とある和菓子屋の前を通り過ぎる。
いや、通り過ぎようとしたら、なぜか足が止まる。
えらく人が並んでいて、けっこうな人気店のようだ。
大福とかわらび餅、みたらし団子が名物らしい。
へえ、と思いながら見ていたら、
いつの間にか自分の後ろにも人が並んでいたという。
行列は苦手だが「しかたねえな」と呟きながら
そのまま並んでいたという。いや、もう大の大人ですから。
決してにやけながら並んだりしてませんから。
で、名物の大福を買い、
にやけながら、もとい、原稿があるんだという
真剣で深刻な面持ちで仕事場に入ったという。
脱兎のごとくコーヒー(インスタント)を入れ、
思い切って大福を手でむんずと(死語)掴む。
おお。なんという手触りの良さ、
と思いながらいただく。美味なモノは触覚すら支配する。
あんこが甘くない。このつぶあんは
むしろ塩味が利いている。でも知らないうちに上品な甘さが
口のなかに広がったと思ったら、
ものすごい多幸感が体中を駆けめぐったのです。
やっぱり現れましたか。相変わらず目ざといですね。
宇宙人(by岡本太郎)って裕福なんでしょう。
そんなに欲しいんなら、金にモノ言わせて
並んでいるシモジモの者たちを一瞥しながら、
店にある大福ぜーんぶ買い占めちまえばいいじゃないですか。
え。ぜんぶ飲めや歌えやで散財したって。んもお。
誰に似たんでしょう。親の顔が見たいですよ。
あ。親は岡本太郎って言いたいんでしょう。
でも直系の子ってタローマンですよね、
あなたは宇宙人ですし。って泣かなくても。もお。
しっしっ、あっちいって。