浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

結婚式に出ての日記

2004-10-17 22:53:05 | 日記
ある男が死んだ。彼女に会いに自転車を漕いでいるときに車にはねられた。
彼が死んだ交差点は本当に何の変哲もない交差点で、
信号どころか横断歩道もない交差点だった。

そして、彼の友人の結婚式があった。
新郎新婦の出会いには少なからず彼の働きかけもあった。

結婚式が終わった後、死んだ人間のことを知る女性とともに彼の死んだ
交差点に向かった。
結婚式でもらった花束をささげに行った。

その女性は言った。
「たぶん今日、こいつも来ていたと思うよ」
うん、僕もそう思う。
女性は続けた。
「本当は結婚式に行く前に寄りたかったけど」
もし結婚式に行く前に寄っていたら、彼女の背中について、彼も来ていたかも知れない。

人は死ぬ。
変哲のない交差点だろうが、砂漠の真ん中だろうが、人がいる限り、
人はその場で死ぬ可能性がある。
でも、記憶は残る。そして人は少し救われる。

もし自分が死んだとして、友人の結婚式があったときに、その結婚式の記憶を、
花とともにささげてくれたら、とてもいいと思う。
自分が死んだ跡にいろいろな記憶とともに花をささげてくれる人間が
できるかぎりたくさん(一人でもいい)いてほしいと心から思う。