非国民通信

ノーモア・コイズミ

下っ端には酷ですが

2008-05-04 21:51:17 | ニュース

優雅な日経記者にもコスト削減の受難(ファクタ)

「深夜の自宅送りが、3人相乗りになってしまっては、帰宅が遅れて仕事になりません」

「ハイヤーがあるだけでもいいと思え。俺が若いころにはタクシーで夜回りして取材先に馬鹿にされたものだ」

日経新聞の社内報に載った座談会でのやりとりが、社内でひとしきり話題になった。

「3人相乗り」に不満を言うのは若手女性記者。これに反論するのが杉田亮毅前社長(現会長)だ。同社では、帰宅が深夜に及ぶ記者職には以前から本社発の自宅送りハイヤー制度がある。

ヒヨッコ記者まで黒塗りで自宅に送ってもらうこと自体、時代錯誤と言わざるをえないが、そんな優雅な日経でも経費節減は緊急課題。従来は、自宅が同じ方向にある人が2人集まった時点でハイヤーが発車していたが、今後は3人集まるまで待たなければいけなくなった。

(中略)

日経は東京・大手町の合同庁舎跡地に09年の完成をめざして新本社を建設中。印刷工場ではカラー化にともなう設備投資をしており、「これらの減価償却費が発生しはじめる09年12月期には、最終損益が赤字に転落してもおかしくない状況」と日経幹部は漏らす。

「企業経営のお目付け役である日経がみずから赤字経営では示しがつかない」(杉田前社長の年頭挨拶)。取材先から「特権階級」と揶揄されてきた記者たちも受難の時代を迎えそうだ。

 冒頭は待遇に不満を持つ若手を、功成り遂げたお偉いさんが「俺の若い頃は~」と説教する話ですね。よくある光景です。世情に流されやすく視野の狭い論調で知られる日経新聞ですから、そうした社風も根強いのでしょう。ともあれ、この論法はどこでも応用が利くもので、日経新聞社の社外でも使えます、というより使われています。待遇に不満を持つ若手を、功成り遂げたお偉いさんが「俺の若い頃は~」と言って黙らせようとするのはどこにでもある話、それを率先して実践している様子を日経新聞はアピールしたかったのでしょうか。

 帰宅の遅れが翌日以降の仕事に支障を来すようでは本末転倒ですし、そもそも深夜の帰宅が常態化していること自体、時代錯誤と言わざるを得ませんが、そんな旧態依然とした会社社会を体現する日経でも社員の待遇切り下げは緊急課題なのだそうです。で、そこから先は待遇切り下げを正当化するための口実が並べられているわけですが、ふーむ。

 給与が高かったり、待遇がよかったり(あるいは、そう信じられていたり)する職業は、常に槍玉に上げられてきたものです。新聞記者はその一つで、まぁ某自称全国紙なんかはあまり給与も高くないらしいですが、日経新聞などは高給の部類に入るわけです。引用元によると「特権階級」だそうで、その好待遇が問題視されていたとのでしょう。そしてこの好待遇の職と劣悪な待遇の職がある中で、「我々にも好待遇を!」と主張するような運動は常に白眼視されてきたわけです。反対に主流を占める意見は「奴らは恵まれすぎている、けしからん!」というものでした。で、この国民の声に政財界が耳を傾け、この民意が反映された結果が現在に至るのはご周知の通りです。

 自分の権利や待遇を守るために戦ってきた人々の待遇が、民意を背にした政財界の力で踏みにじられることもしばしばであり、これに憤りを感じることも多いわけです。しかるに日経新聞の場合はどうかな?と。経営側の論理を一面的に喧伝してきたのが日経であり、企業の生き残りのためには労働者層の待遇は後回しと、犠牲を当然視してきたのも日経だったはずです(多かれ少なかれ他のメディアも似たところはありますが)。会社の都合で帰宅が深夜に及ぶなら、会社が責任を持って帰宅手段を用意すべきとか、労働に見合った対価を支払えとか、そうした待遇改善に繋がるような主張をしてきたのであるならいざ知らず、その反対を貫いてきた日経新聞、その従業員が自社の主張の結果を被らされるのは、ある意味では「報い」でしょうか。


 ←応援よろしくお願いします


御用新聞が無職の若者を非難したとき、私は沈黙していた。
私は無職の若者ではなかったからだ。
御用新聞がフリーターを非難したとき、私は沈黙していた。
私はフリーターではなかったからだ。
御用新聞が専業主婦を非難したとき、私は沈黙していた。
私は専業主婦ではなかったからだ。
御用新聞が公務員を非難したとき、私は沈黙していた。
私は公務員ではなかったからだ。
御用新聞が労組を非難したとき、私は沈黙していた。
私は組合員ではなかったからだ。
御用新聞がサラリーマンを非難したとき、私は沈黙していた。
私は単なるサラリーマンではなかったからだ。
御用新聞が私を非難したとき、抗議してくれる者はもう誰もいなかった。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする