浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

冥福は、祈れない

2015-12-04 17:08:43 | 
この方だけは死なないもんだと思ってましたけどね。。まぁそんなことは無いですね。

先日、昼過ぎに電車に乗っていて、Podcastで町山智浩氏が水木しげる先生について語っていた。



この人の語り口と、「ああ、本当にもう水木しげるはいないんだ」と思ったら何故か涙が出てきた。自分でも意外なほど、自分は水木しげる先生が好きだったんだね。そういうことってたまにありません?なんか犬とかが使ってなそうなガラクタあって、それ片付けようとしたら急に吠えたりして「ああ、ごめんごめん、これけっこう気に入ってたのね」みたいなさ。

子供の頃、水木しげるの妖怪全集みたいなものは当然、持ってたし、そして当然、それで結構怖くなってたりしてた。物心ついて、やっぱり妖怪というのは非常にキュートだと思ったし、民俗学が好きなのでその方面からも好きになった。ベトベトさんが一番好きです。

たぶん、水木しげるは「楽しく生き続けた」人だと思う。だってさー、鬼太郎の主題歌(水木しげる作詞)がすごいじゃない。

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朝は寝床でぐーぐーぐー
たのしいな
おばけにゃ学校も 試験もなんにもない
夜は墓場で運動会
たのしいな
おばけは死なない 病気もなんにもない
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ですよ。すごい話だ。

そして、水木しげるは左腕を失っており、それが戦争によるものだというのを僕が知ったのは更に物心がついてから、だった。

戦争というなんだかよくわからないけど恐ろしい「魔物」が彼の左腕を違う世界に持って行ってしまったのだろうと思う。だからこそ、彼は違う世界が「視えた」んじゃないかと思う。

アンパンマンの作者、やなせたかし(この方が亡くなった時も悲しかったなぁ)があるインタビューで言っていた。

「やっぱりね、死んじゃうとおしまいなんだな、どんな天才でも。だから水木しげると俺みたいに寝てるやつはね、死なないんだよ。あっはっは。」

本当にそう思う。徹夜なんかしないでよく寝ていた水木しげるとやなせたかしは長生きした。本当に寝るのって大事だね。

水木しげる大先生の「ご冥福」を祈るのには違和感がある。たぶん、水木しげるは死んだのではなく、ただ「還った」だけだろうから、妖怪の世界に。

ああ、今頃、鬼太郎や一反もめんや塗り壁たちと朝はぐーぐー寝て夜は墓場で運動会しているんだろう。。ああ、楽しそうだなぁ。たぶん、その世界は僕らの生きてる世界の中にある。