ということで、WOWOWオンデマンドをお昼前から見ておりました。
せっかくの生中継ですが、前座3試合がいずれも長く、さすがに疲れてくるパターン。
もったいないことですが、あれこれあって中座もしつつ。メインの際はそういうわけにいかないですので。
ということで今年最高の好カードと言われた一戦でしたが、私はコバレフが勝つんだろうなあと思っていました。
単に当てる巧さ、外す巧さでいえば、天性のアンドレ・ウォードに対し、丁寧さのセルゲイ・コバレフという対比。
その巧さはそれぞれに趣が違えど、ほぼ互角であろうと。
ならば、パワーでまさる方、6~7割の力で探り打ちをしてもなお、強打といえる力があるコバレフが有利だろうと。
試合が長いときの雑さ、心身の構えの「強度」に少し波があるところが不安なれど、
ウォードがそれを乗り越えて、過半数のポイントを集めることは難しい。
そんな予想をしていました。
私の見た経過と採点は以下の通り。簡単に。
初回 コバレフ、ジャブ相打ちで下がらせる。またジャブ、ウォードの目のあたりに。最後もう一発。
当てる巧さは互角だが威力が違う。コバレフ。
2回 ウォードは力を込めて打たないと止められない。動いて外したいが難しそう。
右打ちに行ってコバレフの右カウンターでダウン。コバレフ10-8。
3回 ウォード足掴んで押し込む。こんなことでもしてコバレフを乱そうとしている。
ジャブ一発だけ、懐に入るが手は出さない。攪乱か。コバレフワンツーで脅かす。コバレフ。
4回 ウォードクリンチ、ホールドしてボディ叩く。コバレフ右アッパーや右ショートで迎え打ち。
ウォード左フック強振。依然として苦しいが。ややコバレフ。
5回 ウォードジャブ、右ダイレクト。コバレフも左ジャブ、右合わせる。ウォード外して動く。
コバレフ手を止め、見てしまうとウォードに余裕が出る。手を出しながら見たい。ややウォードか。
6回 ウォード足抱えて揉み合いに持ち込む。相撲か。みっともないことこの上ない。
コバレフ鋭い右カウンターを数回覗かせる。ボディへジャブ、前進。コバレフがペース支配したと見る。
7回 ウォード左ジャブ。もう一発。ジャブのヒットで歓声。苦戦、苦境の証明でもあるが。
コバレフ最後、スイッチして右サイドへ出ながら左ジャブ。ウォード。
8回 ウォード揉み合いからボディ攻める。コバレフ少しペースダウン、クリンチの際も抑えきれない。ややウォード。
9回 ウォードが上手くボディへジャブ当てる。揉み合い増える。両者構え崩して誘い合う。
コバレフワンツー見せるがヒットせず。ウォード。
10回 ジャブの応酬、右相打ち。ウォード、アピールのため右手回すがそこにコバレフの左。ややコバレフ。
11回 ウォード左フック。コバレフ右、前に出て追う。もつれてスリップダウン。コバレフ疲れている。
ウォード左ヒット、ウォードの回。
12回 ジャブ、ボディの応酬。ボディの効果でウォードか。コバレフも同じだけお返しはしていたが。
ということで、私の採点は、ココココ ウコウウ ウコウウ で6対6。2回のダウンの分だけコバレフ。
114-113、という数字になりました。
試合内容自体は、コバレフの強さによって緊張感が保たれてはいた、と思います。
コバレフは、緻密さやペース維持の部分で若干粗を見せましたが、あの体格と強打を持つ選手としては、
かなり丁寧に闘えている方だと思いますし、今回もその良さは見られました。
ウォードについては、それ単品では悪いけど見てられない、というくらい、魅力に乏しいボクサーです。
ただ、技術レベルは抜きん出ているので、強いのと当たったときだけは見てみよう、という位置づけでした。
しかし今回、序盤から倒され、その打開策にも「何をしてるんや、みっともない」と思うような場面もあり、
しかもそれが奏功したとは思えなかった。にも関わらず勝者は彼でした。
では「こんな判定、おかしいやないか!」と思っているのかというと、実はそうでもなかったりします。
これがまた実にややこしいところなんですが、競った回が逆になれば、あり得る採点なんだろう、と
同時に思っていたりもするわけなんですね。
試合後、採点発表までの間、自分の採点を見て、えらくウォードに甘いな、と思いました。
印象としてははっきりとコバレフだったので、自分としては、かなりの「オマケ採点」でした。
しかし実際は、さらに競った回がウォードへと流れた採点だったようです。
正直、結果聞いてびっくりしました。
多分、4回や10回あたりも、ウォードに振ったジャッジがいたんでしょうね。最終回は当然ながら、でしょうか。
その昔、ハグラー対レナード戦を見て以降、何度もこういう採点を見てきたような気がします。
結局、現行の採点基準というものは、勝者の可能性、多様性を確保しようとするあまりに、
競った試合展開における「強者」の強さを、必ずしも支持しない傾向にあるのだと。
あのハグラー、レナード戦を、ボクシング界全体が、ハグラー的なものに背を向け、
レナード的なものに靡いていった分岐点なのだとすれば、今回のウォードもまた、その極地にいる一人なのでしょう。
もっとも、今日のウォードのボクシングは、その内容において、昔日のレナードのそれとは、比較にもなりませんが。
採点自体は、そういうことで、アタマではなんとなく「こういうこともあるのかな」くらいに思ってはいます。
しかし、せっかくの大試合、好カードが、なんともつまらんことになってしまったなあ、という残念な気持ちもあります。
細かいことは全部うっちゃって、これはやっぱり、コバレフの勝ちにしたほうが、色々と収まりが良いというか、
気分としても良いように思うんですよね。どないなもんですかねえ。