昨日、とんちゃん(矢中鷹光)が8年ぶりの新作CD「Seattle」を持って来てくれた。
夜半、聴く。
そして今朝から何度も聴く。
すごくいい。
3年前にまだレコーディングされていない曲をたくさん聴いて「今CD作るべき」と話したことがある。
この13年間、かなりの頻度で舞台をご一緒しているので、この中には思い出の曲ばかり。
だからもちろん客観的にはなれない。
そして知っているからこそ、今回のCDで彼が到達した深みに感動する。
メジャーというわけでもないしポップスを作る人ではない。
自分なりに悩み、模索を続けて来た人だ。
そしてその彼に「季節」が訪れている。
M1の「Aurora」はごく最近カナダの北極圏で実際にオーロラを見た体験が元になっている。
雪原か氷を踏みしめるような音は実録だろう。
雄大な光景だったに違いないが、この音からはありがちな大きさや神秘さよりも、見つめている彼の深みが伝わってくる。
60年を超える自身の歴史の中での「深み」。
それを見つめているもう一人の彼がいる。
東北の大震災後、熊野も大変な水害にあった。
そんな年に生まれたM3「ふるさとはいまだ清く」は、昨年12月のProjectR vol.2でも歌ってもらった。
「あなたは手を合わす 私は歌を詠む」という歌詞はなかなか出てくるものではない。
M11の「さほ姫」は天女神楽vol.9で歌ってもらった曲。
10年続けた天女神楽の中でも自分なりに「当たりどころがあった!」と思える場面の一つは、この曲から生まれた。
さほ姫の場面の曲になったのでタイトルも「さほ姫」。
M12「夜のとばり」は3年前の「季節」のはじまりの頃から錬られてきた曲。
自分には忘れられない思い出がある大事な曲だ。
表現に関わるものにとって「夜」は大事な時間。
せつなさや湿った柔らかさ、そして孤独が浮かび上がるとんちゃんのこえが素晴らしい。
M5「チャングムの誓い」のテーマも大好き。
この曲が、ではなく、彼の声がこの曲を通じて遠い時間の彼方の思い出を呼び起こし、自分を揺さぶる。
浮き彫りになる孤独な自分をみつめることで人は厳しくも優しくもなれることをもう一度思い起こさせてくれる。
また一つ愛聴盤が増えたな♪