ということで昨日は住吉スポーツセンターで観戦してきました。
OPBF2試合に加え、WBOアジア2試合に、WBCユースがひとつ、
パンフレットには「五大タイトルマッチ」と謳われていた興行です。
先日の神戸、OPBF4試合を越える数のタイトル戦が見られる、わーい、という気持ちで
会場に足を運んだわけではありません。
タイトルというかお題目はさておいて、ランカー同士の試合や、重量級の強い豪州勢への挑戦や、
世界挑戦経験者同士の対戦など、カードとしてそれなりに見所はある試合が多い、という
あくまで「中身重視」での選択をしたつもりでした。
で、見終えて思うのは、見過ごせることと、そうでないことがあるな、ということです。
各試合の経過と雑感、とりとめもないですが、毎度の通り。
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第一試合、日本ライトフライ級11位、木村翔と、日本フライ級12位、坂本真宏の対戦。
これがWBOアジアパシフィックのフライ級タイトルマッチ、12回戦として行われました。
両者、初回から正対して打ち合い続ける。積極果敢、しかし共に甘い防御。
展開を変えたり、ペースを上げ下げしたり、という変化はほとんど見られず。
木村は序盤からハンドスピードでまさり、ヒットを重ねるが、パンチの威力に欠ける。
対する坂本は、ここ数試合と同じく、試合開始の時点で動きが重い。
ひとしきり打たれたあと、重いパンチで反撃する、いつものパターンに。
パンチは重いが切れが無い。防御に回ると、動きがなく、ガードを絞って凌ぐ以外、手立てがない。
場内は坂本のヒットのたびに、その威力を見て歓声を上げましたが、
残念ながら木村が目に見えて効いたり、止まったりせずに、連打で攻め続けている以上、
目に見えてもいないダメージを過大に評価するわけにはいかず、
そうなると単にヒット数の比較が基準になる。それは明白に木村の方が上でした。
しかしこの両者、日本ランクの数字通り、闘い方に幅がなく、相手の良さを全部引き受け合う闘いぶりで、
これは到底、タイトルを冠するレベルには遠い段階の選手だ、と言わざるを得ませんでした。
ことに終盤。常に先手を取られて打たれ続ける坂本。そこそこ速いが単調なせいで、手が途切れると打たれる木村。
双方が疲労した状態で振り回したパンチが、まともにヒットして、それぞれにぐらついた場面などは、
ボクシングのスリルではなく、キャリアの浅いボクサー同士が、分不相応なラウンド数を闘わされることが
どれほど危険か、ということを、より如実に表現し、露呈していました。
タイトルやお題目関係なく、若手同士の好カードだから良い、という「見過ごし」方は、
少なくともこの若手対決には当てはまらないと、否応無しに思い知らされた一戦でした。
双方共に、終始果敢に、闘志に満ちた闘いを貫いただけに、余計にそれを痛感させられたというか。
判定は2-0で木村を支持。この2者の木村支持のスコアは私のそれと一致していました。
116-112、ラウンド数では8対4です。まずは妥当な印象で、そこは安堵しました。
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第2試合は、向井寛史vsインタノン・シスチャモアン。世界挑戦者同士の対戦。
体格面で厳しいという判断か、スーパーフライ級に戻した向井。興味深いカードでした。
これもまた、WBOアジアパシフィックのタイトルマッチでした。
インタノンは後のIBF王者アンカハス、前WBA王者河野に敗れている選手ですが、
アンカハスを一度はぐらつかせたり、河野戦では粘り強いところを見せたこともあり、
簡単にはいかないかも、と思っていましたが、試合が始まると、向井が圧倒しました。
初回から向井の右リード、ジャブが冴える。力みなく飛ぶ後続の左も鋭い。
インタノンを寄せ付けない勢い。
2回も右のヒットが重なる。向井の左アッパーがレバーに入り、インタノン倒れる。
立ったが向井、即座に詰め、右フックを叩くと二度目のダウン。インタノン立てず、KO。
向井は最近の好調ぶりを、115ポンドに落としても維持していました。
インタノンの調子がどう、闘志がどう、という話以前の問題で、相手がどうであったとて、
この向井寛史の好調ぶりからすれば、いずれ同じような結果になっていたことでしょう。
向井は浅いキャリアで厳しい成り立ちのタイトルマッチを数多く闘い、敗れてきたことで
本来持っているセンスや技術を過小評価されているきらいがありますが、
私は「この子は、本当はもっと、出来る子や」とずっと思っておりました(^^)
論議を呼んでいる最中のものではありますが、やっとタイトルマッチと呼ばれる試合で、
良い内容と結果を示したと思います。
出来れば、この勝利をきっかけに、国内にも強豪の多い上位陣との対戦を実現し、
さらに評価を高めるようなキャリア構築を臨みたいものです。
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4回戦と6回戦が挟まったあと、三つ目のタイトルマッチはOPBFミドル級。
王者ドワイト・リッチーと、挑戦者の太尊康輝の対戦。
西田光をポイントアウトしたリッチー、巧いがパンチが無いという話でしたが、
その試合ぶりはまさしく、ポイント収集に専念する、という風。
長身のサウスポー、太尊は強引に攻め込まれるのが嫌なはずだが、
突き放すための右ジャブが少なく、左狙いばかりで単調。
これならリッチーは、右リードで入って、左返して、左サイドに回ればいいようなものだが、
最後の段階で左に回らず、まっすぐ下がるものだから、太尊の左が飛んでくる。
どうもサイドステップが苦手というか下手で、前後の動きが中心。
巧いというより、やれることの限界の中でポイントを拾う、という選手のようでした。
序盤から両者、攻防共に手立てに乏しい。
リッチーは右から入るが腰高で、踏み込みも弱い。
攻めには迫力が無く、精度にも欠け、ミスしてはクリンチ、の繰り返し。
太尊も左狙うあまり、手数が出ない。
5回、途中採点で2-0太尊リードと聞いたからか、リッチー少し出る。太尊左合わせる。
6回、攻め込むのでなく足を使い始めたリッチーが、遠くから右を伸ばす。太尊手数減る。
正直、経過らしい経過もない、内容の薄いラウンドもあったが、8回太尊の左ヒット、リッチーがダウン。
左周りのサイドステップがないところを追われて打たれたリッチー。ダメージはさほどではない?
さらにリードを広げられた9回以降、リッチーはこつこつ右当ててはクリンチ、という感じ。
これはこれで、彼なりに挽回を図っていると見るべきなのか。
11回、太尊は疲れからか、徐々にスローダウン。最終回、身体が伸びたところにリッチーの右。
やっとそれなりに迫力のある攻めを見せたリッチーだが、もう遅かった。
採点はダウンもあって3-0で太尊。しかし内容的に、充実した試合とは言い難い。
リッチーの「貧打」「拙攻」にも救われた、という印象。
何より手数をさほど出したでもなく、全体的に省エネボクシングと見えたにもかかわらず、
終盤の失速、最終回の劣勢は反省材料。決め手のある相手なら、どうなっていたかわからない試合と見えました。
以下、その2へ続きます。