東日本大震災直後。
なんとも落ち着かないまま、
仕事で電話する人みんなに、
「地震、大丈夫でしたか?」と、
枕詞のように話しかけていた。
そんな電話のなかで、
とあるデザイナーさんとの会話は
今でも忘れられない。
「地震、大丈夫でしたか」
「いえ、大丈夫じゃないです」
「え」
「実家が陸前高田市なんです」
そこで絶句してしまった自分。
なんという体たらく。情けないにも程がある。
お前は物を考えて喋っているのか、と。
いちおう地震のこと気にしてますよ。
ついでにあなたのコトも。ね。
みたいなエクスキューズのための軽口。
「大丈夫じゃないです」という返しが来ると
想定していなかった自分が恥ずかしい。
こうした問いかけはそれなりの覚悟が必要なのだ。
想定外の返答が来たときに、ちゃんと受け止められるのかお前は。
ちなみにそのデザイナーさん。
津波で家族が行方不明だったらしいが、
避難している姿をテレビで見て安堵したとのこと。
あれから13年。
小市民で小心者の自分は再び立ち尽くしています。
軽口を叩くのはさすがにやめました。