Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

月はどっちと言われても

2022年11月28日 | 日々、徒然に
崔洋一監督。享年73。
人生100年時代と言ったのは誰だ。
がんであることは公表していたので、
来るべき日が来た感じはあるけれど、
それにしても早すぎませんか。

崔監督はその存在自体が
昔ながらの日本映画を体現していたと思う。
ゴールデン街でケンカがいちばん強い助監督として
若松孝二や大島渚をサポートし、
松田優作や内田裕也、桃井かおりらの
信頼と寵愛を受けていたわけで、
武勇伝も数多いレジェンドみたいな人だったと思う。

映画はどれも面白かった。
言葉にはしにくいが、とこか独特の浮遊感があって、
ちょっと針が振れると、あるときは強烈な暴力が発露し、
またあるときは情緒的でしみじみした場面になったりと
軽快かつ自由。それでいて芯はしっかりしている感じがあった。

「十階のモスキート」「月はどっちに出ている」
「血と骨」が傑作とか名作とか、そんなのは当たり前で、
個人的に好きな映画を思うままに挙げてみる。

友よ静かに瞑れ(1985)

この映画のことは何度も書いているような気がする。
ともあれ、かつての友を救出するために
ヤクザ組織に潜入する藤竜也主演のハードボイルド。
原田芳雄に倍賞美津子、中村れい子と高柳良一、
室田日出男、佐藤慶、宮下順子、そして林隆三。
見事なアンサンブルとそれぞれの存在感。
名セリフが散りばめられた丸山昇一の脚本。
からっと乾いた沖縄のうらぶれた港町の
ロケーションも素晴らしい。

Aサインデイズ(1989)

沖縄のロックシンガー、喜屋武マリーの青春を描く。
本土復帰に沸く沖縄で、時代に翻弄されながらも、
石橋凌を相手役に、自身をとことん貫くマリーを演じる
中川安奈の一世一代の熱演。彼女もいまはもう亡き人、だ。
沖縄と聞くと、崔監督の映画を思い出す。
そういえば「豚の報い」もあった。あれもいい映画だった。

犬、走る(1998)

無国籍かつ猥雑な新宿の裏町を
不良を絵に描いたような刑事、岸谷五朗が走る走る。
セコさが極まる情報屋の大杉漣も走る。
こんなにいかがわしくて楽しいアクションコメディは
崔監督にしか撮れないと思う。

大森一樹監督に続き、今回の崔監督の訃報に
すっかり意気消沈しています。とってつけたような追悼は
したくないんだよ、と歌舞伎町で叫ぼうと思ったけれど、
今はすっかりクリーンな街になっているようで。
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