さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

「因縁決着」は脱モラトリアムへの過程か、否か 井岡一翔、レベコをKOで返り討ち

2016-01-03 00:10:52 | 井岡一翔




やれ今度は相手に全裸計量を強いたとか、グローブの選択で揉めたとか、
まあどうでもいいような話題が試合前から報じられてはいたものの、
そもそも前回の判定も含めて、大した「因縁」があるとも思わなかった組み合わせですが、
一応、WBAが再戦指令を出したことを受けて(これ幸いと?)
さも大きな試合であるかのように喧伝された井岡一翔とファン・カルロス・レベコの再戦は
前回とは違ってノックアウトで終わり、因縁決着という形になりました。


展開自体は、体格やリーチでまさり、やや遠目の位置を取れるときの井岡一翔が見せる、
落ち着いて距離を構築し、捌いていく展開が基本でした。
レベコは前回、不当な判定で負けた、という気持ちでいるらしく、果敢に攻めて出ましたが、
序盤などはまさに井岡の思う壺、という感じで迎え撃たれていました。

実はこの選手こそ、出てくる相手の力を左に回って外し、左ジャブ、フックの上下を当てる、
という流れが一番の持ち味のはずが、井岡が無理に出ないので自分から行かざるを得ず、
そこで悪い展開にはまってしまった、というのが前回の試合だったように思っていました。

今回も流れはほぼ同じ。3回には少しヒットも取ったかと思ったが、ボディ攻撃を受け失速。
ただ、食事改善による体調の良さをアピールして、パワーや体格で前回以上にまさった井岡が
攻めに傾き、前に出る頻度が増した中盤は、レベコにも良い回りからの好打が増えました。
中盤までは、レベコが抑えた回もけっこうあったように見えました。

しかし8回あたりから、井岡のパワーが試合の流れを明白に決めて行きます。
レベコは懸命に粘るも、目に見えて失速し打ち込まれ、11回右ボディで倒れ、立てず。

世界フライ級戦線において、頂点を争うところまではいかずとも、
長きに渡って上位に位置してきた技巧派、レベコに連勝した井岡一翔の実力は、
それに取って代わるレベルにある、それを実証した一戦となりました。


しかし、よく言われる井上尚弥や他の選手との比較以前の問題として、この試合をTVで見ていると、
とてもじゃないが諸手を挙げて万歳という気持ちにはなれませんでした。

レベコの好打の大半を無視し、井岡の軽打があれば声を張り上げる実況、
その流れに棹さす意志が皆無では無いにせよ、薄弱な内藤大助と、
もはや聞き流す以外、こちらとしてはお手上げな鬼塚勝也による解説が、
井岡陣営の言いなり、良いなり、という感じのストーリーに沿った言葉を堆く積み上げていく、
その様は毎度の通り、ひたすら空々しくて不快です。

試合後のインタビューは聞かず、TV東京系の方に切り替えたのですが、
(ちょうど、田口良一の試合が始まったところでした)新聞報道で試合後や翌日のコメントを見ると、
真に受けるとしたら、是非どうぞ、そのとおりにやってくださいませ、と思うような話が散見されます。
こういう話通りになるのなら、数年前から続く井岡一翔の「モラトリアム」の時がやっと終わり、
彼の闘いぶりを、余計なことを頭に入れずに見られるかもしれません。それは大変嬉しいことです。

今回、小柄なレベコとの比較のせいだったかもしれませんが、
体格もパワーも、徐々にフライ級に馴染んできた、出来上がってきた、という印象でもありました。
単に迎え撃ち中心だけでなく、押しの強さも出せるようになってはいました。


もし本人や陣営が、相性的には悪くはない?ような気もするファン・フランシスコ・エストラーダとの、
真の「WBAフライ級タイトルマッチ」を実現させる意志を持ち、自信を深めるきっかけとなるなら、
今回の「因縁決着」には、とても大きな意味があったと言えるでしょう。

しかし、結局何も変わらず、レベコ攻略をもってフライ級(というより、WBA単体ですが)を
「制覇」したという前提で、それに差し挟まれる疑義を排除した空間に居続ける、
従来通りの道行きが続くなら、結局は大した話でもなかったな、と言っておしまい、ということになります。


今年は、いよいよその分岐点が、はっきり見えてくる一年になる...のでしょうか。
なんだかんだ言って、ナニワのスカ屁兄弟とは、ボクサーとしての技量力量がずいぶん違う選手ですから、
いつまでも同じような「所業」をしていないで、まっとうな道に戻ってきてもらいたい、という願いは、
ほんの僅かであっても、心中から消えてはいません。

今年こそは、井岡一翔の「脱モラトリアム」が実現することを、年頭の希望として挙げたいと思います。
新年早々の儚い願い事で終わってしまうのかもしれませんが。


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高山勝成の試合は、若干のディレイで放送されたようでした。

えらく大柄なホセ・アルグメドの頑強さとリーチ、そして頭突きに苦しみ、
速く動いて捌こうにも長いパンチを外しきれず、攻めてもダメージを与えられず。
しかもリターンで来るパンチの重さに脅かされて、自分も力を入れて打つ流れに巻き込まれ、
本来ならまさるはずの、リズムやテンポを落として、相手に合わせてしまい、また劣勢に、という
何もかもが悪く回る流れの中、終始苦闘が続きました。

負傷判定になり、普通なら負けだろうけど...と思っていたら採点が割れていたのには
驚きも半ば程度、というところでしたが、やはり負けは負けでした。

いずれにせよ、試合の度に切ってしまうことも含め、色々な意味で限界が来ているのかも、と思います。
前回の原隆二戦からの調整期間が短く、スパーを一切せずに、傷の治癒も完全でないまま試合に出た
今回の判断からして、どんな事情か知りませんが、正常な判断であるとは思えません。

人もあろうにあの高山勝成に対して、失礼千万を承知で言いますが、
このような周辺事情の元でリングに上がるべきではなかった、と感じました。

この試合、相手がどう、試合展開がどう、という話ではなかった、と思います。
仮にもタイトルマッチと称した試合でありながら、見ていて、試合に集中できませんでした。
そして、結果が負けであったことに対しても、悔しいよりも安堵の気持ちが先でした。

そんなんじゃまずいでしょう、という感じです。
こういうのはもう、勘弁してもらいたい、というところですね。


コメント (7)
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