さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

光を当てる方法は、他にもっとあるはずだ 住吉5大タイトル戦雑感 その2

2016-11-25 05:27:17 | 関西ボクシング


住吉観戦記、続きます。その1はこちら


四つ目のタイトルマッチはWBCユース、バンタム級。19歳同士。
デビュー4戦目の丸田陽七太が、フィリピンの若手ジョー・テホネスと対戦。
テホネスは小柄なサウスポー、7戦6勝(2KO)1敗。

初めて直に見る丸田陽七太、まずはバンタムでは抜きん出た体格にびっくり。
サウスポー相手に正対して、左ジャブをボディへ、右ストレートを上へ打つワンツー、これが当たる。
「クロンクの選手やあるまいし、ほんまかこれ」と、思わず驚きが口をついて出ました。

序盤はよく左ジャブが出て、相手が詰めてきたら右ダイレクト、と冷静に対処していた丸田ですが、
少し攻めが間延びし始め、テホネスに接近される。4回には連打で攻め込まれ、ヒットを許す場面も。

しかしここから徐々に立て直す。左ボディから上にダブル、トリプルと連打。
ジャブや右による突き放しは物足りないが、要所で左のレバーパンチが決まる。
これは狙っていたようだが、乱発はしない。少し悪い展開だったが、冷静さも見える。

7回、テホネスが攻めるが、ここでワンツーから左ボディへとつなげる。
綺麗に決まってテホネス、ダウン。丸田のKO勝ちとなりました。

ちょっと攻め込まれ、苦しい部分も見えた試合でしたが、19歳、4戦目の選手としては
終始冷静で、狙いもしっかり持って闘っているように見えました。そこは感心させられました。
遠い距離からでも、いろいろと当てられるパンチがあり、攻めのパターンもある。魅力的な選手でした。

今後は抜群の体格を生かした、厳しい距離構築をベースにしたボクシングを実現してほしいところです。
その課題は、やはり体力強化と、それにまつわる転級のタイミングでしょうか。
将来、上を目指す際に、今と同じ階級のままというのは、非現実的でしょうしね。


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さて、五試合目はOPBFスーパーウェルター級。
IBFアジア王座獲得歴もあり、IBF世界上位に位置するサウスポー、細川貴之が、
OPBF11位、日本12位の大柄な強打者、大石豊を迎える防衛戦です。

両者向かい合うと、体格差がありあり。大石は元々、新人王戦の頃はミドル級。
その中でも大柄な部類でしたから、元々小柄な細川と比較すると、かなり大きく見えました。

序盤は細川が動いては外し、捌く展開。大石は「左は飾り物」という感じ。
今時こんな選手珍しい、と思うほど、序盤は見事に右一本。右ロングを振って追う。

しかし細川、動いて外すのはいいが、大柄な大石が身体ごと飛び込んでくる迫力に押され気味で、
肝心の攻め手が見つからない。右ジャブがいまいち決まらない。
左アッパーを覗かせるがヒットせず、威嚇の効果も薄い。元々攻めは及び腰の選手だから仕方ないのか。

大石は果敢に右で攻め、時折ヒットも。打ち終わり、露骨に前にのめるが、迫力で乗り切る。
4回終了後の採点は三者三様。正直、採点しようもない、と見える回もあり。

中盤も細川が外して軽打、大石がボディにも右を散らして攻勢、少し左も、という具合で一進一退。
8回終了後、採点は微妙。僅差でどちらか、或いはイーブンか?と思っていました。
その途中採点が、2-1で大石リード、と出る。

9回以降、ここでやっと細川が奮起。前戦で斉藤幸進丸の攻勢を止めた最大の武器、
左アッパーのレバーパンチを繰り出して攻める。加えて、懐に無理矢理入ってボディ連打。

追い詰められてからやっとこれか、いかにも「ほっそん」の試合やなー、と思って見ていたら、
10回にバッティングで細川カット、ドクターチェック。事情が変わってくる。
結局、11回、二度目のドクターチェックで負傷判定に。

