わが心のジェニファー 浅田次郎(著)2015年10月発行
NYのウオール街で金融の仕事をしている「ラリー」が主人公。
ラリーの恋人「ジェニファー」は、日本の文化、自然を愛してやまない女性。
ある日、意を決してジェニファーにプロポーズしようとしたラリーに対し、
ジェニファーは指輪を受け取る前に、二つのお願いをしたいという。
まず一つは、
「日本を見て来てほしい。休暇をとってゆっくりと」
そして、
「旅先から手紙をちょうだい。あなたの手で書いた、日本の感想がよみたいわ」
ジェニファーへの愛のために未知の国への旅を決心するラリー。
PCや形態電話を取り上げられながらも、このミッションを達成すべく
予定のない成り行き任せの旅をし、ジェニファーに感想を綴っては投函していく。
京都、大阪、別府、東京、、、とそれぞれの地で、ユニークな人々と出会い、
人生に向き合い、最後は運命の糸に導かれたかのように北海道、釧路湿原に辿り着き、
ジェニファーが熱く語ったクレイン・ダンス(丹頂鶴の舞い)を見ることに。
ラリーは、日本各地を旅し、人々と触れ合い語り合うなか、
彼自身の生い立ちを振り返りながら、育ててくれた祖父母への感情、
封印していた彼自身の心の奥に秘めた苦悩、両親への感情、などと
と正面から向き合うこととなる。
ラリーが旅するために唯一手にしている、日本観光の案内本の
ポジティブガイドブックとネガティブガイドブックでの紹介の
仕方の違いが愉快だし、
偶然知り合いラリーをガイドすることになる個性豊かなメンバーも面白い。
祖父と友人達の父親の教育方針の違い、祖母の愛、
会ったことのない父母への想い、、、
日本を観光する形をとりつつ、
日本文化論や人生の様々な問題が盛り込まれ、読ませる小説。
わがまま母