泡 盛 日 記

演劇人(役者・演出家)丹下一の日記です。

表参道での「再会」

2010-05-03 01:14:48 | 丹下一の泡盛日記
 今日(昨日)は表参道の能舞台で稽古。ここはかつてのアルバイト先でもあり、稽古場でもある。
 毎週末、能の舞台があるときは事務仕事の後、客入れや終演後の掃除など。
 そして、ボスのOさんの好意で客入れした後、そのまま舞台をみることができた。
 ある時、開演直前に先代の銕之丞さんが、ささっと入ってきて自分の横に正座した。(銕仙会は畳の客席)
 こうなるともう仕方がない。わし生まれてはじめて2時間正座しました。。。

 銕仙会の楽屋にいると、そんなことあんなことが走馬灯のように。
 自分は舞台に立つ者としてこの楽屋にいたことは無い。楽師も含めスタッフばかりだった。
 今は役者として認めてくれる人たちと仕事ができるのが嬉しい。

 荷物を置く為に地下室へ。
 大きな声では言えないが、ここはかつて稽古場だったことがある。(もちろんOさんの許可を得て)
 ここの床は自分が一人で全部つくった。25年経ってもちゃんとしているパネルたちをみてうれしかった。
 
 鏡の間には先代の銕之丞さんの写真。
 銕之丞さんも栄夫(観世栄夫)さんもOさんも、そして関さんも今はいない。
 事務所をのぞいても、同じ空間なのにどうしてこんなに違うエネルギーなのか。
 「あら、いらっしゃい!」というOさんの声を今も思い出す。

 宴席で20代前半だった自分のところによって来て「この頃アングラはどうなんですか?」などと声を掛けて下さった銕之丞さん。
 寿夫さんの、あれは何回忌だったか、沖縄のファンの方から送られた古酒の瓶から柄杓で酌んだ茶碗泡盛を栄夫さんにすすめられ一気飲み。あまりに美味しくてその場でお代わり♪ 栄夫さん、にこにこしながらついでくださった。遠巻きの人々がはらはらしながらみているのはわかっていた。だって飲んだの自分だけだったのだ。
 この空間にいると思い出はつきない。
 そして、自分はこんなすごい場にいながら「宝の持ち腐れ」状態だったのではないか、とも思う。
 そして、そんなことよりも「今」が大事、と稽古中に舞台の床をみながら思う。

 今回の舞台は「現代演劇」だと思っている。アバンギャルドでは無いかもしれない。そして、故・観世寿夫さんが「今日上演されている全ての舞台は現代演劇」と言った言葉を思い出す。演出は様々変わるが、俳優の身体の深みへのベクトルは変わらないのかもしれないとつくづく思う。

 稽古後、なんだかちりちりしちゃって表参道でみんなと別れ原宿まで歩く。
 この通りも自分の30年を思い出させる(そして今だに表参道界隈と縁があるのはなぜなんだろう)。

 帰宅するとかみさんがスセリヒメのように寂しそうに一人でいた。
 二人で飲む(これもスセリヒメか!)♪ しかしわしにはヌナカワヒメはいないんだよな~(T.T)
コメント
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