなりわたしをきつく抱きしめた。
「だいじょうぶ? 愛?」
 ママが泣きそうな顔をしている。

 
「だいじょうぶ? 見れば分かるでしょう!」
 わたしは二人を見すえて言った。
「愛がしゃべった!」
 パパがわたしから手を離し、驚いた顔で言った。
「いつもと、違う! ・・・なんかしゃきっとしている!」
 ママが声をとぎらせて目を見開きつぶやいた。
「目つきも違う。たれ目がすきっと目じりが上がっている!」
 いつも細いパパの目が丸く見開いて大きくなった。
 パパもママも天地が引っくり返ったように驚いた顔だ。
 むしろ化け物を見ている顔だ。

「何を驚いているの? 今まで通りじゃない」
 
 わたしは彼らには今まで通りではないことを承知の上で言ってみた。
「そんな・・・。今まではパパとママの他はレロレロしか言わなかったのに・・・」
 パパが呻くように言った。
「いいえ、パパもママもレロレロの中身を聞き取れていなかっただけなのよ。今の地震のショックで聞き取れるようになったのかな?」
 わたしは、しれっと言ってやった。

「地震のショック? そうか、そう言えば得体のしれない稲妻も光ったな。それによって愛の脳の中枢神経が刺激されて正常に動き出したのか・・・」
 パパはまだ興奮冷めやらない赤い顔で、独自の判断をしている。
「その刺激によって、正常に戻ったのね・・・」
 ママも納得して頷いている。

 ─続く─

 「今度はコミックにしたらいいかもね・・・」
 先輩から言われたが・・・。