高田晃太郎「ロバのスーコと旅をする」
(河出書房新社)を読む。
イラン、トルコ、そしてモロッコと
現地でロバを調達し、共に旅をした青年の記録。
著者の高田晃太郎さんは、
沢木耕太郎の「深夜特急」に影響を受け、
日本や世界を旅している人。
新聞記者の職を辞し、ロバと旅をするという
日頃、あくせく生きている身からすると
なんとも羨ましい生き方をしているなあ、と。
交通手段がそれほど発達していない中東諸国では、
ロバは使役動物としていまだ現役で、
重要なインフラのひとつらしい。そうなのか。
あの哀愁を帯びたつぶらな瞳。
シネフィルとしては「バルタザールどこへ行く」とか、
最近は「EO」なんて映画もあったけれど、
ロバという動物は、たまらなくそそるわけで。
さぞかし、のんびりとした
旅の記録かと思いきや、まさに波瀾万丈。
ロバと歩くイランやトルコ、モロッコで、
現地の人の温かさに触れながらも、
それと同じぐらい泥棒や強盗のたぐいなど、
人間の悪意にもさらされる旅となっていく。
読みながら、そうか。旅は人生みたいなものだな、と。
いいこともあれば、悲しいこと、苦しいこともある。
本書における旅の記録はそのまま人生の記録なのだろう。
「深夜特急」もそうだが、本書も旅をテーマにしながらも、
自分探しの旅とは無縁であることも心地良い。
著者の高田さんは、
現在、日本でロバを調達して旅をしているらしい。
そのうち、第二弾も書いてくれるでしょう。楽しみ。