緊急事態宣言下では映画館はすべて休業。
なのでしばらくは映画館で映画は見られない。
なんとも悲しい限りではあるけれど、
宣言が出る前に見た映画を思い出しつつ、
いろいろ書いていこうかな、と。
まずは、3月に渋谷シネマヴェーラで見たコレから行きます。
ウラジミール・メニショフ監督
「モスクワは涙を信じない」を見る。
実に何十年ぶりかの再見。内容は覚えていないけど、
いい映画だったという感触だけは残っていて、
きっとまた感動するだろうと思っていたら、甘かった。
あれよあれよという間に引き込まれ、ラストでは号泣してしまったという。
なんだこれは、とてつもない名作ではないか、と。
79年の制作だから、当時のロシアはソ連であり、
冷戦下でバリバリの社会主義国家だ。
でも本作のモスクワの風景はいたって平穏で、
それなりに豊かだったことがわかるし、人々の生活ぶりも
アメリカや日本とさほど変わらない印象。
そんなモスクワで生きる3人の女性の数十年を描く本作。
一人は平凡な結婚をし、地道な生活を選び、
もう一人はダメ男と結婚して破綻。いい男を絶えず探している。
そして最後の一人でヒロインとなるエカテリーナは、
工場労働者であることを隠して、テレビ局のカメラマンの男と恋仲になる。
しかし身分がばれ、マザコンだったその男に振られてしまうのだけど、
すでに彼女は妊娠していたという。
なんか、どこにでもあるメロドラマというか。
世界のどこにいたとしても、人の喜びとか悲しみ、悩みなんかは
共通なのかもしれないな、と。
映画は、シングルマザーとなったエカテリーナの
強さと脆さをじっくり描き、彼女に感情移入すればするほど
ラストの幸福感に涙する人は多いだろう。
つまりはよくできているメロドラマなわけで、
ちょっと寂しげな主題歌もチャーミング。
当時、アカデミー外国語映画賞を獲ったのだけど、
今では忘れられた映画という感が強いので、
あらためて本作の素晴らしさを書き留めておきます。