崔洋一監督。享年73。
人生100年時代と言ったのは誰だ。
がんであることは公表していたので、
来るべき日が来た感じはあるけれど、
それにしても早すぎませんか。
崔監督はその存在自体が
昔ながらの日本映画を体現していたと思う。
ゴールデン街でケンカがいちばん強い助監督として
若松孝二や大島渚をサポートし、
松田優作や内田裕也、桃井かおりらの
信頼と寵愛を受けていたわけで、
武勇伝も数多いレジェンドみたいな人だったと思う。
映画はどれも面白かった。
言葉にはしにくいが、とこか独特の浮遊感があって、
ちょっと針が振れると、あるときは強烈な暴力が発露し、
またあるときは情緒的でしみじみした場面になったりと
軽快かつ自由。それでいて芯はしっかりしている感じがあった。
「十階のモスキート」「月はどっちに出ている」
「血と骨」が傑作とか名作とか、そんなのは当たり前で、
個人的に好きな映画を思うままに挙げてみる。
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友よ静かに瞑れ(1985)
この映画のことは何度も書いているような気がする。
ともあれ、かつての友を救出するために
ヤクザ組織に潜入する藤竜也主演のハードボイルド。
原田芳雄に倍賞美津子、中村れい子と高柳良一、
室田日出男、佐藤慶、宮下順子、そして林隆三。
見事なアンサンブルとそれぞれの存在感。
名セリフが散りばめられた丸山昇一の脚本。
からっと乾いた沖縄のうらぶれた港町の
ロケーションも素晴らしい。
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Aサインデイズ(1989)
沖縄のロックシンガー、喜屋武マリーの青春を描く。
本土復帰に沸く沖縄で、時代に翻弄されながらも、
石橋凌を相手役に、自身をとことん貫くマリーを演じる
中川安奈の一世一代の熱演。彼女もいまはもう亡き人、だ。
沖縄と聞くと、崔監督の映画を思い出す。
そういえば「豚の報い」もあった。あれもいい映画だった。
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犬、走る(1998)
無国籍かつ猥雑な新宿の裏町を
不良を絵に描いたような刑事、岸谷五朗が走る走る。
セコさが極まる情報屋の大杉漣も走る。
こんなにいかがわしくて楽しいアクションコメディは
崔監督にしか撮れないと思う。
大森一樹監督に続き、今回の崔監督の訃報に
すっかり意気消沈しています。とってつけたような追悼は
したくないんだよ、と歌舞伎町で叫ぼうと思ったけれど、
今はすっかりクリーンな街になっているようで。