遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

シチリアの奇跡  マフィアからエシカルへ

2024年07月29日 16時21分05秒 | 読書

        シチリアの奇跡  

           マフィアからエシカルへ     島村夏(著)2022年12月発行

  良質な小麦、美味しい果物、オリーブ、レモン、ピスタチオなどナッツ類、新鮮な魚介類、

  地元産ブドウのワイン、、、これらがフェアな状態で流通可能となった現在のシチリア。

  マフィアによる暗いイメージが付き纏っていたシチリアが、近年、如何に魅力的な島に

  変革しているか、複眼的な新たな視点を持ち、根気強く続けたシチリア密着取材により

  語られていく。

  ここに至るまで、数々の悲劇を乗り越え、努力し、連帯し、正義を信じ闘い続けた人々の

  姿に感動を覚えずにはいられなかった。

  食いしん坊としては、以前から、美味しいものの宝庫「シチリア」には興味津々で、

  また、地中海の十字路に位置することから、歴史的にも美術的にも独自の魅力を感じ

  シチリアに関連する本を探していて出会った一冊。

  多少なりとも日本社会と似通ったところがあるし、日本の社会に置き換かえ、

  私たち市民が参考にして行動すべき点が多いのではないかと。勇気が必要だけど。

  とても興味深かったので、是非、地方の若者や政治に関わる人にも読んでみて欲しいな。

      わがまま母

 — 新潮社 案内文 —

「ゴッドファーザー」の島から、オーガニックの先進地へ。

 諦めない人々の闘いのドキュメント! 本当のSDGsは、命がけ。

映画「ゴッドファーザー」が象徴する“マフィアの島”が、今やオーガニックとエシカル(倫理的)消費の最先端へ――みかじめ料不払い運動に反マフィア観光ツアー、有名ピザ屋が恐喝者を取り押さえ、押収された土地は人気の有機ワイン農場に姿を変えた――『スローフードな人生!』の著者が10年以上の現地取材で伝える、諦めない人々のしなやかな闘いのドキュメント。新しい地域おこしはイタリア発、シチリアに学べ!

  〈書評〉

◆食に社会正義を取り戻す
[評]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)

 シチリアマフィアといえば、映画『ゴッドファーザー』だ。フィクションだとわかっているつもりでも、もの悲しいメロディと共に「美学のある悪」というイメージが脳に染み付いている。現実のマフィアはどうなのか。
 マフィアのルーツは中世から続く秘密結社というのは都市伝説に過(す)ぎず、実は歴史は案外浅い。封建制社会から近代国家へと移行する過程で、労働者を安い賃金で管理したり、農産物を運ぶ際に私的護衛をつけるために生まれたのだという。時期としては一八六一年のイタリア統一以後のこと。以来大戦を経て大企業や政治家と繋(つな)がり、暗躍する。
 本書の前半ではマフィアと戦い殺された人々を、反マフィア活動を展示した施設と共に紹介。爆殺、誘拐、遺体を酸で溶かす、などなど身も凍るエピソードが満載で、しかも田舎らしい人間関係の狭さの中で多くの人が犠牲になった。恐ろしくて沈黙せざるをえなかった人がほとんどだったろう。それでも屈せずに命を賭してマフィアに立ち向かった人々の姿に、ひたすら圧倒される。
 後半は、法改正と摘発が進み、少しずつマフィアの影響力が弱まってきた二〇〇〇年代以降、ネガティブなイメージから脱却し、本来の魅力、美しい自然と美味(おい)しい農産物をアピールする試みを紹介。元々シチリア島はオリーブや葡萄(ぶどう)などの在来品種が豊富なため、それらをマフィアから押収した土地で有機栽培し、労働者を正当な対価で雇い、オイルやワインに正当な方法で加工。そうしてできた製品を使った料理を提供する店は、マフィアへのみかじめ料を支払わない。心ある消費者が安心してシチリアを観光し、お金を使うことができるよう、徹底的にクリーンでエシカルな産業を作り上げた。
 著者がずっと追い続けてきたあるべき食の形が社会正義と直結するのはわかっているつもりだったが、時として命懸けとなるとまでは思い至らなかった。島民が地道に築いた“奇跡”がこのままマフィアに屈さず大きく育っていくことを願ってやまない。

 

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