さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

良さが半分も出ていない 田中恒成、劣勢を一撃で精算し初防衛

2016-01-02 10:30:40 | 中部ボクシング



中部地方在住の友人の厚意により、田中恒成初防衛戦の映像を見ることが出来ました。

田中恒成は攻防ともに抜群のスピードが持ち味でしょうが、
立ち上がりから速いパンチを当てて行く反面、リーチが長くパンチ力も感じる
ビック・サルダールのジャブを端緒とした攻撃をかわせず、ヒットを喫する、悪いスタート。

スピードでは勝っているように見えるにも関わらず、威力はあるが単発かワンツーで止まる
サルダールの攻撃を、思うように外せない。
2回にはけっこう力入れた右を打たれ、後退。
3回、挽回を図るが、ある程度打たれることを覚悟の上で出る、という風になってきて、
この時点での構図は、あらゆる面で「劣勢」そのものでした。

田中は時折、単発ながら左のボディ打ちをきれいに決めてはいました。
これまで、強打者であり、なおかつ世界的強豪との対戦がないサルダールは、
強打を決め手に勝つ試合が多く、劣勢を乗り越えて勝つという試合をあまり経験していない。
従って、受け身になると経験不足、耐久力不足を露呈する可能性はある。

以前、プレビューめいた記事を書いたとき、いくつか動画を見てそんな印象でしたが、
いくらなんでもこの試合内容で、数少ないボディ打ちが決まった程度では、
そういうところに相手を追い込めるとは、到底思えない。

5回にはまた出たところに右クロスを被せられ、ダウン。
いよいよ苦しい、と見えましたが、田中は6回、セコンドに焦らず小さく打って攻めろと
指示を受け、ガードを締めて前に出て、こつこつと上下の連打を当てて行く。

これに対するサルダールの対応が、言っちゃなんですが稚拙というが、知恵が無いというか。
ここまで優勢にありながら、手の内見え見えの田中の前進に対し、ジャブで止めるでもない、
足を使って田中を泳がせる工夫もない、漫然と受け身になりつつ、単発の強打を飛ばすが、
逆にボディを再三打たれる。

減量に苦しんだ田中は、動きが重く、防御面では思うに任せぬ様子で再三打たれている反面、
その分、いざ押し込んで攻める段になれば、パンチの重さでは負けていませんでした。
右アッパーから左フックのボディ打ちが決まると、サルダール崩れ落ち、立てず。
田中恒成、大逆転のKO勝ち、しかもボディ一発でのKOという、軽量級らしからぬ倒し方でした。


本人は試合後、思ったより元気な様子で、しかしKOまでの過程を「完全に負けてた」と自省していました。
彼の言う通り、ポイントで劣勢、ダウンも喫した試合内容は、減量苦の影響もあって、これまで見た
田中恒成の試合の中でも、一番良さが出ていないと感じさせられるものでした。

しかし僅か6戦目の若い選手が、色んなタイプの相手と闘い、思うに任せぬ展開があることは、
よくよく考えれば当然で、この試合を世界タイトル云々抜きで見れば、田中恒成は上位クラスの
強打を持つ難敵に苦しめられながらも、腹の据わった闘いぶりで逆転し、貴重な経験を積んだ、と
そういう目で見られる試合でもあったはずです。前回のフリアン・イエドラス戦とほぼ同様に。

しかし、事ここに至っては、彼のキャリア構築を批判的に語っても遅いでしょうし、仕方も無いでしょう。
今後は彼の手にした肩書きを維持するためでなく、ボクサー田中恒成の内実がいかなるものか、
という現実を踏まえて、適切な道を進んで欲しいと思います。


とりあえず、誰もが思うことでしょうが、まずは転級でしょうね。待ったなし、という段階でしょう。
今回の試合は、正直、見ていて辛いものがありました。
とはいえ、ライトフライ級の現状、タイトルホルダーの「分布」を見た上で、
田中や陣営の周辺事情を考えると、色々難しそうではあります。

それはまあ、何も焦ってすぐ世界、という話にしなければいいだけのことなんですが、
もう、そういうわけにもいかなくなっている、のかもしれません。
それが転級を阻む、先送りする決断に繋がる、というのも、いかにもありそうな話に思えます。
そういうことになってほしくはないですが。


コメント (4)
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