非国民通信

ノーモア・コイズミ

出世する資質はあるんだと思う

2014-04-17 23:36:58 | 社会

小保方氏に引き抜き話 弁護士が明かす…事務所には激励手紙やメール殺到(デイリースポーツ)

 STAP細胞の論文問題で、捏造・改ざんなど研究不正の指摘を受けている理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)に対し、外部の学術研究者から複数の“ヘッドハンティング”の誘いが入っていることが14日、分かった。

 代理人の三木秀夫弁護士によると、理研と研究不正問題で意見対立している小保方氏に対し、研究資金・設備などの提供を申し出て「うちで研究をやらないか」との誘いだという。勧誘の主は科学者や、別ジャンルの学者もいるという。

 小保方氏は9日の会見で「私に研究者としての道が残されているなら」とSTAP細胞の研究続行を強く希望し「研究を前に進めてくれる人がいるなら協力していきたい」と語っていた。

 

 色々とネタにされることも多い小保方氏ですが(私自身が何度も引き合いに出したところでもありますし)、各種メディアは元より小保方氏叩きもしくは擁護で売名に走っているとしか言い様がない芸能人なんかの姿を見ると、まぁ同情しないでもありません。この人のせい、もしくはおかげで話題の人の座から転落した佐村河内氏あたりは今ごろ何を思っているのでしょう? 助かったと感じているのか、それとももう少し「時の人」でいたかったと惜しんでいるのか、その辺が興味深くもあります。

 「STAP細胞は、あります」――そう小保方氏は先日の会見で報道陣に訴えかけました。小保方氏の立ち位置をよく表わしている言葉かな、と思います。問われているのはSTAP細胞の実在性ではなく、その実在性を主張する上での手続き上の問題であり、STAP細胞の存在を第三者にも再現可能な形で不正や隠匿なしに証明できているか、です。そうした理研(及び問題提起したヨソの研究者)からの問題視に対し小保方氏が応えていたとは言いがたい、むしろ問題をすり替えようとしているというのが私の率直な感想であり、この点で小保方氏に対して私は不信感を抱いています。

 一方で小保方氏を擁護・応援する人の数は、批判もしくは中傷する人の数を上回る模様です。まぁ、科学者ではなく一般の観点ではそんなものなのかな、という気がしますね。真偽の程は不明ながら「ヘッドハンティング」の動きもあるとのこと、実際に少なからぬ引き合いはあるのではないでしょうか。純粋に研究が目的であるならば小保方氏の手法はダメ出しを食らうとしても、民間企業レベルで話題を作るなり商業的な成功を目指すなりといった範疇では、必要十分なものを持っているのだろうと思います。

 とにかく小保方氏の論文は不適切な箇所が目立つとのことで、なぜこのような人が理研のユニットリーダーという、多くの研究者が望んでも容易に付くことのできないポストを手に入れたのか云々と疑問を呈する人もいるようです。その辺はまぁ、「コミュニケーション能力が高かったのだろう」と考えるほかありません。研究者としてはいざ知らず、人事権を持っている人から高い評価を得るために必要な能力を、小保方氏は有していたということです。そしてこうした能力は、理研よりも普通の民間企業でこそ輝くことでしょう。

 大学の教授でも武田邦彦に早川由紀夫、比嘉照夫とか怪しいのはいくらでもいますし、小出裕章みたいに形の上では研究職に就いていても査読の対象となるような論文は書かずに一般向けの本を書くのが専門の人だって普通にいるわけです。小佐古敏荘のように感情論100%で科学的判断を歪めてしまうような手合いだって結構な地位を得ている、そういう連中がごまんといるのを嫌と言うほど見てきた後で小保方氏を考えると、まぁ「これくらいはマシな方だろ」という風に感じてしまうところもあります。

 消費者庁からダメ出しを食らったシャープのプラズマクラスター製品群や大幸薬品その他の空間除菌グッズもそうですし、健康食品などの分野ではそれこそ素人目に見ても誇張と捏造とハッタリで商売しているケースは枚挙に暇がありません。そういうのに比べれば、今回のSTAP細胞論文はまだしも真面目に作られた方だと言わざるを得ないようにも思うのです。研究者の目線では致命的な欠陥品でも、民間企業の目線では水準以上なんだろうな、と。

 小保方氏の所属である理研は、言うまでもないことですが営利企業ではありません。独立採算制の、自分の稼ぎで運営されている組織でもないわけです。そうであるからこそ、焦りもあったのかも知れません。自分の稼ぎで研究しているのであれば、どんな研究をしようとも他人からとやかく言われる筋合いはないですけれど、一方で税金の投入先ともなれば「世間」の目線は違ってきます。そこは税金が投入されるに足るだけの「成果」を、「世間」にも分かるような形でアピールできないと立場が悪くなるようなところもあったのではないでしょうか。研究者の視点からではなく、世間一般(及び政治家)にもわかりやすい業績を作らなければならなかった、そうした中で小保方氏をフロントマンとして大々的に売り出そうという、「不純な」思惑も産まれたのではと推測されます。

