Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

不安と共感のあいだで

2009年12月01日 | 映画など
想田和弘監督『精神』を見る。
岡山のとある精神病棟を舞台に、
医師や看護師、そして
患者の表情や佇まいをじっと捉えるドキュメント。
不安と共感を同時に起こさせる怪作だと思う。


精神(2009)

想田監督の前作『選挙』もそうだったのだが、
この映画はあまり説明をする気配がない。
登場する患者の名前とか症状などもはっきりわからない。
カメラを向ける想田監督が直接問いかけるとき以外、
彼ら彼女らは淡々と診察を受け、薬をもらい、
どこかに帰り、しばらくしてまた病院にやってくる。
受け入れる側の医師や看護師も淡々と日々の業務をこなすのみ。
治療する人と治療される人の関係性を追うわけでもなく、
写し出されるのは「精神」の疾患に関わる人たちというだけの映画。

病気に苛まれながら、
なんとかしようとする人たちの姿は確かに共感できるのだが、
結局当事者にしか(あるいは当事者でさえ)理解できないのではないかという、
ある意味投げっぱなしのクライマックスを見て、唖然とする。

あまり見られないものを見た、という気持ちと、
見たからと言って、理解したり判ったりするわけではない
というふたつの気持ちが浮かんでくる。

フレデリック・ワイズマンを師と仰ぐ想田監督。
師匠の作品に見られるような、
透明感というか純度の高い映像作りは
日本のドキュメンタリー作家の中でも特異。
次回作は平田オリザと劇団員のドキュメントらしい。楽しみ。
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