さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

余計なものは見過ごせば済む、と思っていたが 住吉5大タイトル戦雑感 その1

2016-11-24 09:27:54 | 関西ボクシング




ということで昨日は住吉スポーツセンターで観戦してきました。
OPBF2試合に加え、WBOアジア2試合に、WBCユースがひとつ、
パンフレットには「五大タイトルマッチ」と謳われていた興行です。

先日の神戸、OPBF4試合を越える数のタイトル戦が見られる、わーい、という気持ちで
会場に足を運んだわけではありません。
タイトルというかお題目はさておいて、ランカー同士の試合や、重量級の強い豪州勢への挑戦や、
世界挑戦経験者同士の対戦など、カードとしてそれなりに見所はある試合が多い、という
あくまで「中身重視」での選択をしたつもりでした。

で、見終えて思うのは、見過ごせることと、そうでないことがあるな、ということです。
各試合の経過と雑感、とりとめもないですが、毎度の通り。


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第一試合、日本ライトフライ級11位、木村翔と、日本フライ級12位、坂本真宏の対戦。
これがWBOアジアパシフィックのフライ級タイトルマッチ、12回戦として行われました。

両者、初回から正対して打ち合い続ける。積極果敢、しかし共に甘い防御。
展開を変えたり、ペースを上げ下げしたり、という変化はほとんど見られず。

木村は序盤からハンドスピードでまさり、ヒットを重ねるが、パンチの威力に欠ける。
対する坂本は、ここ数試合と同じく、試合開始の時点で動きが重い。
ひとしきり打たれたあと、重いパンチで反撃する、いつものパターンに。
パンチは重いが切れが無い。防御に回ると、動きがなく、ガードを絞って凌ぐ以外、手立てがない。

場内は坂本のヒットのたびに、その威力を見て歓声を上げましたが、
残念ながら木村が目に見えて効いたり、止まったりせずに、連打で攻め続けている以上、
目に見えてもいないダメージを過大に評価するわけにはいかず、
そうなると単にヒット数の比較が基準になる。それは明白に木村の方が上でした。


しかしこの両者、日本ランクの数字通り、闘い方に幅がなく、相手の良さを全部引き受け合う闘いぶりで、
これは到底、タイトルを冠するレベルには遠い段階の選手だ、と言わざるを得ませんでした。
ことに終盤。常に先手を取られて打たれ続ける坂本。そこそこ速いが単調なせいで、手が途切れると打たれる木村。
双方が疲労した状態で振り回したパンチが、まともにヒットして、それぞれにぐらついた場面などは、
ボクシングのスリルではなく、キャリアの浅いボクサー同士が、分不相応なラウンド数を闘わされることが
どれほど危険か、ということを、より如実に表現し、露呈していました。

タイトルやお題目関係なく、若手同士の好カードだから良い、という「見過ごし」方は、
少なくともこの若手対決には当てはまらないと、否応無しに思い知らされた一戦でした。
双方共に、終始果敢に、闘志に満ちた闘いを貫いただけに、余計にそれを痛感させられたというか。

判定は2-0で木村を支持。この2者の木村支持のスコアは私のそれと一致していました。
116-112、ラウンド数では8対4です。まずは妥当な印象で、そこは安堵しました。


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第2試合は、向井寛史vsインタノン・シスチャモアン。世界挑戦者同士の対戦。
体格面で厳しいという判断か、スーパーフライ級に戻した向井。興味深いカードでした。
これもまた、WBOアジアパシフィックのタイトルマッチでした。

インタノンは後のIBF王者アンカハス、前WBA王者河野に敗れている選手ですが、
アンカハスを一度はぐらつかせたり、河野戦では粘り強いところを見せたこともあり、
簡単にはいかないかも、と思っていましたが、試合が始まると、向井が圧倒しました。

初回から向井の右リード、ジャブが冴える。力みなく飛ぶ後続の左も鋭い。
インタノンを寄せ付けない勢い。
2回も右のヒットが重なる。向井の左アッパーがレバーに入り、インタノン倒れる。
立ったが向井、即座に詰め、右フックを叩くと二度目のダウン。インタノン立てず、KO。

向井は最近の好調ぶりを、115ポンドに落としても維持していました。
インタノンの調子がどう、闘志がどう、という話以前の問題で、相手がどうであったとて、
この向井寛史の好調ぶりからすれば、いずれ同じような結果になっていたことでしょう。

向井は浅いキャリアで厳しい成り立ちのタイトルマッチを数多く闘い、敗れてきたことで
本来持っているセンスや技術を過小評価されているきらいがありますが、
私は「この子は、本当はもっと、出来る子や」とずっと思っておりました(^^)

論議を呼んでいる最中のものではありますが、やっとタイトルマッチと呼ばれる試合で、
良い内容と結果を示したと思います。
出来れば、この勝利をきっかけに、国内にも強豪の多い上位陣との対戦を実現し、
さらに評価を高めるようなキャリア構築を臨みたいものです。


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4回戦と6回戦が挟まったあと、三つ目のタイトルマッチはOPBFミドル級。
王者ドワイト・リッチーと、挑戦者の太尊康輝の対戦。

西田光をポイントアウトしたリッチー、巧いがパンチが無いという話でしたが、
その試合ぶりはまさしく、ポイント収集に専念する、という風。

長身のサウスポー、太尊は強引に攻め込まれるのが嫌なはずだが、
突き放すための右ジャブが少なく、左狙いばかりで単調。

これならリッチーは、右リードで入って、左返して、左サイドに回ればいいようなものだが、
最後の段階で左に回らず、まっすぐ下がるものだから、太尊の左が飛んでくる。
どうもサイドステップが苦手というか下手で、前後の動きが中心。
巧いというより、やれることの限界の中でポイントを拾う、という選手のようでした。

序盤から両者、攻防共に手立てに乏しい。
リッチーは右から入るが腰高で、踏み込みも弱い。
攻めには迫力が無く、精度にも欠け、ミスしてはクリンチ、の繰り返し。
太尊も左狙うあまり、手数が出ない。

5回、途中採点で2-0太尊リードと聞いたからか、リッチー少し出る。太尊左合わせる。
6回、攻め込むのでなく足を使い始めたリッチーが、遠くから右を伸ばす。太尊手数減る。

正直、経過らしい経過もない、内容の薄いラウンドもあったが、8回太尊の左ヒット、リッチーがダウン。
左周りのサイドステップがないところを追われて打たれたリッチー。ダメージはさほどではない?

