さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

動かれ、打たれ劣勢、追撃届かず 田口良一、奮戦も陥落

2018-05-21 04:18:13 | 関東ボクシング



二大王座統一後の初防衛戦となった、田口良一vsヘッキー・ブドラー戦、
残念ながら関東ローカル放送でしたが、友人の厚意により、映像を見ることが出来ました。
簡単に感想。

※TVerで動画見られます。リンクはこちら


ヘッキー・ブドラーは、以前WOWOWでも試合が放送されていて、そのときの印象は、
はしっこく動いて、手数出して攻める選手、一打の怖さはないが、防御も締まっていて、
自分の特徴をよく知っている、技巧派のビジーファイター、というものでした。

ただ、WOWOWで試合を見るときは、実際に日本の選手と絡んで、どう攻略するかとかではなく、
単に良い試合、高度な試合、凄い選手を見たい、という目で見ているもので、
ブドラーに対して、あまりつぶさにあれこれ考えて見る、ということはありませんでした。


いざ、田口良一と対した今回、序盤の展開を見て、こんなにサイドに丁寧に回るのか、と驚かされました。
ジャブも出すが、右から入って左ジャブを突く、世に言う逆ワンツーを打ったあと、
ダッキングの動作を伴ったサイドステップで田口のリターンを外し、また打つ、という繰り返し。

無駄に下がってしまうのでなく、サイドへ出るから、すぐ次が打てる。
田口はボディブローを好打するも、近い距離で攻勢を取られ、メリンド戦で有効だった、
突き放すジャブを封じられ、また半ば忘れてしまった風でもありました。

2回はボディの好打も見えたが、3回にはもう鼻血が視認でき、明らかに劣勢。
4回は逆にボディを連打され後退、ロープを背負う場面も。

思わず目を疑うような場面でしたが、このままずるずるとは行かないのが、さすが田口でしょうか。
5回は逆にボディを攻める。ブドラー連打もミス、後退も。

ところがブドラー、サイドステップだけじゃなく、試合運び自体にも巧さを見せる。
6、7回は、意図してラウンド前半、手を止めて休んだ感じ。
田口が乗じて出るが、ラウンド後半、ブドラーが盛り返す。

7回は田口が左ジャブを増やし攻勢、ラウンドも取ったか。
しかし終盤はシーソーゲームの様相。8回、ブドラーが抑える。
9回は疲れが見えるブドラーが頭を前に出す。
田口攻めるが精度に欠ける。身体の軸を決めて、身体を回して打てない欠点が露呈、ここは泣き所。

10回、打っては右回りのブドラー。田口は右アッパー見せる。
11回はややブドラーか。田口ジャブを忘れている感。焦り見える。

最終回、明らかな左フックによるダウンが、なぜかスリップ裁定。
田口攻めるが、好機の詰めに精度を欠く。残念。

判定はラウンド数7対5で三者が揃い、最終回の裁定が覆って10-8になったが届かず。
ブドラーが新王者となりました。
採点はかなり田口に好意的、と思いましたが、リングサイドで見ていると、
田口の攻勢や、ボディブローの効果が、我々の見た印象以上によく見えたのかもしれません。
そうとでも思わないと...という言い方にもなりますが、その辺はまぁ...ということで。


これまで、メリンドやバレラといった上位陣や、世界各国のコンテンダー相手に、
苦しい展開でも変わることなく、鬼気迫る猛攻で渡り合ってきた田口ですが、
今回は、残念ながらクリアに負けた、と見えました。

距離で外すのでなく、サイドへの動きで外され、即打たれ、また動かれ、という繰り返しで
試合の序盤を完全に抑えにかかったブドラーの「田口攻略法」は、実に見事でした。
けっして決め手の強打があるではないが、中盤以降、田口の追い上げを巧みにかわし、
休むべきところは休み、攻めるべきところは頑張って攻め、頭を出して嫌がらせもし、
最終回の大ピンチも、しぶとく生き残りました。
やるべきことを、やるべきときに、適切にやりきったブドラーは「然るべき勝者」だった、と思います。


その上で、ちょっと気になったのは、田口も自身で口にした「調子」の問題でしょうか。
確かにブドラーの巧さが光りましたが、序盤早々から打たれ、4回には後退もした。
ここ数試合の印象よりも「弱る」のが早い、というか...「不調」な印象がありました。

風貌のせいで、若く見えますがもう31歳、何年もライトフライの体重を維持し、
ご存じの通りの激戦続きですから、歴戦の疲弊が見えても不思議ではないところです。
もっとも、それが「露呈」されても仕方ないところ、まだこれだけの奮闘を見せているのは、
これまたさすが田口良一、と言うべきなのかもしれませんが。

報道によると田口陣営は判定に不服で、提訴するとか、再戦がどうとかいう話もあるようです。
見解は様々にあれど、陣営がそういう風に動くのは、ある意味では当然なのかもしれません。

しかし、田口の現状を考えれば、さらに一歩先に進む決断として、フライ級転向があってもいいのかな、と
思ったりもします。
セミは見ていませんが、京口紘人も減量は厳しくなっているとのことですから、
こちらも早々に転級し、オプションを行使して、ブドラーに挑むのは京口にすべきではないか、と。

傍目の者がいうほど簡単じゃない、というのは承知ですが、
田口のような闘志に満ちた選手が、その闘志についてこない身体を引きずって闘い、
決定的な破局を迎える、というような「絵」は、あまり見たくないな、と思います。

今後、再起するなら、身体的な負担を軽減して、新たな方向性を模索するべきではないか。
今回の敗戦は残念でしたが、今後次第では、新たな道への「契機」だった、
そう振り返ることが出来るのではないか。そんな風にも思いました。




コメント (3)
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