浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

深い河を渡ることには何の疑問もない。

2008-07-25 00:17:56 | 
「せめてこれだけは読んでくれ!そうでないととりあえず話ができん!」ってのは逆境ナインで出て来た言葉だけど、最近、そういうことを言われることがあった。

「『深い河』と『風の谷のナウシカ』は読んで!じゃないと話通じない!」

そういうことって言うことはあっても言われることってあんまりないので、「うむ、読まねばな」と思って早速買いました。
遠藤 周作
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言われたシチュエーションというのはこないだの同窓会のラスト、友人と2人で飲んでたときなんだけどね。

どういう話かというと5人の登場人物がそれぞれの思いを持ってインドのツアーに参加し、ガンジス河に向かう、というもの。

メインに流れているテーマは「一神教であるキリスト教と日本人」。

うーむ、簡単には収まりつかない深いテーマではある。なんだけど読みやすかったし、単純に面白かった。

南東北の山あいの電車に乗りながら読んでいてふと顔を上げると緑の山が見えた。そしてiPodからは測ったかのようにルイ・アームストロングの「What a wonderful world」。この本を堪能するのにはそういうシチュエーションが最高だね。

この本を読み終えた後にいろいろ検索してて言葉を知ったんだけど「汎神論」という言葉があるらしいね。

つまり「万物に神がいる」という考え方。多くの日本人の考えは無神論、というよりも汎神論に近いかも。

先日、友人と話していても、またこの本を読んでいても本当に思うのはすべての物事は陰陽(あるいは大極図)なんだと思う。


こういうのね。

この図が示しているものは、陰と陽は不可分であること。バスッと真ん中で区切れるものではない。黒は白を飲み込もうとしているし白は黒を飲み込もうとしている。黒が極まれば白が始まるし、逆もそう。また、白の中には一点だけ黒があるし黒の中には白が一点ある。

善も悪も、正も邪もそういうもんなんだろうと思う。

誤解を恐れず言うとこういうのが論理的にも倫理的にも正しいと僕は思う。でもそれは日本という文化に生まれたからそう思うのかも知れないけど。

だから西洋的な「神は善、悪魔は悪」というのはどうにも納得できない。

人間だってそうじゃないですか。いい人だって見ようによっては悪い側面もあるし。もっと言っちゃうと世の中のすべての相反する概念、たとえば「西洋と東洋」「男と女」とかだってすべてはこうだと思う。

この本のタイトル「深い河」はもちろん登場人物たちが向かうガンジス河のことではあるんだけど僕は読んでいてつまり「人生」のことなんだと思った。

我々は皆、人生と言う深い河を渡ろうとしている。この物語の中で大津は大いに迷っていたけども、僕は幸福なことに、無知なだけだけど人生と言う河を泳ぐことには何の迷いもない。いや、もちろん渡りながら「どっちに行こう」とか迷いはありますよ。でも、生まれてきた以上、渡るしかないよね、と思ってる。

この本を紹介してくれた友人が「子供を産んで迷いがなくなった。結局は生まれ、子供を授かり、その子供にバトンを渡していく」みたいなせりふはスカッと落ちるね。

酔っているんでまとまりないけど、やっぱり僕は自殺する人とか人を殺す人とかはあんまり理解できないんだよな。

つーことで、ワインを注ぎます。