さらにリードを広げられた9回以降、リッチーはこつこつ右当ててはクリンチ、という感じ。
これはこれで、彼なりに挽回を図っていると見るべきなのか。
11回、太尊は疲れからか、徐々にスローダウン。最終回、身体が伸びたところにリッチーの右。
やっとそれなりに迫力のある攻めを見せたリッチーだが、もう遅かった。

採点はダウンもあって3-0で太尊。しかし内容的に、充実した試合とは言い難い。
リッチーの「貧打」「拙攻」にも救われた、という印象。
何より手数をさほど出したでもなく、全体的に省エネボクシングと見えたにもかかわらず、
終盤の失速、最終回の劣勢は反省材料。決め手のある相手なら、どうなっていたかわからない試合と見えました。


以下、その2へ続きます。
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (きっかけは町田)
2016-11-24 14:29:35
今回も楽しく読ませて頂きました。いつも楽しみにしてます。

坂本はまた序盤重かったですか…
パワーはあるので期待しているのですが…

確かに試合が決まった時、もう12回戦かよ!と思いましたが、この敗戦を期に、再度しっかり立て直してほしいですね。
坂本は課題がいい意味でよく見えていると思いますので、大丈夫でしょう。

向井は僕ももっと評価していいと思っています。リングサイドで見たりしていると好調時は素晴らしいですしね。
衰えないうちに、日本タイトル挑戦を期待します。

タイソン君の勝ちは驚きました(笑)リッチー、私は見ていないですが、イメージ的にポイントかっさらわれてなにもできずフルマーク判定負けかと予想していましたが。
まずは国内の強豪の中で1番にならないと、ですね。日本選手とやれない場合は、オーストラリア選手を期待します。

武市晃輔さんが付いているみたいなんで、大丈夫でしょう。
僕は武市さん、大好きです(笑)
あの人は頭良いですよ。
返信する
Unknown (アマ関係者)
2016-11-24 20:13:09
坂本君、アマの最後のほうは割と足使ってスピードあるワンツーで倒してた気がしますが、最近は動き重いですね

ダメージたまってないか心配です。
返信する
Unknown (R35ファン)
2016-11-24 21:31:24
こんばんは。私も昨日観戦しましたが見に行って良かったとは思えないものでした。第一試合はまさにそれで本来六回戦レベルの選手にいきなり12回はあまりに厳しいです。どちらが勝つにせよ今後の防衛戦でどんな相手とやるのか、全く考えてないのでしょうね。
向井さんの試合は会心の出来だったとはいえ、あまりにあっさり終わったのと相手がメチャ弱かった、と向井さんがコメントしたのでやはり割引いて考えてしまいます。こちらは今後の防衛戦を見守りたいと思います。
タイソン君の相手は西田君をほぼ完封したのでもっと強い、上手いイメージでしたが、大したことなく見えました。あれだけ大きい相手がじっくり来るのは初めてだったのでしょうか。これも今後の防衛戦を見守ります。
こんな感じで昨日は今後を見守るしか言えない感じのものでしたね。おそらく次さうぽんさんが論評してくださると思いますが特にメインが東洋タイトルのレベル低下を如実に表すものでしたので大変がっかりしました。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2016-11-25 10:56:46
>きっかけは町田さん

読んでいただいてありがとうございます。坂本は打たれたりする前から、試合始まった時点でいつも重いですね。思うに任せない、という風にも見えます。向井は負けた試合でも良いところが見えますし、勝った試合では実に良い、と思わせる選手ですから、これから国内上位の誰かと闘っていってほしいです。115ポンドなら体格的にもベストでしょうし。太尊は勝ったものの、いろいろ不安も見えました。相手の攻めがもっと強引だったら、危なかったかもしれません。そうなればこちらももっと攻め手があったのでしょうが。武市晃輔さんは現役時代、ファンでした。センスのある、良いボクサーやなーと思って期待していた一人です。

>アマ関係者さん

プロデビュー戦はもっときびきび動いて、遅いとは感じなかったですが、新人王トーナメントを勝ち進むにつれて、そういう印象がありましたね。ダメージの蓄積か、何か負傷を抱えているのか(前の試合ではそういう話でしたが)、何しろ打たれてもいないうちから表情も辛そうに見えますし、多分何かあるように思います。今回の終盤などは見ていて非常に辛いものがありました。しばらく休養し、体調を整えてほしいと思います。

>R35ファンさん

観戦お疲れ様でした。最初の試合は8回戦までで良かったかもですね。今後については、勝った木村もまだ厳しい感じです。向井の相手は確かに何も出来ないまま終わりました。向井については今後の相手次第で、良い評価が得られることを期待しますが。国内なら誰相手でも、良い試合すると思うんですけどね。
ドワイト・リッチーは、想像の範囲内で一番下、という感じでしたかね。太尊の体格、サウスポーという利点が生きた試合だったと見るべきでしょうか。メインというか5試合目は、別記事書きましたが、あの試合内容はないなぁ、としか言えないですね。あれでタイトルマッチと言われても...という。

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