判定は2-1で大石の攻勢、右のヒットを支持。新王者誕生となりました。
スーパーウェルター級は日本王者が野中悠樹、そしてOPBFがこの大石豊と、
日本、東洋の王者が共に井岡弘樹ジム所属ということになりました。珍しいでしょうね、こういうのは。

しかし、厳しいようですが、今日の大石豊の試合ぶりもまた、非常に今後が心配なものでした。
とにかく左は格好だけ、右を強振して前に、という闘いぶり。
体格を利した、果敢な、という形容もありましょうが、今回は体格差ゆえに細川貴之をある程度
抑え込めたとしても、相手が変われば、とてもこのボクシングでは...と言わざるを得ません。

王者として、攻略しにくいという点では、かなりのレベルにある細川を、この選手が陥落させるとは
ちょっと想像していませんでした。そういう意味では拍手したいと思いますが。


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ということで、タイトルマッチと称した試合を立て続けに見終えた感想としては、
残念ながら、その看板に見合わぬ試合がほとんどだった、というところです。

アジア地域に乱立する地域タイトルは、昔日の矢尾板貞雄、関光徳、村田英次郎らが保持した、
「アジア最強」のグレードを、とうに失っている。その現実はボクシングファンなら皆、知っています。

では、そこまでの知識、というのが不適当なら、「ボクシングそのものに、そこまでの関心を持たない」
個々の選手の応援団や後援者にとっては、どうなのでしょう。

普段、六島ジム主催で興行が行われる小規模会場、住吉区民センターより一回り以上広い、
住吉スポーツセンターは、二階席はさておき、一階のアリーナ部分はまずまずの入りに見えました。

しかし、閑散とした二階席から眺めていると、ボクシングとしてどう、というよりは、近しい存在の選手が、
いかに頑張るか、勝つか負けるか、というところにのみ、観客の意識が集中している印象でした。
そして「お目当て」の選手の試合が終わると、会場を去るか、移動して会場内で談笑するか、
或いは試合後挨拶回りをする選手と、記念撮影をする、というような光景が見られました。
リング上では他の選手が、オリエントやらアジアパシフィックの頂点を争っている、そのさなかに...。


まあ、皮肉はほどほどにして、WBOアジアパシフィック王座が「導入」されることは、
選手や関係者諸氏にとって、どういう意義があるのでしょう。
チケット販売に多少のプラスがあるのかもしれませんが、あまり大きな違いでもないように感じます。
そして、いざ実際に、今回見たような内容の試合を、タイトルマッチとして見た観客が、どのような感想を持つものか。
それはボクシング「業界」にとって、プラスの影響ばかりではないように思います。

加えて、国内上位対決を経ない「裏ルート」によるWBO王座挑戦が増える、という批判もあります。
国内上位での厳しい試合を経て、或いはそこに参戦するために、このタイトルを「活用」するのでなく、
そういう意志がまったく感じられない陣営による「利用」は、出来ることなら見たくありません。

しかし現状は、大晦日の世界戦興行に組み込まれた、伊藤vs渡邊戦のような上位対決が実現する程度です。
これもまた、普通に見れば、単に上位ランカー対決に過ぎない、とも言えますが。


ボクシングを会場で観戦するたびに、選手の応援、後援といった、近しい観客の比率が、
ボクシング全体に関心を持つファンと反比例して増えている、と強く感じます。
その傾向の上に、新タイトルが導入されることは、ある一定の枠の中では、興行事情にかなうことかもしれません。
チケット販売の難しさ、その現状は、想像以上のものなのだと思います。

しかしこれは、結局のところ、究極のその場しのぎ、というしかありません。
他に業界全体で考えないといけないことが、いくらでもありそうなものですが、
そういう方向へのまとまりは見られず、個々の事情を満たすものがあれば、それに飛びつく、
という流れへと収斂されていくのみ、と見えます。まあ、いかにもという感じではありますが。


試合内容については、酷評したものもありますが、選手個々はそれぞれに、
持てる力を振り絞って闘っていました。その事実を否定するものではありません。
しかし、彼らの健闘に対し、光を当てる方法は、もう少し違ったものであるべきではないのか。
そんなことを思った、長丁場の観戦でした。


コメント (2)
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