遅い感想文になりますが、金曜日のメイン以外について。
セミファイナルは拳四朗が、前王者ガニガン・ロペスを返り討ちにしました。
関西では放送枠が一時間に縮められたので、判定になっていたら、
フルラウンド放送はおそらくなかったであろう一戦でもあり、
出来れば早い回で決着すればなぁ、と思いつつ、
この両者の対戦、どちらを見ても、その可能性は低い、というより「無い」と思っていました。
初回、両者の位置関係を見ると、遠目にはサウスポーに良い回り、
つまりロペスの側から、無理なく左ストレートが当たりそうでした。
拳四朗は正面から踏み込む。普通なら右リード、ダイレクトを当てるには遠いはず。
しかし、こまめに動き、足で外しつつ、広いスタンスを維持する、
かつての徳山昌守にも通じるスタイルで、ロペスの右ジャブ、左をほぼ外す。
初回は「大振りさせて外した場面の印象だけ、拳四朗か」と思う程度のリードに見えましたが、
2回、右ボディヒット、追撃でまた右ボディ。ロペスが倒れ、予想以上に苦しそう。
「まさか」と思いましたが、そのまま立てず、試合が終わりました。
ロペスは右に回って、拳四朗の右から遠ざかろうとしていましたが、
回って止まった先で、予想以上に伸びてきた右を、ストマックかレバーか、
微妙なところに、読めないタイミングで食い、思う以上にダメージ甚大でした。
また、拳四朗の右は、打ち出しは探るような軌道で、相手の腕の下を通し、
途中からぐっと力を込めて打つ「段差」付きのパンチでした。
アゴとボディの違いはあれど、かつてジョニー・ゴンサレスが長谷川穂積を倒した
右のワンパンチを思い出しましたが、聞けばロスでルディ・エルナンデスに指導されたものだとか。
ロスやメキシコのボクシング・セオリー、その品目のひとつ、なのでしょうね。
試合後は例によってダブルピースを決め「これさえやらんかったら...(--;)」と
頭の古い私なぞは思いましたが、試合についてはもう脱帽するしかありません。
あのしぶとい、攻略し難いガニガン・ロペスを、序盤で沈めるなど、期待も想像もしませんでした。
ロペスのキャリアの中でも、無冠ながら一時はその強打で猛威を振るったデンバー・クエジョ以外に、
ロペスをこんな形で破った選手は、今まではひとりもいなかったのですから。
拳四朗については、そのキャラクターとイメージとは裏腹な、
技巧的でありながら鋭利で、強靱なボクサーとしての内実がある、と見て、
そう書いてもきたつもりですが、今回の試合内容と結果は、さらに私の理解の一段上でした。
私の理解は、まだ拳四朗というボクサーに遠く追いついていなかった。
その驚愕は、とても心地良いものでもありました。
そして、井上尚弥の衝撃に霞んでしまった面もあるにせよ、
WBCライトフライ級の王者経験者を二人退け、堂々たる「王者の証明」を果たした、
拳四朗への評価はさらにひとつ高まることでしょう。
そして、こういう調子で勝ち続けていけば、あのキャラクターとのギャップ甚だしい、
ボクサーとしての強さ、偉大さも、より広く深く、認知される時が来るのかも、と。
ところで、長谷川穂積引退後も、関西でボクシングを積極的に取り上げる「せやねん」で、
試合の前と後(翌日)に、拳四朗が取り上げられていました。
動画二本、紹介します。数日で消しますので、お早めにご覧ください。
拳四朗のキャラクター、ボクサーとしての強さを支えるものが何か、垣間見える内容になっています。
試合の前週放送、トレーニング紹介など。
試合翌日放送、計量、試合、祝勝会など。
===========================================
金曜日の大田区総合体育館は、どの試合も早期のKO決着で、
ボクシングの魅力を大いに堪能できる興行だった、と言えるものでした。
第一試合は、確かビートの最新号で紹介されていた栃木、宇都宮金田ジムの後藤竜也が初回KO勝ち。
二試合目は、大橋ジムからデビューの元高校王者、桑原拓が、インドネシア人を初回TKO。
しかし、早々からお互いに当たるとこに突っ込んでいき、バタバタ振り回す感じで、
ちょっと浮き足だったのかな、という印象も。パンチは切れ、威力もありそうで、次以降に期待です。
三試合目は溜田剛士が、これまたインドネシア人を3回KO。元ヨネクラジムの溜田、パワーは非凡なものありです。
四試合目は、弟さん登場。これ、関東では放送枠に入ったみたいですね。
井上拓真、厳しいカード続きのせいでKO率こそ低いですが、やっぱり強い。
インドネシア王者ワルド・サブを、初回ボディで沈めました。一蹴、相手にもならん、という風情。
120ポンド契約でしたが、上半身は厚みを増していて、違和感はなし、でした。
と、試合自体は見ていて、退屈するようなものはなかったんですが、
やはり合間合間の休憩が、えらいことになっていました。
これが後楽園ホールで、TVの生中継がない興行だったら、さくさく進行して
多少休憩は入れても、9時までには終わっていたことでしょう。
いやー、今日は面白かったなぁ、早く終わったし、楽で良かった、と言うところなんですが...。
まあ、過去の例と違うのは、英国スカイスポーツや、米国ESPN(オンデマンドだそうですが)でも
生中継されますのやで、という話だったので、まあそれは我慢せなしゃあないか、とも思いますが。
文字通り、尚ちゃん世界生中継デビュー、だったわけですから。
とはいえ、まあ友人たちとあれこれ話したりして、時間は潰せましたけど、
やっぱり、会場まで行って、あんなに長い時間待たされまくる、というのは、
根本的に何か間違ってるぞ、と思います。
興行収入の根幹を成すのが、入場料より放映権料である、それは事実ですが、
それを前提としてしまっている日本のボクシングは、やはりどこか歪です。
今回、英国マッチルームプロモーションが興行に関与し、英国への放送もそれで実現し、
WBSS大会への井上出場、或いは日本での一部開催、放送の話も進むようですが、
エディ・ハーン氏のような、英国ボクシングの隆盛を支える人材から見て、
世界的スーパースターたりうる逸材、井上尚弥の試合が、キャパ4千人程度の会場で
収まってしまっている状況は、どのように映ったものか。
一度、率直に語ってもらえんものかな、と思ったりもしますね。