Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

革新的で便利なのに売れないのはなぜ?

2009-01-19 23:40:41 | Weblog
長年愛用していたシャープペンシルの「最後の1本」を無くしてしまう。「最後の1本」というのは,あらかじめ何本か買い置きしていたから。製造中止になってからおそらく10年以上経つ。ずっと失くさないできたのに,ここ数ヶ月で一気になくなってしまった。今度はどこからか出てくる気配もない。もう二度と手に入らないかと思うと,あまりに悲しい。

ぼくが愛用してきたのは,PILOT の「クラッチポイント」だ。芯がぎりぎりまで固定されるので,芯が短くなるとクルクル回って書きにくい,ということがない。実は,クラッチポイントというシャープペンシルは,まだ売られている。しかし,これはぼくが気に入っていた旧製品と違い,握りが太くて手帳に納まりにくい。一見高級感を出しているが,逆効果だ。

クラッチポイントという技術に最初に出会ったとき,非常に画期的だと感じた。その後,それを上回る技術を持つシャープペンシルはあるだろうか。PILOT はこれを製品ラインに残しているが,多くの文房具屋には置いていない(最近はチェックしていないが,昔扱っていた伊東屋からも姿を消した)。需要がないからだとしたら,なぜそうなのか,ぼくは理解できない。

最近,三菱鉛筆の「クルトガ」というシャープペンシルが革新的だと聞いて,早速試しに購入した。こちらは,芯が自動的に回ることによって,芯の先がまんべんなく減るようにしている。だから書きやすい,というわけだが,ぼくはまだ,そのよさを実感できないでいる。むしろ芯が不安定で,筆圧の強いぼくには書きにくい感じがする。

だんだんシャーペンを使わなくなっているのは確かだ。ほとんどの文章は PC で作るので,せいぜい手帳にスケジュールを書いたり(いずれ iPhone で,と思うが),メモを取るのに使う程度。だったら,どーでもいいはずだが,何かアイデアをまとめるときは手書きが欠かせない。ボールペン,しかも「消せるボールペン」にすれば万事解決か?

いくらパワポが普及しても,板書はなくならない。数理モデルを検討するにしろ,実務の調査計画を立てるにしろ,発想と意思疎通にはホワイトボードが欠かせない。会社でも大学でもお世話になった。ボードに絵や字を書いたらそのまま PC に取り込まれるというアイデアはだいぶ前からあり,一部製品化されたが,あまり普及していない。

非常に強いニーズがあるように(少なくともぼくには)思え,技術的な解決策がすでにあるはずなのに,それが売れない,あるいは売らないのはなぜなのだろう? イノベーションとか MOT とかの本を読めば,その秘密が書いてあるだろうか…。