朝から、見ていて痺れるほどの一戦を、生中継で見ておりました。
日本のファンにとっては、若い頃、デビュー戦から見ているホルヘ・リナレスが、
ついに世界の殿堂MSGにて、キャリア最高の大一番を闘う。
対するは、この試合の注目度、グレードの高さを担う、リナレス以上の評価を受ける挑戦者、
ワシル・ロマチェンコでした。大いに期待、そして注目の試合でした。
初回は、ロマチェンコが出て踏み込み、当てていく。
リナレスは少し後手だったが、2回、少しロマチェンコが足使うと、ワンツーが出る。
3回はリナレスが左フック、右ストレートをボディへ。
離れた距離から、単発ながらボディへの攻撃が出るリナレスに対し、
ロマチェンコは、離れてもええことないな、という感じで、前に出てくる。
4回、ロマチェンコが唯一、強く当てる意志を持って打つ、
左アッパーから右フック返しのコンビが増えてくる。
リナレスは我慢して、単発のボディ攻撃。
この流れで6回、ロマチェンコがリードしていたところ、
リナレスの右ショートが決まり、ロマチェンコがダウン。
「真芯」ではないか、でもそれに近いヒットで、ダメージもあったか。
この一打は、リナレスのロングのパンチの切れ、そして遠くから打てるボディブローが、
普段以上に、ロマチェンコの足捌きを、前進、攻撃に傾かせたが故に決まったもの、と見えました。
当てる巧さはロマチェンコが圧倒的で、軽いが数多くのヒットを喫し続けていたリナレスが、
それを耐えて、見事に決めた右の一打でした。
7回以降、両者それぞれに苦しい中、リナレスは速い連打を繰り出し、
ロマチェンコは右から細かく当てて、懸命に立て直し。
ポイントはヒット数でまさるロマチェンコがややリードかと見えましたが、
内容的にはそういうのとはまた違う、拮抗したものが続きました。
両者ともに懸命の闘いぶりでしたが、ことに、いつものような「好き放題」とは
ほど遠いロマチェンコが、嫌なはずのボディ攻撃を受けても、怯みを見せない姿には感心しました。
対するリナレスは、軽いながらも打たれ続けたダメージの蓄積が徐々に見え、
終盤に入っても、身体の軸がぶれないロマチェンコと比べ、
上体が揺らぐ場面が散見されるようになります。
終局は唐突に見えましたが、振り返ればこういう積み重ねの末、だったのでしょう。
10回、連打から下に返した左、レバーパンチでリナレス倒れ、KOとなりました。
おそらくですが、キャンベル戦で肋骨を痛めていたことにも関係しているのでしょう。
ダメージがかなり深く、闘志はあっても、身体が動かせない、という風にも見えました。
敗れたとはいえ、リナレスはプロ転向後のロマチェンコをもっとも苦しめたと思います。
左右への「旋回」を自在に繰り返すロマチェンコに対し、身体の向きを合わせて動き、
身体の軸をずらした位置から、ガードの真ん中を狙ってくる左を、かなう限り防いでいましたし、
ロングのボディブローは、左右ともに強く、ロマチェンコの余裕を奪っていました。
しかし、これまでとは一段違う、余裕のない展開でも、ロマチェンコはさすがでした。
攻防の継ぎ目が驚くほど滑らかで、打たれない位置取り、という表現では追いつかない、
完璧な移動の繰り返しで、外しては当てまくり、相手の戦意を喪失させるのが常ですが、
今日はボディを打たれ、ダウンも奪われ、リナレスの目にも止まらぬ連打を浴びながら、
要所でしっかり反撃し、その都度、リナレスの追撃を断ちました。
世界の一流同士が、互いの力を発揮して、互いに苦しい展開の中、
懸命に耐え、立て直し、というぎりぎりの攻防を見ていると、思わず手に汗握りました。
これぞアルファベット要らず、真の「世界ライト級タイトルマッチ」だった、と思います。
実際、昔日のそれは、こういうものだったんだろうなあ、と。
どっちも相当強いけど、さらに強い者の方が勝つ。
情け無用、酷薄無情の切り分けなれど、でも、やっぱり、素晴らしい。
こういうレベルのものだと、もう、四の五の言うことありません。
どっちが勝とうが負けようが、嬉しいとか悔しいとか、そういうこっちゃない。
そう思える、次元の違う試合でした。
こういう組み合わせを生中継で見られるのは、本当にありがたいことでした。
これだけでもWOWOWに加入する価値充分、元取れた、という感じです(^^)
改めて両者に拍手です。いやー、素晴らしい試合でした!