Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2015年を振り返る

2015-12-27 21:01:21 | Weblog
今年は4月から、ニューヨーク市立大学バルーク・カレッジで在外研究を始めた。文字通り研究に専念できる、貴重な機会を得た。そして8ヶ月間、主にこれまで日本で行ってきた研究の仕上げに時間を費やした。少なくともその半分は、来年の春までに手離れすると期待している。

阿部誠先生、新保直樹さんと行ってきた Twitter の伝播効果に関する研究は、元々少数のインフルエンサーは存在するかという問題意識で始まった。これまでの研究で、インフルエンサーは存在し、戦略次第で費用を考慮しても効果的なキャンペーンを実施できることが確認できた。

今年はこの研究を Marketing Scinece ConferenceComplexity in Business Conference、そしてソーシャルメディア研究ワークショップで発表した。この分野の研究は進んでおり、これ以上論文投稿を先延ばしできない。来年の春までに第一稿を仕上げると宣言したい (^o^)。

もう1つは、研究分担者として参加した「金融サービスにおける企業・従業員・顧客の共創価値測定尺度の開発」プロジェクト。私の担当部分をICServ/Frontiers in ServiceBICT で発表した。プロジェクト自体は今秋終了し、自分に残された課題は主に論文の投稿である(汗)。

この研究では、標準的な計量モデル(ロジットモデルとマルコフチェーン)とエージェントベースモデルの併合を試みた。それはどちらのサイドからも嫌われるアプローチかもしれない。問題は、サービス・サイエンスの人々がどう評価するか。それを聴く機会が今後あるかどうか・・・。

やはり分担者として参加した「社会規範・政策選好・世論の形成メカニズムに関するパネル調査」も今年度で終了する。12月の JIMS で、共同研究者の桑島由芙さんが「ソーシャルメディア・イデオロギー・消費」と題する発表を行った。この発表は論文投稿が前提となっている。

現在、このプロジェクトの一環として選択実験を準備中だ。矛盾する政策のバンドルに有権者はどう対応するのか、秋山英三さんと取り組んでいるトレードオフ回避の研究ともつながる。その点で3月に下條信輔先生をお招きしたワークショップでの刺激を忘れることはできない。

「政治」は一見マーケティングからほど遠い世界に見えるが、物理学のオピニオン・ダイナミクスとか政治経済学のホテリング-ダウンズ・モデルとか、マーケティングにとっても非常に興味深い研究がある。その意味で、後継プロジェクトの申請が採択されることを祈りたい。

年明け早々に調査を実施する予定なのが「創造性とテイストに焦点を当てた消費者行動モデルの研究」プロジェクトである。従来から関心を持ってきたクリエイティブ・クラスに関する議論に、社会学にインスパイアされた手法を持ち込む。3月の進化経済学会@東大で発表する。

「プロ野球」研究の出版企画は、マーケティング、社会心理学、歴史学、経営組織論、会計学等の強力執筆陣から原稿が集まりつつある。順調に進めば、来年の春には出版されるはずだ。これが、今年の最も「確かな」成果だったかもしれない(まだ若干不確実なのだが・・・)。

しかしながら、来年1月に2件調査を行い、うち1つの分析結果を3月に学会発表し(予稿は1月末まで orz)、かつ Twitter 論文の第一稿を書くって・・・うーん、大丈夫だろうか・・・これら以外にここに書いていない研究もあるし、新たに立ち上げる予定の研究もある。

ともかく何とかするしかない。人生に残された研究に費やせる時間は短い。新たに始まる研究については、そのうちブログに書こう。いまは夢見る段階で、一人ニヤニヤしている。そして、最大の課題であったはずのモノグラフ執筆もある。全部自分が喜んで撒いた種なのだ。

↓Christmas Tree at the Plaza Hotel

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BICT2015@Columbia Univ.

2015-12-12 01:09:49 | Weblog
12月3~5日、NY のコロンビア大学で開かれた Bio-inspired Information & Communications Technologies (BICT) と呼ばれた会議に参加した。Bio-inspired、すなわち生物(学)に発想を得てコンピュータ・サイエンスを発展させよう、という趣旨の会議のようであった。



「会議のよう」などと書くとよくわかっていないようだが、実際、よくわかっていない。招待講演では、粘菌を使った最適化や、兵隊蟻が橋を作るメカニズムの数理モデルなどが語られていた。最初に生物の不思議なふるまいの動画が流されるが、そこまでしかついていけない。

Bio-inspired といわれて想像するのは、遺伝アルゴリズムのような進化計算手法である。だが、この学会で扱われているのは、それに限らず、より広範な生物界のメカニズムである。それらはいずれアルゴリズムその他として、実用化されるのだろう。素晴らしいことである。

自分の発表した Complex Adaptive Systems というセッションは、日本から参加したエージェントベース・モデリングの研究者が中心で、そこだけが自分にとって棲息可能なニッチとなった。そこではたとえば、災害時の避難、複数のドローンの制御といった問題が扱われていた。

私は Simulating C2C Interaction in a B2B Financial Service Business by Empirical Agent-Based Modeling と題する、7月の Frontiers in Service での発表の発展版を発表した。顧客間でサービス経験が伝播したとき、関係者の利得がどう変化し得るかを分析するものだ。

この研究は、JST-RISTEX のプロジェクトの一環として行われてきた。そのプロジェクトはすでに最終報告書を提出し、あとは対外発表を行う期間に入っている。今後はここで報告した内容を含め、論文にしてどこかに発表することになろうが、どこにするかは決まっていない。

BICT は、主催者にも参加者にも日本人研究者が多く、こじんまりとしていい感じの会議であった。ただ、あなたの専門は?と聴かれて「マーケティング」と答えると、「えっ!」と驚かれるという環境でもあった。

もっと若くて、かつ頭脳明晰・博覧強記だったら、Bio-inspired Model of Marketing を考えることができたかもしれないが・・・
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精神科医の目から見た広島カープ論

2015-12-03 01:05:51 | Weblog
和田秀樹氏といえば、精神科医としてメンタルヘルスに関する啓蒙書を多数著し、受験勉強の指南書も多く執筆されてきた有名人だ。灘高から東大理三に進み、海外留学まで経験するという絵に描いたようなエリートだ。そんな和田氏は、実は筋金入りの広島カープファンであった。

和田氏は広島、あるいはその近辺に住んだことはない。東京と大阪で幼少期を送り、それぞれの地元で応援されている巨人と阪神を嫌いになり、大洋ファンになったが、別当薫がカープの監督になったのを機にカープファンになった。それ以来40年間、カープを応援し続けている。

精神科医が語る熱狂の広島カープ論
和田秀樹
文芸社

そんな著者の熱いカープ愛が綴られたのが本書である。なぜカープを応援し続けるのか。それは、現代の日本社会から失われつつある、古き良き美徳がそこに息づいているからだという。地域社会との密着しかり、家族主義的な経営しかり、おカネ第一ではない行動原理しかり。

では、著者はカープの経営を絶賛しているのだろうか。そうではない。球団のガバナンスについて、最後に厳しい批判が書かれている。それがどこまで事実に基づいているのか、私には知る由もないが、長年のファンであるが故の不満は、著者一人のものでないことは確かである。

現在のカープ人気が続いているうちに、失われた25年を取り戻す変化が起きることを願うのみだ。
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