Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

もうたりぜいしょん考

2024年01月27日 | 読んでいろいろ思うところが
橋本倫史「ドライブイン探訪」(ちくま文庫)を読む。
自分はまったくのペーパードライバーで、
運転しろ、と言われたら
きっと「げしし」と言って逃げます。
そんな役立たずな輩には、
ドライブインのことが書かれた本など、
絶対腑に落ちないだろうと思いきや、
無類の面白さに読みふけってしまったという。


日本のドライブインは
戦後の復興と共に発展していったと書かれている。
産業を発達させるためにはしっかりした流通、
つまり道路を整備するのが国策だったわけで。
高度成長とともに、クルマでレジャーに行く人も増え、
本書で紹介されているドライブインの多くは、
それはそれは繁盛していたという。

著者は、全国に点在するドライブインに何度も立ち寄り、
店の人と関係性を築いてから、さまざまな話を
引き出していく。すでにドライブインという店の形態は
時代遅れなのだろうが、ひっそりと、淡々と
経営を続けていく老いたご主人やおかみさんの言葉に
浸りながら読み進めていく。

戦後の復興と高度成長、バブルとその崩壊。
経済が衰退していくとともに、店を縮小したり
私たちの代で終わりですよ、と笑ったりする人たち。

ラーメンとかハンバーガーとかの
レトロな自販機をたくさん設置していて
故障ばかりするけど家族みたいな存在なんですと語る店主。
わたし、「トラック野郎」に出たんですよ、
と驚愕のエピソードを語るおかみさん。
経営のかたわら、若くして亡くした兄の
跡を継ぎ、作詞家としての顔を持つご主人。
よくよく聞いたら、ドライブインを経営する前は、
太平洋戦争からの帰還兵のための軍国酒場を
開いてその土地の有名人だったという夫婦。

語り手の言葉が上っ面ではなく、
その人ならではの本心が発せられている感じがある。
相手が口を開くのを
じっと待っているみたいな著者の立ち位置。
控えめというか謙虚というか、
ひと言でいうと優しいのです。
どうしてそんな風に書けるのだろう。そんな415ページ。




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