二大王座統一後の初防衛戦となった、田口良一vsヘッキー・ブドラー戦、
残念ながら関東ローカル放送でしたが、友人の厚意により、映像を見ることが出来ました。
簡単に感想。
※TVerで動画見られます。リンクはこちら。
ヘッキー・ブドラーは、以前WOWOWでも試合が放送されていて、そのときの印象は、
はしっこく動いて、手数出して攻める選手、一打の怖さはないが、防御も締まっていて、
自分の特徴をよく知っている、技巧派のビジーファイター、というものでした。
ただ、WOWOWで試合を見るときは、実際に日本の選手と絡んで、どう攻略するかとかではなく、
単に良い試合、高度な試合、凄い選手を見たい、という目で見ているもので、
ブドラーに対して、あまりつぶさにあれこれ考えて見る、ということはありませんでした。
いざ、田口良一と対した今回、序盤の展開を見て、こんなにサイドに丁寧に回るのか、と驚かされました。
ジャブも出すが、右から入って左ジャブを突く、世に言う逆ワンツーを打ったあと、
ダッキングの動作を伴ったサイドステップで田口のリターンを外し、また打つ、という繰り返し。
無駄に下がってしまうのでなく、サイドへ出るから、すぐ次が打てる。
田口はボディブローを好打するも、近い距離で攻勢を取られ、メリンド戦で有効だった、
突き放すジャブを封じられ、また半ば忘れてしまった風でもありました。
2回はボディの好打も見えたが、3回にはもう鼻血が視認でき、明らかに劣勢。
4回は逆にボディを連打され後退、ロープを背負う場面も。
思わず目を疑うような場面でしたが、このままずるずるとは行かないのが、さすが田口でしょうか。
5回は逆にボディを攻める。ブドラー連打もミス、後退も。
ところがブドラー、サイドステップだけじゃなく、試合運び自体にも巧さを見せる。
6、7回は、意図してラウンド前半、手を止めて休んだ感じ。
田口が乗じて出るが、ラウンド後半、ブドラーが盛り返す。
7回は田口が左ジャブを増やし攻勢、ラウンドも取ったか。
しかし終盤はシーソーゲームの様相。8回、ブドラーが抑える。
9回は疲れが見えるブドラーが頭を前に出す。
田口攻めるが精度に欠ける。身体の軸を決めて、身体を回して打てない欠点が露呈、ここは泣き所。
10回、打っては右回りのブドラー。田口は右アッパー見せる。
11回はややブドラーか。田口ジャブを忘れている感。焦り見える。
最終回、明らかな左フックによるダウンが、なぜかスリップ裁定。
田口攻めるが、好機の詰めに精度を欠く。残念。
判定はラウンド数7対5で三者が揃い、最終回の裁定が覆って10-8になったが届かず。
ブドラーが新王者となりました。
採点はかなり田口に好意的、と思いましたが、リングサイドで見ていると、
田口の攻勢や、ボディブローの効果が、我々の見た印象以上によく見えたのかもしれません。
そうとでも思わないと...という言い方にもなりますが、その辺はまぁ...ということで。
これまで、メリンドやバレラといった上位陣や、世界各国のコンテンダー相手に、
苦しい展開でも変わることなく、鬼気迫る猛攻で渡り合ってきた田口ですが、
今回は、残念ながらクリアに負けた、と見えました。
距離で外すのでなく、サイドへの動きで外され、即打たれ、また動かれ、という繰り返しで
試合の序盤を完全に抑えにかかったブドラーの「田口攻略法」は、実に見事でした。
けっして決め手の強打があるではないが、中盤以降、田口の追い上げを巧みにかわし、
休むべきところは休み、攻めるべきところは頑張って攻め、頭を出して嫌がらせもし、
最終回の大ピンチも、しぶとく生き残りました。
やるべきことを、やるべきときに、適切にやりきったブドラーは「然るべき勝者」だった、と思います。
その上で、ちょっと気になったのは、田口も自身で口にした「調子」の問題でしょうか。
確かにブドラーの巧さが光りましたが、序盤早々から打たれ、4回には後退もした。
ここ数試合の印象よりも「弱る」のが早い、というか...「不調」な印象がありました。
風貌のせいで、若く見えますがもう31歳、何年もライトフライの体重を維持し、
ご存じの通りの激戦続きですから、歴戦の疲弊が見えても不思議ではないところです。
もっとも、それが「露呈」されても仕方ないところ、まだこれだけの奮闘を見せているのは、
これまたさすが田口良一、と言うべきなのかもしれませんが。
報道によると田口陣営は判定に不服で、提訴するとか、再戦がどうとかいう話もあるようです。
見解は様々にあれど、陣営がそういう風に動くのは、ある意味では当然なのかもしれません。
しかし、田口の現状を考えれば、さらに一歩先に進む決断として、フライ級転向があってもいいのかな、と
思ったりもします。
セミは見ていませんが、京口紘人も減量は厳しくなっているとのことですから、
こちらも早々に転級し、オプションを行使して、ブドラーに挑むのは京口にすべきではないか、と。
傍目の者がいうほど簡単じゃない、というのは承知ですが、
田口のような闘志に満ちた選手が、その闘志についてこない身体を引きずって闘い、
決定的な破局を迎える、というような「絵」は、あまり見たくないな、と思います。
今後、再起するなら、身体的な負担を軽減して、新たな方向性を模索するべきではないか。
今回の敗戦は残念でしたが、今後次第では、新たな道への「契機」だった、
そう振り返ることが出来るのではないか。そんな風にも思いました。