アウターライズ 赤松利一(著)2020年3月発行
出版当時から、ずっと気になっていながら読んでいなかった一冊。
東日本大震災を経験し、あれから12年が経過。どうしても読んでおかなければ、、、と
思いながら、今ようやく。
小説として描かれている現在の日本の硬直した政策運営と防災対策、問題の多い地方自治、、、
などは、現実の憂うべき状況に間違いない。
そんな状況下で、アウターライズによる津波の脅威を知れば、震撼し恐怖に不安が
増すばかりだ。
大震災直後から、被災地で土木作業など現場で実際に復興事業に携わった著者の経験
知識、考察からの警告はとても貴重。わかりやすい小説として表現されていて面白く、
海に囲まれ地震多発の日本列島に住む者としては、一読し、小説の内容への賛否は別と
しても、大地震、津波防災の警告として捉え、考えるいい機会になるのではないかな。
わがまま母
— 「ダ・ヴィンチ」Web インタビューより一部抜粋し記す —
『アウターライズ』(赤松利市/中央公論新社)が扱っているのは、東北地方での正断層型のアウターライズ地震の発生と、“東北独立”というセンセーショナルな題材。東北地方が〈東北国〉として独立を果たしたもうひとつの2020年代を舞台に、防災と復興、そしてこの社会のあるべき姿を読者に突きつける。
東北の被災地で土木作業員をしている時代に構想され、長い歳月をかけて紡がれたという壮大な物語が、ついに姿を現す。議論を呼ぶこと必至の渾身作『アウターライズ』に込めた思いを、著者の赤松さんにうかがった。
中略
――舞台は東日本大震災の10年後。巨大なアウターライズが東北地方を襲います。あの大震災を生き延びた人々は、再び地震と津波の脅威に晒されることになり……、という衝撃的なストーリー。このアイデアはどこから生まれてきたのですか。
赤松:被災地で土木会社に勤めていた仕事柄、東北の各市町が作成した復興計画に目を通すことが多かったんですが、不思議なことにどの自治体の復興計画も似たり寄ったりの金太郎飴なんですよ。地域によって事情が異なるはずなのに、明らかにおかしい。どういうことかと思っていたら、ある人が「復興予算をもらうためです」と教えてくれた。中央の勘定科目に合わない計画は、予算を申請しても認められないというんです。そんなバカなことがあるか、と思った。
――なるほど、被災地復興のあり方に、違和感を持たれたわけですね。
赤松:せっかく災害に強い町作りができるチャンスなのに、適切な予算の使われ方がしていない。これじゃ復興ではなくて、復旧だろうと。その根底には、東日本大震災と同規模の地震はそう起きないだろうという思い込みがあるんです。それは被災地の方々にしてもそう。震災直後は「この瞬間、また津波がきたらどこに逃げよう」と考えていた人が、数年経つと「あれは1000年、500年に一度の災害だから」と口にするようになっていたんです。
――作中にも書かれていますが、東北でアウターライズ地震が起きる可能性は、実際にゼロではないそうですね。
赤松:そう。明治の三陸地震から昭和の三陸地震が起きるまで37年しか経っていないし、2004年のスマトラ沖地震の8年後には大規模な地震が発生している。いつ東北でアウターライズ地震が発生しても、おかしくはないんです。しかし私たちはつい「こんな悪いことは二度も起きないだろう」と思ってしまう。そういう風潮に警鐘を鳴らしたかった。それがこの物語を書いた、最初の動機ですね。
略