 「永田町の常識は世間の非常識」とは昔から言われることですが、「科学者の常識は一般人の非常識」でもあるのかも知れません。原発事故後の対応を巡っては科学者の知見を一般人の感情が押し切ってしまうような場面ばかりが続きました。そして小保方氏の場合でも擁護する声が少なくないのは、要するにそういうことなのだと思います。科学者の考える安全性や妥当性、正当性の基準は世間一般のそれとは大きく異なります。そして往々にして「世間」なり「民間」なり「一般人」なりの感覚が無批判に尊重され、専門家の意見は一蹴されがちでもあったりするわけです。でも、それでいいのかなと。

 文系とか理系とか自らの陣営を明白にしたがる人も多くて、往々にして「向こう側」の人間の考え方に対して否定的であるケースが多いように思います。私はむしろ自分が文系だからこそ、自分とは異なる分野で知見を持っている人の意見は尊重することを心掛けていますが、むしろ自分が「文系であること/理系であること」に絶対の自信を持っている、自分の領域に排他的優越心を持っている人の方が多いようです。そして「一般人」と「専門家」の場合も然りで、この場合は多数派の一般人の方が強くなりすぎている、驕れる世間の感覚が専門家の指摘を葬ってしまうような場面が多くて、それは結構な問題ではないかという気がするところだったりします。

 

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3 コメント

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Unknown ()
2014-04-18 04:44:58
以前に管理人さんも触れられていたことがあったと思いますが、小保方氏って典型的過ぎるほどに今の社会が求める理想の人物像と重なっているのですよね。基礎学力は必ずしも高くないものの要領は良く、その卓越した対人能力・コミュニケーション能力を駆使してAO入試を入口に出世街道を駆け上がる姿は「学力以外の要素」ばかりを求めたがる今の社会にピッタリ符合します(しかしそんな人がどうしてまたこのようなガチガチの研究職を目指したのやら・・・)。小保方氏もその資質を自覚しているのか、会見では徹底して科学者に対してではなく、その対人アピール能力を駆使して一般大衆にのみ訴えかけてその心をつかみました。

この問題において面倒なものと切り捨てられそうになっている科学における厳格な手続きもそこに意義があるからこそ定められているわけです。たとえば刑事裁判で証拠の捏造を問題視しない風潮が生まれれば、冤罪を生むだけでなく、証拠の真偽の調査の手続きが大幅に増えるため裁判の機能性が落ち、裁判によって下される結果に対する信頼感が大きく低下します。科学においても論文という形で証拠を提示し、それを他の科学者による検証を通じて科学的な真偽を判定していく流れになりますが、論文で示された証拠に捏造が入り込む余地が高まるとこの検証システムが機能不全に陥ります。また検証の中にも別の捏造が入り込む余地が高まり、そこから得られる知見そのものへの信頼性が下がります。言い換えるなら、科学的事実の信頼性の高さはこの面倒な検証システムあってのものであり、それを安易に捨てるとその土台が崩れてしまいます。

こういった専門性の高い分野に安易に大衆感覚を持ち込むのは危険なのですが、そういう風潮は根強いですね。橋下のような人物が支持を集めるのも結局はそれと同根でしょうし。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2014-04-18 22:58:07
私と同い年のこの女性にまつわる話に「騒動」という冠が付いたあたりから、私は彼女は私自身が確実に持ち合わせていない才能がある人物なのだ、と思うようになりました。まあそれは私が苦労している面でもあるわけなのですが。

まあしかし無い物をねだったところで仕方ありません。自分が持っている物を幸せと思って頑張ることが第一というものでしょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2014-04-18 23:49:49
>毛さん

 小保方氏のことは何度も引き合いに出してきたわけですが、端的に言えば今の日本社会で評価を得やすいタイプなんですよね。本人の資質は民間企業向きですし、その辺は理研の側だって分別を持つべきではなかったと思うところですけれど、理研サイドでも科学者としての矜持に揺らぎがあると言いますか、悪い意味での一般人の目線、民間の感覚へ擦り寄っていった結果ではないかという気がしないでもありません。

>ノエルザブレイヴさん

 小保方氏が我々と同僚であったなら、自分を尻目に出世して行くであろうなと確信できるタイプだと思うのですね。まぁ、この手の人と同じ土俵で競うのは苦しい話ではありますが――さりとて日本社会における評価基準が画一化する中では、そういう人の真似をせざるを得なかったりもするのが辛いです。
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