大森一樹監督は、
際立った個性のある映画監督ではなかった。
思想やテーマをことさらに主張することもなかった。
映画が映画であることの快楽を再現すべく、
やさしく穏やかに娯楽作を撮り続けた人だと思う。
いつまでたっても万年映画青年、という佇まいだった。
そんな大森監督がいつのまにか70歳になっていて、
亡くなってしまったのは、かなりの喪失感がある。
ヒポクラテスたち(1980)
やっぱりこれが代表作になるのだろう。
医学生だった監督の経験を活かした青春群像。
ぶっきらぼうでありながら、
いつポキッと折れても不思議ではない医学生を、
古尾谷雅人が好演していたと思う。
落第生の柄本明も若い。そしてキャンディーズ解散後、
俳優として復帰したランちゃんの可憐で儚げな存在感。
こういうのを青春映画というのだろうし、
「アメリカン・グラフィティ」的なラストの切なさとともに
忘れがたい名作中の名作。
恋する女たち(1986)
大森監督最大の功績は、
斉藤由貴を開眼させたことだと思う。
単なる一人の美少女アイドルが、
映画史に残るコメディエンヌとなり
スクリーンに躍動したのだ。
意中の男の子に振られて、口を開けて
思い切り笑う斉藤由貴のなんともいえないおかしみ。
続く「トットチャンネル」
「『さよなら』の女たち」とともに、
忘れがたい名作中の名作。
シュート!(1994)
大島司の同名マンガの映画化。
SMAP主演。公開当時はJリーグブームで
人気マンガが原作、超人気アイドルが主演と
これは絶対お客さん入るだろう、
と保険をいくつもかけた上でつくられた映画という印象。
でも、そんな大人の事情など軽く吹き飛ぶ素晴らしさ。
非業の死を遂げる伝説のミッドフィールダーを
キムタクが演じ、実に美味しいところを持っていく。
主役は中居くん。他の4人とのアンサンブルも見事。
これまたまっすぐな青春映画で、
大森監督の最高傑作かもしれない。
ともあれ名作中の名作。
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